米国とイランは2週間の停戦で合意した。イランによるホルムズ海峡の通航再開と引き換えに米国とイスラエルが軍事作戦を停止する見込みだ。一時的なエスカレーション緩和を示唆する一方、より広範な緊張は依然として解消されない可能性がある。

トランプ米大統領は7日、SNSでイランとの2週間の停戦に合意したことを明らかにした。これに先立ち、仲介国のパキスタンが、イランにホルムズ海峡の再開を求める期限について2週間の延長を要請していた。

今回の合意により、6週間に及ぶ戦争の終結に向けた長期的な合意を模索する時間が確保される。米・イスラエルとイランの戦争によって数千人が死亡しているほか、世界的なエネルギー危機を引き起こしている。

パキスタンのシャリフ首相はX(旧ツイッター)への投稿で、全ての紛争を解決する最終合意に向けたさらなる協議のため、10日に各国代表団をパキスタンの首都イスラマバードに招待したと明らかにした。国営イラン放送(IRIB)も10日の交渉開始を報じており、協議はイランが提案した10項目に基づき行われるが、戦争の終結を意味するものではなく、イランは「完全な不信感」をもって協議に臨むとしている。

一方、ホワイトハウスのレビット報道官は、イスラマバードでの停戦協議について慎重な姿勢を示した。「対面での協議に関して議論はしているが、大統領またはホワイトハウスが発表するまでは何も確定していない」とFOXニュースに語った。

イラン学生通信(ISNA)は記者1人からの情報として、イスラマバードで10日行われる対米協議では、ガリバフ国会議長がイラン交渉団の代表を務めると報じた。一方、バンス米副大統領が米国のチームを率いるという。

これに先立ち、トランプ氏は7日、SNSへの投稿で、「イランがホルムズ海峡の完全かつ即時、安全な再開に同意することを条件に、イランへの爆撃と攻撃を2週間停止することに同意する。これは双方による停戦となる!」と明らかにした。

イランのアラグチ外相も声明で「2週間の期間にわたり、ホルムズ海峡における安全な航行は、イラン軍との調整および技術的制約への十分な配慮の下で可能となる」と指摘。「イランに対する攻撃が停止されれば、われわれの強力な軍は防衛作戦を停止する」とした。

ホワイトハウス高官によると、イスラエルも停戦に合意している。一方で、ペルシャ湾のアラブ諸国の一部は、トランプ氏の発表直後もイランによる攻撃が続いたと報告しており、停戦の開始時期には不透明感が残る。

トランプ氏の発表は、イランがホルムズ海峡を開放しなければ大規模な軍事攻撃に直面するとしたニューヨーク時間7日午後8時(日本時間8日午前9時)の期限の約1時間半前だった。

発表を受け、原油価格は約6年ぶりの大幅安を記録した。北海ブレント先物は一時16%下落し、1バレル=91.70ドルとなった。MSCIアジア太平洋指数は4.1%上昇し3週間ぶりの高値を付け、米株価指数先物は2%余り、欧州株先物も5%上昇した。

米国とイランはともに今回の停戦を「勝利」と位置付けているが、戦争の完全終結に向けた要求には大きな隔たりが残ると、戦略国際問題研究所(CSIS)の中東プログラムシニアアドバイザー、モナ・ヤクービアン氏は指摘。ブルームバーグテレビジョンで「イランが今後2週間、同国軍との調整の下でホルムズ海峡の通航を認めるとする点について、米国が受け入れればイランにとって大きな譲歩になる」と述べた。

もっともエスカレーション緩和への道筋が直ちに築かれるかは不透明だ。

パキスタンのシャリフ氏は、米国とイランおよび同盟国がレバノンを含む全面停戦で合意したと明らかにした。これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は、今回の暫定的な合意にはレバノンには適用されないとの見方を示した。

クウェート、サウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルは、トランプ氏の発表直後にイランによるミサイルやドローン(無人機)攻撃があったと報告しており、停戦の発効時期はなお不確実だ。

ニュースサイトのアクシオスは、米国は攻撃停止命令がイランの革命防衛隊(IRGC)に伝わるまで時間がかかると見込んでいると報じた。この種の遅れは紛争では一般的で、戦闘は徐々に収束していく場合が多い。

合意の詳細は明らかにされていない。

トランプ氏は「イランからは10項目の提案を受け取っており、交渉の基盤として機能する」と説明。また「過去のさまざまな争点のほぼ全てについて、米国とイランの間で合意に達しているが、2週間の期間によって合意の最終化と履行が可能になる」とした。

その後、AFP通信に対し、中国がイランに交渉を促したとの見方を示し、イランのウラン備蓄は適切に管理されるとの認識を示した。

英スカイニューズがトランプ氏への電話インタビューを引用して報じたところによると、同氏は10項目の多くの点を「非常に良い」と評価し、大半は「完全に交渉済みだ」とも述べた。ただし、提案内容が受け入れられるものでなければ「われわれは非常に容易に元の状態に戻るだろう」と警告した。

イランの最高国家安全保障会議が国営メディアを通じて発表した声明によると、イランはホルムズ海峡の管理継続、核濃縮活動の容認、あらゆる一次・二次制裁の解除、米軍戦闘部隊の地域から撤退などを求めている。

また、AP通信は交渉に直接関与した当局者の話として、2週間の停戦合意にはイランとオマーンがホルムズ海峡を通過する船舶に対して通航料を課すことを認める内容が含まれると報じた。イランは通航料を復興に充てる見通しだが、オマーンの用途については不明という。

停戦合意の詳細や履行の持続性にはなお不明点が多い。2週間の期間は双方の合意で延長可能だが、イランは「完全な不信感」を抱いたまま交渉に臨むとイラン国営メディアは伝えている。

ジョージ・W・ブッシュ政権時代にホワイトハウスで中東政策を担当したマイケル・シン氏は今回の合意について「エスカレーションの流れから一定の猶予をもたらすものだが、紛争の解決や紛争の根底にある諸問題の解消にはなお程遠い」と話した。

それでも今回の判断は、少なくとも現時点では、発電所などの民間インフラを含めて攻撃対象を拡大するとの脅しからトランプ氏が後退した最新の事例となった。トランプ氏は3月、海峡の再開がなければ5日以内に攻撃すると通告し、その後、その期限をさらに10日間延長していた。

こうした対応パターンは「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプ氏はいつもおじけづく)」として広く知られている。

今後の焦点はホルムズ海峡を船舶が安全に通過できるかだ。ここ数週間も一部の船舶は海峡を通過しているが、イランが敵対的とみなす、あるいは米国やイスラエルの攻撃を少なくとも黙認したとみられる国の船舶は概して含まれていない。

ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員クレイトン・サイグル氏は、停戦発表や安全性に関する一定の保証を受けて、船主や運航会社といった現場の関係者が行動を変えるかどうかが真の試金石になると述べた。

原題:US and Iran Agree to Ceasefire Hours Before Trump Deadline (2)、Iran’s Ghalibaf to Lead Talks With US’s Vance in Pakistan: ISNA、{Trump Says Most Points in Iran Plan ‘Fully Negotiated’: Sky News} (抜粋)

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