(ブルームバーグ):中国の習近平国家主席は14日、北京でトランプ米大統領と会談した際、重要な疑問を提起した。中国と米国はいわゆる「トゥキディデスのわな」を回避できるのかという疑問だ。学術的な響きのあるこの用語は、中国が抱く野心の核心に関わる概念だ。
2010年代にハーバード大学のグレアム・アリソン教授が広めたこの概念は、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスに由来する。トゥキディデスの主張は、新興勢力が既存勢力に挑戦する際には、紛争が避けられないというものだ。アリソン教授は研究で、このパターンが歴史を通じて繰り返し現れてきたことを示し、この枠組みを用いて米中対立を分析した。
簡単に言えば、これは構造的な緊張に関するものだ。経済と技術、軍事の各面における中国の台頭は、超大国である米国が長らく維持してきた優位性に挑戦している。双方が対立を望んでいなくても、競争そのものが制御しがたい圧力を生み出すリスクがある。
北京在住のアナリスト、王子辰氏によれば、習氏がこの概念に言及したのはこれが初めてではない。過去の言及を調査したところ、直近では2024年11月、ペルーで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)会合の傍らで、習氏はバイデン前大統領と会談した際にもこの言葉を用いた。
習主席のメッセージは一貫している。対立は回避可能であり、双方は共存の道を見いだすべきだというのが、中国側の位置づけだ。中国政府はこれをしばしば「相互尊重」および「ウィンウィンの協力」と表現している。
米政権の一部にはこの用語を使用することに、より慎重な姿勢がみられる。米政策当局者らはむしろ、ガードレールやリスク管理を強調する傾向がある。
トゥキディデスのわなには戦略的な側面もある。中国政府はこの概念を持ち出すことによって、米中の緊張を貿易問題や台湾問題を超えた、より大きなものに位置付けている。つまり、大国間の相互関係のあり方を定義する正念場だと示唆している。
それは同時に、中国が従属的な存在ではなく、米国と対等な超大国であるという立場も強化する。中国と米国は「新たな大国関係のパラダイムを創出できるのか」という習氏の疑問が、まさに問われている。
原題:What Is The Thucydides Trap and Why Did Xi Raise It With Trump?(抜粋)
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