アルマンド・ラブラドール氏は、米フロリダ州マイアミのストリップモール(道路沿いに店舗が並ぶ商業施設)の一角で、低価格の豊胸手術や脂肪吸引を売りにする美容外科クリニックを営んでいる。彼の夢は、キューバの次期大統領になることだ。

現在56歳のラブラドール氏は10代の頃、父親が約8年間投獄され、祖父が処刑されたことを受け、家族とともにキューバを脱出した。同氏は、医師ではなく、経営者として美容外科クリニックを運営する。

だが、経営者とは別の顔も持つ。キューバ国内にいる約100人の活動家からなる反体制団体「キューバ・プリメロ」を率いているのだ。メンバーは、抗議活動を展開するほか、ハバナの観光名所として知られるマレコン通り沿いに「独裁打倒」や「トランプ万歳」といった落書きを残している。

トランプ米大統領は公然と「キューバを手に入れる」と発言し、米政権は67年続く共産主義体制への圧力を強めている。エネルギー供給を断つ封鎖措置により、キューバ国内では深刻な停電が起きている。

ラブラドール氏のようにキューバを離れた人々にとって、同国の解放はかつてないほど現実味を帯びている。意見が割れるマイアミのキューバ系コミュニティーでも、トランプ氏がディアスカネル大統領を退陣に追い込み、低迷する経済を立て直すとの期待が強まっている。

ラブラドール氏は「大統領選に出馬するつもりだ。6カ月前に同じことを聞かれていたら、『いや、それは不可能だ』と答えていただろう」と語る。

キューバで現政権が崩壊する、あるいは退陣した場合、選挙が実施されるかどうかは極めて不透明だ。米国がベネズエラでマドゥロ大統領を失脚させた際、後任には、ノーベル平和賞受賞者マリア・コリナ・マチャド氏が率いる野党勢力ではなく、体制内部の有力者であるデルシー・ロドリゲス氏が据えられた。

マイアミ大学のマイケル・ブスタマンテ准教授(キューバおよびキューバ系米国人研究)は「希望が見える一方で、不安もある局面だ」と指摘し、「民主化の段階に進めるかどうかは、依然として見通せない」と語る。

ラブラドール氏は、キューバ政権への抵抗をテーマにした戯曲を2本と楽曲1曲を手がけ、ソーシャルメディアで数十万人のフォロワーを持つ。今月には、自身の団体「キューバ・プリメロ」と美容外科クリニックの知名度向上を図るため、トランプ・ナショナル・ドラル・マイアミ・ゴルフクラブ内にある「ドナルド・J・トランプ・ボールルーム」でミスコンテストを主催した。

数百人が見守る中、主にキューバ系米国人の女性約60人が「ミス・ノバ・フェミナ」の栄冠を争った。キューバ国旗を思わせる赤・白・青のイブニングドレスをまとった参加者もいた。10人以上の出場者が、飢えや経済的困窮、抑圧をテーマにしたラブラドール氏の戯曲の一部を披露した。

会場ではキューバ・プリメロを紹介する動画も上映され、キューバ軍の帽子をかぶった人工知能(AI)生成のサメが、いかだに乗った難民を威嚇する様子が描かれた。

観客の中には涙を流す人もいれば、「キューバ万歳!」と声を上げる人もいた。

進む世代交代

マイアミのキューバ系亡命者コミュニティーでは、世代交代が進む。フィデル・カストロ政権成立後の時代にルーツを持つ従来の反体制団体の指導者たちは高齢化が進み、すでに亡くなっている場合もある。反体制勢力は複数の小規模なグループに分かれ、細分化している。

反体制団体「エクシリオ・ウニド・ヤ」の代表ラミロ・コラソ氏は「キューバの自由をどう捉えるかについては意見の違いがある」とした上で、「カストロ体制の独裁を終わらせるという共通の目標は共有できると期待している」と話す。

ラブラドール氏は、歴代の米大統領が制裁や外交圧力でキューバの変化を促そうとしながら成果を上げられなかったことから、次第に期待を失っていた。ただ、第2次トランプ政権の発足によって状況の変化を感じているという。「トランプ氏はこれまでとは違う」と語った。

マイアミ生まれでキューバ系米国人のルビオ米国務長官が、キューバ当局との協議を主導している。事情に詳しい関係者によると、協議には故フィデル・カストロ氏の弟、ラウル・カストロ前大統領の孫も含まれているという。

ラブラドール氏は、トランプ政権が対キューバ政策の検討に亡命キューバ人の団体を関与させているかどうかは把握しておらず、選挙がその構想に含まれているかどうかも分からないと述べた。

ラブラドール氏によると、キューバ駐在のマイク・ハマー米臨時代理大使がトランプ氏の戦略について自宅で説明した。また、米国務省でキューバ問題を担当するロブ・アリソン氏とも面会したという。

ラブラドール氏は、これらのやり取りの詳細については明らかにしなかったが、米当局者らが具体的な計画について多くを語ろうとしないことは認めた。同氏は「反体制側は実際のところ関与していない」と説明する一方で、「これほど勝利に近づいたことはいままでなかった」とも述べた。

キューバでは反体制の動きに対する弾圧が強く、反体制団体が公然と活動するのは難しい。人権団体「プリズナーズ・ディフェンダーズ」によると、同国では政治犯や抗議活動の参加者、活動家、ジャーナリストなど1200人以上が拘束されている。

ラブラドール氏は「リスクが非常に高いため、100人でもかなり多い」と、キューバ・プリメロのメンバー数の多さを強調した。世界銀行によると、キューバの人口は2024年末時点で約1100万人。国内にはラブラドール氏を支持する人がさらに数百人いるが、公然と活動することを恐れているという。

ラブラドール氏は「キューバ国内でわれわれ以上に積極的に抵抗している人が多いと示せる者はいないと思う」と述べた。

一部の亡命キューバ人団体は、ラブラドール氏よりも多くの支持者を抱えていると主張している。米州人権委員会(IACHR)の代表を務めるロサ・マリア・パヤ氏が率いる「キューバ・デシデ」は、2015年以降、数千人の支持者を集めてきたという。米政府は同団体を「最も有力な」反体制運動と位置付けている。

測れぬ影響力  

キューバ・プリメロが実際にどの程度の影響力を持つのかは把握しにくい。ラブラドール氏は、自身のユーチューブ・チャンネルで反体制活動に関するインタビューやニュース情報を発信しており、登録者数は23万人を超える。

ラブラドール氏とキューバ・プリメロは、キューバ政府のテロリストおよびテロ組織の指定リストに掲載されている。同氏は、自身や団体がテロ行為に関与しているとの見方を否定しており、キューバではキューバ・プリメロの活動家30人が無許可の政治集会の開催やデモの実施などを理由に拘束されていると述べた。米国はキューバをテロ支援国家に指定しているが、同国政府はこれを否定している。

2月28日、キューバの領海内で同国の沿岸警備隊の巡視船が、フロリダ州を拠点とする2つの亡命者団体のメンバー10人が乗った武装漁船に発砲した。キューバ政府によると、5人が死亡し、残るメンバーはテロ関連の容疑で拘束された。ラブラドール氏は、これらの団体との関係を否定し、暴力行為も支持していないと述べた。

「私たちの目標は、人々に非暴力で抵抗するよう呼びかけることだ。そのために刑務所に入るリスクがあっても、それだけの価値がある」と、レウディス・レイエス氏は語った。レイエス氏はキューバ・プリメロの活動家で、「敵対的なプロパガンダの拡散」や「公共秩序を乱した」などの罪でキューバで6年間服役した。

レイエス氏は2024年に釈放された後、殺害の脅迫を受けたためキューバを離れざるを得なかったという。ラブラドール氏は、同氏がニカラグア経由でマイアミへ渡るのを支援した。

レイエス氏はラブラドール氏の自宅で行われたインタビューで「キューバ国内で私たち以上に大きな反体制勢力はない」と語った。

広がる支持基盤

ラブラドール氏は1989年、19歳でマイアミに移り住んだ。1997年には、知り合いの医師に説得され、マイアミのキューバ系住民が多く暮らす地区「リトルハバナ」にある静脈瘤の治療クリニックに出資した。

ラブラドール氏は広々とした自宅のリビングを指しながら、「ここよりもずっと狭い場所で始めた」と語った。

2018年、ラブラドール氏はキューバで表現の自由を求めるサンイシドロ運動に触発され、キューバ・プリメロを設立した。「マイケル・オソルボ」の名前で知られるキューバ人ラッパー、マイケル・カスティージョ・ペレス氏が率いる運動を支援するため、資金や医療物資を送っていた。だがその後、オソルボ氏ら指導者が収監されたことで、同運動は崩壊した。

それ以降、ラブラドール氏は自身の支持基盤の拡大に力を入れてきた。最近では自宅でパーティーを開き、自身の楽曲「レバンタテ・キューバノ(キューバ人よ立ち上がれ)」のミュージックビデオを約200人の支援者に披露した。この動画は同氏のユーチューブチャンネルで56万5000回以上再生されている。

ミスコンの会場では、出場者の一部がラブラドール氏の前を通過する際に足を止め、親指と人さし指でアルファベットのLの形を作った。これはキューバ政権への抵抗を示す反体制のシンボルで、「自由(リバティー)」を意味する。

「自分がキューバの次の指導者になると言う権利はない。それは民主的な選挙によってのみ実現されるものだと考えている」とラブラドール氏は語る。「しかし、選挙が実現した場合、私は出馬する必要があると感じている。それが支持者の望みだ」

原題:Miami Plastic Surgery Executive Wants to Be Cuba’s Next Leader(抜粋)

--取材協力:Jim Wyss、Eric Martin.

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