トランプ米大統領が米東部時間23日午前7時5分にイランのエネルギー関連インフラおよび発電所への攻撃計画を5日間延期するとSNSに投稿すると、金融市場は激しく反応した。

原油価格は13%余り急落し、米国債利回りは低下。株価指数先物は寄り付きでの上昇を示唆した。

その後1時間足らずでイラン側が「実りある会話」を行ったとするトランプ氏の発言内容を否定したが、市場は反応薄だった。ウォール街では、トランプ氏が少なくとも、世界経済を危機的な状況に陥れている対イラン戦争の終結に前向きであるとの明確なサインと受け止められた。

BCAリサーチのチーフストラテジスト、マルコ・パピック氏は「今後7-10日以内に解決しなければ、世界経済は新型コロナ禍のような停止状態に陥る恐れがある」と指摘。「今回の発表は、実体経済が急速に悪化しかねないことをトランプ氏が認識していることを示唆している」と述べた。

5分間にわたる金融市場の急反転は、トランプ氏が貿易戦争を一時停止し、世界の金融市場を危機の瀬戸際から引き戻した昨年4月を彷彿(ほうふつ)とさせる。

今回のイランに関する発表も、市場の混乱に動揺していた投資家を意識した側面もあったと、事情に詳しい関係者は明らかにした。

同日の米国株式市場ではS&P500種株価指数が一時2.2%上昇し、5月以来の大幅高となった。米2年債利回りは一時、0.22ポイント低下の3.79%まで下がった。ブレント原油は1バレル=100ドルを割り込み、ドルは下落。欧州の株式・債券市場も下げから一転してプラス圏で終えた。

だが、トランプ氏がイランとの戦争を容易に終結させられるかどうかを巡っては疑問がくすぶっている。こうした中、米国株は伸び悩み、大統領の発言だけで相場を動かすことの限界も浮き彫りとなった。

ハートル・キャラハンのブラッド・コンガー最高投資責任者(CIO)は「もはやトランプ氏の判断次第ではなく、関税の時とは異なるのではないかと懸念している」と指摘。「トランプ氏が金融市場の動向を意識すると期待する向きもあるが、その見方は的外れだ」と述べた。

第2次トランプ政権1年目には、市場の急落を招けばトランプ氏が方針を転換するとの見方が定着。「TACO(トランプ氏はいつも腰砕け)」トレードが市場の合い言葉となった。貿易戦争やデンマーク自治領グリーンランド支配への言及、米連邦準備制度理事会(FRB)への批判がトランプ氏の口から飛び出す度に、押し目買いの勢いが強まった。

だが、対イラン戦争はこの前提を揺るがしている。ホルムズ海峡の事実上の封鎖に伴うエネルギー価格の高騰でインフレ懸念が高まり、先週には主要中央銀行による利上げ観測が高まった。その結果、景気低迷とインフレが同時進行するスタグフレーションのリスクが高まり、世界の債券の時価は今月2.5兆ドル(約399兆円)以上吹き飛んだ。

RBCウェルス・マネジメントのトム・ギャレットソン氏は「トランプ大統領が必死に原油価格の上昇を抑え込もうとしているのは明白だが、今回も最終的には債券市場が同氏の行動を促した可能性がある」と述べた。

S&P500種が週間で約1年ぶりの長期下落局面となった前週末20日、トランプ氏は目標達成に非常に近づいており、中東での軍事行動の縮小を検討しているとSNSに書き込んだ。

ところが、週末にはイランが48時間以内にホルムズ海峡を再開しなければ電力インフラを攻撃すると警告。週明け23日には、イラン側との協議の進展を理由に、その攻撃計画を5日間延期すると表明した。

こうしたトランプ氏の二転三転ぶりは、これまでの虚偽の発言や誇張なども合わせ、金融市場でトランプ氏の信頼性を損ねているとの見方が広がっている。

みずほのストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏は、ホワイトハウスの発信が市場のポジショニングを混乱させていると指摘する。

「難しいのは戦争の展開を予測することではなく、ホワイトハウスの対外発信と、それに市場がどの程度反応するかを見極めることだ」とリポートで記述。「戦争終結が近いという信頼できるシグナルなのか、それともまた曖昧な発言に過ぎないのか、市場は判断に迷っている」と分析した。

トランプ氏の発言は市場を下支えするための短期的な措置に過ぎないのではないかとの懐疑的な見方が広がる中、株・国債ともに上げを削って終えた。

原題:Trump’s Wild, 5-Minute Rally Sends Clear Message to Wall Street(抜粋)

(日本語のチャートを追加して更新します)

--取材協力:Sydney Maki、Elena Popina、Kasia Klimasinska.

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