(ブルームバーグ):ファーストリテイリング傘下のユニクロが、ロサンゼルス・ドジャースとパートナーシップを締結した。同球団に所属する大谷翔平投手の世界的な人気を活用し、米国での成長加速を狙う。
ファストリの2025年8月期売上高3兆4000億円のうち、北米の構成割合は1割未満だ。店舗数も世界2543店のうち77店(3%)と、日本やアジアでの圧倒的な知名度に比べれば、ZARAを展開するインディテックスに比べて影が薄い。裏を返せば大きな伸びしろが残されている。
この契約でユニクロが得たのは、スタジアムのグラウンド命名権。「UNIQLO Field at Dodger Stadium(ユニクロフィールド・アット・ドジャースタジアム)」には、センター後方のバックスクリーンやバックネット裏などの目立つ場所にロゴが掲げられる。金額は非公表だが、ロサンゼルス・タイムズは5年間で1億2500万ドル(約200億円)規模と報じた。
ドジャースは、全日本空輸やヤクルト本社などとスポンサー契約を結んできたが、グラウンドにスポンサーを加えるのは球団史上初めてだ。大谷選手を始め山本由伸、佐々木朗希といった日本人選手の活躍で球団のブランドイメージが刷新されたことが大型契約を後押しした。
試合中継のたびにユニクロのロゴが映り込めば、視聴者への訴求力は計り知れない。フィリップ証券アナリストの田中俊氏は、「大谷選手の影響力は日米で非常に大きく、ブランド認知を押し上げる効果がある」と指摘。米国での売り上げは順調に伸びているが、地方に行けばユニクロを知らない人はまだ多いという。
柳井正会長兼社長も世界最大のアパレル市場である北米の事業拡大に期待を隠さない。「ロサンゼルス、そして全米のお客さまやファンの皆さまに新たな価値をお届けするとともに、世界中で最も愛され、信頼されるブランドになるための歩みを、ドジャースとともに進めていきたい」とコメント。5月には社会貢献プロジェクトの詳細公表も控え、単なる広告主を超えた市民権の獲得を狙う。
ユニクロはこれまでも男子テニスのロジャー・フェデラー選手など一流アスリートとの契約を軸にブランド価値を磨いてきた。こうした戦略の延長線上に今回の提携がある。
CLSA証券のアナリスト、オリバー・マシュー氏は、今回の契約が「長期的な拡大を狙ううえで極めて効果的な一手だ」と評価する。この先行投資が、成長余力の大きい北米事業を加速させる決定打となるか、野球中継とともに真価が試される。
UBS証券の風早隆弘シニアアナリストは、米国で認知度の低い海外ブランドがシェアを獲得する難しさを指摘しつつ、同地域で売上高1兆円を目指すという目標を考えれば、「限られた顧客層や熱狂的なファンだけでは達成できない」と語る。
一方で、この契約提携にはリスクも伴う。球史に歴史を刻む名門球団、しかも最も歴史ある球場の一つに関わる命名権を手放すことは、ファンの反発を招く可能性がある。また、資金力あるドジャースがさらに選手補強に資金を投じるとの見方を強める恐れもある。
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