(ブルームバーグ):イラン戦争は沈静化の兆しがほとんど見られないものの、ウォール街のストラテジストは再び株式を買い始めるよう促している。
今月に入り、S&P500種株価指数やナスダック100指数が下落したことで投資家心理は冷え込み、中東での敵対行為が原油価格を押し上げ、インフレ懸念を高めている。それでも、バークレイズ、CIBCキャピタル・マーケッツ、トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズの株式市場ストラテジストは、足元のリスクにとらわれないよう顧客に助言している。魅力的なバリュエーション、堅調な利益見通し、人工知能(AI)技術への楽観論、そして地政学的ショック後に相場が反発してきた過去の実績を理由に挙げている。
こうした見方は、イランでの戦争開始以降、約6%下落し、S&P500種が5週連続で下げる勢いでも、一定の安心感を市場に与えている。通常は逆張りのシグナルとなるセンチメント指標も、低水準で推移している。S&P500構成企業の今後12カ月の予想利益を基にした株価収益率(PER)は19.5倍と、過去10年の平均とほぼ一致している。
CIBCキャピタル・マーケッツの株式・ポートフォリオ戦略責任者、クリストファー・ハーヴィー氏は26日のリポートで、「全体として、株式は『走る』のではなく『歩く』局面だが、スタートの号砲はすでに鳴った」と記した。

26日の株式市場では弱気派が主導し、S&P500種は1.7%安の6477.16と、1月以来の大幅安となった。米国とイランが近く停戦に至るとの見方への懐疑が強まる中、シカゴ・オプション取引所(Cboe)のボラティリティー指数(VIX)は27を上回った。ナスダック100指数の予想変動率を示す指標も30近辺で推移した。
こうした急落により、S&P500種はハーヴィー氏の年末目標である7450を約1000ポイント下回る水準となった。同氏の見通しが正しく、戦争に伴う最大のリスクが現実化しなければ、15%の上昇余地があることを示している。イランを巡る不確実性を認めつつも、同氏は「ゆっくりと計画的に資金を投じ始めるべきだ」と助言し、アルファベット、アップル、エヌビディア、パランティア・テクノロジーズといった銘柄を挙げた。
買いのシグナルを認識しているのはハーヴィー氏だけではない。JPモルガン・チェースのトレーディング部門は25日、米国株の見方を戦術的な弱気から中立へと引き上げた。同社でグローバル市場インテリジェンス責任者を務めるアンドリュー・タイラー氏は、「買い物リスト」を作成していると述べた。同氏のチームはエネルギー株や大型ハイテク株をロングとしている。
トゥルイスト・アドバイザリーのキース・ラーナー氏は、地政学的緊張が株価をさらに押し下げる場合に備えて一部資金を待機させつつ、押し目を利用して大型株などを買うよう顧客に促している。
同社の最高投資責任者(CIO)兼チーフ市場ストラテジストであるラーナー氏は、「現金を保有している場合、必ずしも完璧な機会を待つべきではない。ニュースをきっかけにした動きでは、適切なタイミングで対応できない可能性があるためだ」と述べた。「真の投げ売り局面となれば、より積極的に動く好機が訪れるかもしれない」とも語った。
地政学的危機の後に株式市場がプラスのリターンを示してきた「極めて一貫したパターン」があるとバークレイズが指摘している点も、投資家の支えとなり得る。
例えば、S&P500種は2001年9月11日の対米同時テロ後の3カ月で2.5%上昇した。2003年のイラク戦争開戦後には13%上昇し、ロシアとウクライナの紛争以降では60%上昇していると、バークレイズのアジェイ・ラジャディアクシャ、アムルート・ナシカー両氏は26日のリポートで指摘。「歴史には説得力がある」と述べた。
今回のケースで米国株は、アナリストが「非循環的な投資サイクル」と呼ぶ要因に支えられている。これにはAI関連の設備投資に加え、防衛やエネルギー関連の支出が含まれる。米企業の利益は今年15%増加する見通しで、コロナ禍後の回復期以来で最大の伸びとなる見込みだ。両氏は「懸念材料は山積しているが、それでも乗り越える価値はある」と指摘した。
一方で、中東からのニュースは相反するシグナルを発している。26日午前には、イランが米国の和平案を拒否したことを受け、トランプ米大統領が軍事行動の強化を示唆した。その後、同日午後には、交渉は「非常に順調に進んでいる」と述べ、合意に達しなければさらなる攻撃に踏み切るとしていた期限を延期した。
ウェルズ・ファーゴの株式ストラテジスト、オースン・クウォン氏は、こうした状況が「痛みを伴う上昇局面」を生み出すと指摘し、大型ハイテク企業やナスダック100指数が大きくアウトパフォームする可能性があるとみている。
トゥルイストのラーナー氏は、「相場が下がるにつれてリスクとリターンのバランスは改善している」と述べ、下落は魅力的な価格で参入するための「入場料」だと指摘した。その上で、質の高い米大型株への投資比率を、慎重かつ段階的に引き上げることで反発に備えるべきだと助言。「投資家は状況を認識する必要があるのであって、無理にヒーローになろうとすべきではない」と語った。
原題:Wall Street Says Stocks Are Too Cheap to Ignore as War Rages On(抜粋)
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