ロシアの原油タンカーがキューバに到着し、燃料不足に陥っている同国が全面的な人道危機を一時的に回避する効果が期待される。一方で、この入港を容認したトランプ米大統領の判断を巡り、各国はその意図を分析しようとしている。

共産党政権下のキューバに対する米国の事実上の燃料封鎖は続いているものの、タンカー「アナトリー・コロドキン」は推計73万バレルの原油の荷下ろしを開始する見通しだ。

キューバ向け燃料輸送を追跡する米テキサス大学エネルギー研究所の研究者ホルヘ・ピニョン氏によれば、キューバに対する米国の圧力キャンペーンは「政権崩壊を引き起こす引き金」を狙ったものと見受けられるが、現在5週目に入った対イラン戦争の勃発により、米側の計算は変化した可能性がある。

ピニョン氏はインタビューで、トランプ政権はキューバとイランの問題を「同時に抱えることはできない」と指摘。また、一党支配の変革を迫るためキューバと交渉する上で、現時点で一定の燃料搬入を認めることは「米国に多少の時間稼ぎとなる可能性がある」との見方を示した。

キューバは過去3カ月余りにわたりまとまった量の原油供給を受けていない。停電で経済は混乱し、公共交通の停止や航空便の欠航、リゾート施設の閉鎖を招いている。キューバ政府によれば、エネルギー危機は病院の機能にも支障を来し、命に関わる医療の提供が滞っている。国連は人口1000万人の同国が人道危機に直面していると警告している。

トランプ氏は29日、「キューバは終わりだ」とフロリダの私邸からホワイトハウスに戻る途中に述べた。「非常に悪く腐敗した指導部だ。原油を積んだ船が来るかどうかにかかわらず、状況は変わらない」とも語った。

ロシアからの新たな供給の効果がすぐに現れるわけではない。ピニョン氏によると、原油をガソリンやディーゼル、ジェット燃料に精製し、各地に配送するまでに最大45日かかる可能性がある。需要の大きさを踏まえれば、その効果は数日から数週間にとどまる可能性がある。

その後については、「このタンカーが去り、燃料が使い尽くされれば、ハバナ沖に次のタンカーが待機していない限り、今回の供給は焼け石に水に過ぎない」と説明した。

一方、米国とキューバの交渉がどの程度活発に行われているかは不明だ。キューバのビダル外務副大臣は29日、両国はこれまでに1回の会合を開いただけだとする一方、キューバの経済発展に米国が参加することには前向きだとした。

原題:Russian Oil Shipment Buys US and Cuba Time as Crisis Festers(抜粋)

--取材協力:Alex Vasquez、Jennifer A Dlouhy.

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