(ブルームバーグ):イランは、米国による対イラン戦争のさらなるエスカレーションがあった場合に備え、紅海の船舶を標的とする新たな攻撃作戦の準備をイエメンの親イラン武装組織フーシ派に促している。事情に詳しい欧州当局者が明らかにした。
同当局者によると、フーシ派指導部はイスラエルに対して弾道ミサイルを発射した後、より攻撃的な行動に踏み出す選択肢を検討している。当局者は機密事項だとして匿名を条件に語った。
フーシ派内部では攻撃の強度を巡って意見が分かれており、これが同組織が紛争開始から1カ月経過してようやく参戦した理由の一つだという。フーシ派は28日の声明で、米国とイスラエルによるイランおよびレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラなど代理勢力への攻撃が停止するまで軍事作戦を継続すると表明した。ただ、紅海を通過するタンカーやその他船舶を標的にするとは明言しなかった。
関係者によると、米国とサウジアラビアの当局者は欧州の同盟国に対し、フーシ派は当面、これ以上のエスカレーションや米国・サウジアラビア資産への攻撃を回避したい意向だと伝えている。
サウジ政府の報道官はコメント要請に即答しなかった。ホワイトハウスの報道官もすぐにはコメントしなかった。
ただ、米国とイスラエルによる対イラン戦争が長期化するほど、フーシ派が紅海を標的とする可能性は高まると同当局者らは指摘した。また、同組織が米国に対する交渉上の影響力を維持するため、判断を先送りする可能性もあるとした。
当局者の1人は、イランの原油輸出の大半を担うカーグ島を米国が掌握しようとすれば、フーシ派が攻撃を拡大する可能性があると述べた。
フーシ派が紅海南部やバブルマンデブ海峡付近の船舶に対する作戦を開始すれば、世界のエネルギー市場はさらに混乱する恐れがある。
この水路は、2月末に紛争が始まって以降、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖していることから、重要性を増している。
原油価格は30日に再び上昇し、米国産原油先物は2022年以来初めて1バレル=100ドルを上回って取引を終えた。
ホルムズ海峡の封鎖により、サウジは紅海のヤンブー港からの原油輸出を拡大している。そこからサウジ産原油の最大の買い手であるアジアへ向かう船舶にとっての最短ルートは、バブルマンデブ海峡を通過するものだ。こうした代替ルートの存在が、原油価格の上昇を一定程度抑える要因となっていた。
フーシ派は23年後半、イスラエルとハマス(パレスチナ自治区ガザのイスラム組織)の戦争が勃発して以降、紅海南部とアデン湾を西側諸国の海運企業に対してほぼ封鎖した。フーシ派はパレスチナ勢力との連帯を理由に挙げ、攻撃は10月のガザ停戦まで続いた。
しかし現在、フーシ派は対イラン戦争への関与を巡り複雑な判断を迫られていると当局者は指摘する。イランの観点では、同組織による海上輸送路への脅威は、米国とのいかなる交渉においても利用可能な追加の交渉材料であり、世界経済に混乱をもたらす能力を一段と示すものとなる。
ただ、イランはフーシ派にとって最も重要な支援国であるものの、同組織が常にイランの指示通りに行動するわけではない。
フーシ派は独自の戦略判断を持ち、過去の空爆による被害からの回復途上にある中で、米国やイスラエルの報復を招くことには慎重とみられる。また、イランから圧力を受ける中でも、フーシ派は自らの支配地域の経済状況が極めて悪化している時期に参戦する正当性を示す必要もある。
強硬派はより広範な攻撃の実施を求めている一方、より穏健な勢力はこうした戦略に抵抗している。当局者によると、週末にイスラエルを標的とした決定は、分裂した派閥間の妥協の産物だったという。
原題:Iran Presses Houthis on Red Sea Shipping, Officials Say (1)(抜粋)
(フーシ派の現状に関する当局者の話を追加して更新します)
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