トランプ米大統領がイランに要求する停戦合意の期限が迫っているが、現在イランの実権を握る強硬派は、事態のエスカレートや中東地域全体に拡大する戦争をむしろ歓迎している。

米国とイスラエルはおよそ6週間にわたる戦闘で、イスラム革命防衛隊(IRGC)の上級指揮官を次々と殺害した。それでも、その生き残りは長期戦を覚悟し、民間インフラを破壊するというトランプ氏の脅しをほとんど恐れていない。実際にそのような展開をたどるなら中東諸国をさらに巻き込んで戦闘は激化し、すでに世界的なエネルギー危機となっている状況は一段と悪化する。

革命防衛隊と関係を持つイラクの民兵組織は7日、トランプ氏がイランを徹底的に破壊するという脅しを実行に移すなら、サウジアラビアが石油の代替輸出ルートとして頼る紅海のヤンブー港を同組織は標的にし「世界をエネルギー戦争に陥れる」と警告した。サウジは事実上の封鎖が続くホルムズ海峡を迂回できるヤンブー経由に主要輸出ルートを切り替え、日量500万バレル近くを出荷している。

英王立国際問題研究所の中東・北アフリカプログラム責任者、サナム・ヴァキル氏は「現在指揮を振るい、支配しているのは体制の回復と生き残りに組織的にも個人的にも懸けている一団だ」と指摘。「この一団を『今こそ合意を結ぶべきだ』と説得するのは困難だろう。イランが強硬な条件や要求を崩さないのもそれが理由だ」と論じた。

Photographer: Majid Saeedi/Getty Images

イランの要求は、米国とイスラエルが二度と攻撃しないという保証、ホルムズ海峡を支配する権利、長年にわたり実施されてきた経済制裁の解除などだ。

一方、トランプ氏はイランに対し、海峡の封鎖解除と核開発計画の放棄、親イラン武装組織への支援停止、ミサイル開発計画への制限受け入れを求めている。同氏は7日、合意が成立しなければイランの「文明全体が滅ぶ」とどう喝した。

ヴァキル氏は、イランの改革派グループは「出口を模索している」ものの、立場は比較的弱く、政権を支配する強硬派は早過ぎる譲歩を望んでいないとの見解を示した。ホルムズ海峡を支配することで、いまや絶大な交渉材料をイランは手にしていると強硬派が確信しているからだという。

ペゼシュキアン大統領やアラグチ外相といった、トランプ氏との合意に比較的前向きな可能性がある政府要人が軍部を完全に掌握していないことはますます明らかになっていると、イランとの接触を維持している欧州の国の当局者が匿名を条件に語った。

カーネギー国際平和基金のシニアフェロー、カリム・サジャドプール氏は6日、X(旧ツイッター)に相次ぎ投稿し、水や電力施設を含む民間インフラを破壊するというトランプ氏の脅しが、イランの指導部を動かす可能性は低いと論じた。こうした攻撃は戦争犯罪に当たる恐れがある。

「イランの体制は当初から、権力やイデオロギーで妥協するくらいなら国や国民を破壊することもいとわない姿勢を示してきた。トランプ氏のイランを壊滅させるとの脅しにも、ひるんでいない」とサジャドプール氏は論じた。

イラン国内および、イラクやレバノンの代理勢力の双方が過去数日に発したメッセージの大半は、いかなる犠牲を払おうともイランは長期戦の覚悟があるとの表明だった。

「ホルムズ海峡を敵は利用できなくなる。もし武力でこじ開けようとするのなら、石油やガスのターミナルは全て消滅することになると認識させてやる」と、革命防衛隊が支援するイラク民兵組織カタイブ・ヒズボラのアブ・フセイン・アルハミダウィ司令官は6日の声明で主張。レバノンのヒズボラの指導者、ナイム・カセム氏はレバノン国民に対し、長期にわたる戦いとさらなる犠牲に備えるよう呼びかけた。

原題:Iran Signals Long Multi-Front War as Trump Deadline Nears (1)(抜粋)

--取材協力:Samy Adghirni.

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