イランが極秘とする核物質の隠し場所を米国は把握し、その回収方法も分かっていると主張しているが、イランの濃縮ウランを最後に確認した国際査察団は、確たるものは何もないとの見解だ。

世界の関心、さらに米国の優先課題もホルムズ海峡と不安定な停戦に向けられている。だが、米国が戦争に踏み切ったそもそもの理由は、イランの核兵器保有阻止だった。

イランの高濃縮ウランがどこに、どのような状態で保管されているのか、現時点で誰も確認できない。イランが保有する高濃縮ウランは、さらに処理を施せば数日以内に兵器への転用も可能になるとされる。

昨年6月に米国とイスラエルのイラン空爆で査察が中断される前、国際原子力機関(IAEA)は同国内に約441キログラムの高濃縮ウランが存在することを確認していた。しかしそれ以来、IAEAは強い確信を持って高濃縮ウランの全ての所在を把握しているとは言えなくなっている。

トランプ大統領は8日、イランと協力して高濃縮ウランを「掘り起こし、除去する」と主張。同氏によると、高濃縮ウランは米国の空爆以来手つかずのまま地中深くに埋まっており、衛星が常に監視している。ヘグセス国防長官はさらに踏み込み、米軍が押収することも可能だと発言。「われわれはそれを手に入れ、持ち出す」と述べた。

だが、IAEAによる非公表の状況評価を知る複数の外交官は、全く異なる実情を示唆する。IAEAの活動に詳しいウィーンを拠点とする2人の当局者によると、米国とイランが共同でウランを回収する計画についてIAEAが通知を受けたことはない。当局者は機密情報を話しているとして匿名を要請した。

この当局者によると、2月末に始まった米国とイスラエルの攻撃以降、イランとIAEAの関係は一段と悪化し、近い将来に査察を再開できる可能性は事実上ゼロだという。

これによりIAEA、さらには米国も、世界で最も危険とも言える高濃縮ウランを確認する手だてがない。

トランプ氏とヘグセス氏は、イスファハンの核施設近くのトンネルに高濃縮ウランの全ての備蓄が集中していると示唆しているが、同所にあるのは半分程度に過ぎないだろうと外交官らはみている。

残り半分はナタンズやフォルドゥなどの施設、あるいはこれまでに知られていない場所に分散されている可能性が高い。イランは1年前にIAEAに対し、脅威にさらされた場合には、核物質を収めたコンテナを未申告の場所に移す可能性があると警告していた。

「イランのウラン備蓄の所在を特定する上で、衛星画像は全く役に立たない」と、米国の核兵器技術者で元IAEA理事のロバート・ケリー氏は指摘。「IAEAが情報を伝えたのでなければ、トランプ政権はコンテナがいくつあるかなど全く知らないだろう」と述べた。

問題は既に知られている備蓄の把握にとどまらない。イランには将来いかなる合意が結ばれる場合にも報告が必要になるような、さまざまな水準の濃縮ウランが8000キログラム以上存在する。たとえ米国とイランの間で協力の合意が成立するとしても、イランの核計画について検証可能な全体像を再構築するには長い年月が必要になるだろうと、外交官らは指摘する。

その理由は、数十年にわたる監視を支えてきたインフラが損傷または破壊されてしまったからだ。遠心分離施設は攻撃を受け、IAEAの封も破られ、長期間にわたり査察官の核物質追跡を可能にしていた監視のネットワークは事実上崩壊した。攻撃の影響で一部のウランが外部に漏れた可能性もあり、その測定と回収はいっそう難しいと見込まれる。

ヘグセス氏は特殊部隊を投入してウランを回収する可能性に言及したが、正確かつ独立して検証された情報なしでは、そのような作戦には重大なリスクが伴う。

現地の部隊にとって、任務が内容物ではなく、コンテナの数を数えるだけに終わる危険もはらむ。ケリー氏は、「これは緊急の対応が必要な事態だ。数時間から数日で兵器転用が可能かもしれない」と警告した。

所在が不明確であるため、いかなる作戦を行うとしても備蓄の一部が見逃され、それが何らかの形で利用されるようになる恐れもある。

原題:Trump Hunt for Iran’s Uranium Hindered by Monitoring Disruption(抜粋)

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