(ブルームバーグ):イラン戦争を受けた相場下落がウォール街全体に広がり、分散投資が機能しにくい展開となっている。
紛争終結に向けた仲介や中東産原油の供給再開を目指す動きがあったものの、実際には状況が改善せず、市場の不安感を一段と強めた。ナスダック100指数は27日に1.9%下落し、直近高値からの下落率が10%を超え、調整局面入りした。
また、S&P500種株価指数は週間ベースで5週連続の下げと、2022年以来の長期下落局面となった。一方、30年債利回りは5%に接近。ビットコインは戦争前のピークの約半分の水準にある。
週末を前に売りが加速し、S&P500種の2日間の下落率は昨年の関税を巡る混乱以来の大きさとなった。イラン戦争による消費への影響を巡る懸念から、一般消費財セクターは3%下落と5カ月ぶりの大幅安。ここ2週間、比較的底堅かった金融株も2.5%下げる一方、シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は30を上回り、約1年ぶりの高水準となった。
厳しい環境
投資家を取り巻く環境は総じて厳しい。北海ブレント原油は110ドル近辺で推移し、インフレ期待は上昇。最近まで利下げを検討していた中央銀行は、利上げの可能性を模索し始めている。
さらに投資家にとって厳しいのは、従来のディフェンシブ手段がほとんど機能していない点だ。分散ポートフォリオの中核を成す4つの資産クラスのうち少なくとも3資産が、4週連続で同時に下落しており、これは22年5月以来の長さに並ぶ。
米国とイスラエルは27日、核関連施設や製鉄所を空爆した。トランプ大統領はイランに対し、ホルムズ海峡の再開に合意するよう期限を延長し、応じなければ発電所への攻撃に踏み切ると圧力をかけた。
フェデレーテッド・ハーミーズで株式担当副最高投資責任者(CIO)を務めるスティーブ・チアバロン氏は、「トランプ氏は紛争の終結を見据えつつ、原油と債券市場を落ち着かせるよう口先介入していたが、きょうの市場は反応していない」と語る。
反応なし
投資家は週末前にリスク削減に動いた。ルビオ米国務長官が戦争は数カ月ではなく数週間で終結するとの見通しを示した後も、下げは広がった。
インスティネットの株式トレーディング責任者、ラリー・ワイス氏は「数週間前ならこうした見出しで相場は上昇していたが、きょうは反応がなかった。次の展開が見えず、政権とイラン双方の発言に対する不信感は根強い」と指摘した。
分散投資を志向する投資家にとっての苦境はここ数年積み上がってきたが、今回の戦争は債券や金、ボラティリティー取引、暗号資産が同時に機能不全に陥り得ることが浮き彫りになった。
トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズの創業者、マイケル・パーブス氏は今週の顧客向けリポートで厳しい見方を示した。対イラン攻撃開始前日の2月27日時点で完全な先見性があり、債券や金、VIXコール、S&P500種のプロテクティブオプションを積み増した投資家でさえ、現在はほぼ全てのポジションで損失を抱えている計算になる。
パーブス氏は取材に対し、「それぞれ異なる理由で同時にうまく機能しなかった。まさにパーフェクトストームだ。不確実性がこれほど多い状況では、明確な特効薬は存在しない」と話す。
背景は複雑だ。債券の売りはインフレ期待の上昇だけでなく、中央銀行の今後の政策に対する再評価にも起因している。一方、金については中銀の買い入れやドル分散、財政悪化といった構造的な支えは維持されているものの、危機前の値上がりが急ピッチだった。実質利回りの上昇も下押し圧力となった。

米10年債利回りは上昇し、月間ベースで24年10月以来の大幅な上昇となる勢いだ。リスク・パリティー戦略に連動するETFは8%下落している。
シュローダーのミナ・クリシュナン氏は、世界は需要ショックから供給ショックへと移行しており、従来の投資戦略は見直しが必要だと分析。同氏のチームはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)でプロテクションを購入し、中東紛争前にヘッジを構築。これを維持している。
安全資産の不足が続く中、投資家は反発時の機会損失を承知で現金へと資金を移している。また、複雑な商品を扱える投資家には、下落耐性や市場と無相関のリターンを狙う仕組み債やクオンツ戦略といった選択肢もある。
分散投資の有効性
もっとも、分散投資の有効性は通常、数週間ではなく数年単位・数十年単位で評価される。また、株式と債券のシンプルなポートフォリオは25年や今年序盤の2カ月間では堅調なリターンをもたらしていた。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は、債券による分散機能の不全は一時的との見方を示す。同氏のチームは最近、株式のエクスポージャーを引き下げ、債券保有を増やした。米国とイランの緊張が緩和すれば、インフレリスクの後退により債券市場は再び金利低下に焦点を移し、株安時の緩衝材として機能する余地があるとみている。
アローン氏は「今回の戦争はトレンドを中断させたが、全体の構造を変えたわけではない。戦闘が数週間から数カ月で収束するなら、原油は比較的早期に1バレル=75-85ドルのレンジに戻る可能性がある」と語る。
ティケオー・キャピタルの資本市場戦略責任者、ラファエル・チュアン氏は、株式と共に国債や金が下落したことは、根強いインフレ懸念や財政圧力の高まり、個人投資家のセンチメント変化に左右されやすい人気取引の脆弱(ぜいじゃく)性を背景に、従来の防御手段の弱さを浮き彫りにしたと指摘する。
「安全資産という従来の概念が揺らぎつつある。世界経済と金融市場の変化がこの見方をより複雑にしている」と述べた。
原題:Wall Street Reels as Iran War Shatters Its Portfolio Defenses(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.