(ブルームバーグ):日本最大の労働組合の全国組織である連合が23日公表した2026年春闘の第1回回答集計では、3年連続5%を超える賃上げに向けて順調なスタートが示された。日本銀行にとって金融政策の正常化を支える材料となる。
連合の発表によると、23日午前10時時点で平均賃上げ率は5.26%、ベースアップ(ベア)は3.85%となった。前年同時期はそれぞれ5.46%、3.84%だった。
300人未満の中小組合の賃上げ率は5.05%で、5%を超えるのは2年連続。ベアは3.54%となっている。前年同時期はそれぞれ5.09%、3.62%。
連合の芳野友子会長は会見で、「企業の持続的成長、日本全体の生産性向上につながる人への投資の重要性について労使で認識共有を図り、中長期的視点を持って粘り強く真摯(しんし)に交渉した結果だ」と評価。交渉は「これからが本当の正念場」とし、結果に結び付けていくことが極めて重要との認識を示した。
今回の結果は「賃金と物価が緩やかに上昇するメカニズムは維持される」という日銀の見方に沿う内容だ。植田和男総裁は19日、リスク要因として中東情勢や原油価格の動向に言及した一方、経済・物価の見通し実現なら利上げで緩和度合いを調整していく考えを改めて示した。春闘に関しては特に中小企業の動向を注視している。
楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、日銀にとって「今日の結果は想定通りだったことが確認できたという評価になるのだろう」と分析した。今後については中東情勢の緊迫化で高騰した原油相場の動向が鍵になるとみており、4月の利上げは困難との見方を示している。
18日の集中回答日には日立製作所や三菱電機が組合の要求通り満額回答するなど、大企業を中心に高水準の賃上げが継続している。自動車や電機メーカーなど五つの産別労組で構成される金属労協の回答額(速報値)は、傘下49組合平均で月1万5450円と、14年の集計開始以降で最高となった。
国内最大の産業別労組で、中小組合が約7割を占めるUAゼンセンでは、19日時点でパートの賃上げ率が6.92%と組合結成以来の最高水準で妥結。10年連続で正社員(5.45%)を上回る引き上げ率となっている。
ブルームバーグの最新のエコノミスト調査では、今春闘の賃上げ率の予想中央値は5.05%。ベアで3.50%が見込まれている。
連合は今春闘で3年連続の賃上げ「5%以上」、中小の労組は格差是正分を加えた「6%以上」を掲げ、目標実現に強い姿勢を示している。25年春闘の最終回答集計では、平均賃上げ率が5.25%と、33年ぶりに5%を超えた前年を上回った。中小は4.65%で、1992年以来の高水準だった。
高市早苗首相は23日夕に官邸で開いた政労使の意見交換の場で、「賃上げの勢いを大企業に加え、地方の中小企業や小規模事業者にも広く波及させていくことが重要」と発言。政府としては、積極財政の下で事業者の予見可能性を高め、「中小、小規模事業者が安心して成長投資に前向きに取り組める環境を整備する」と語った。
経団連の筒井義信会長は会合後、記者団に対し、「力強い数字を会議で共有するという、非常に前向き感があった」と語った。中東情勢の緊迫化の影響で予見性が低下しているものの、「賃上げは人への投資、企業を成長させる投資という観点から、勢いが持続してほしい」と述べた。
原油高騰による影響
中東情勢が緊迫化する中、労組幹部からは、原油価格の高騰による影響が既に春闘交渉に及んでいるとの声も出ている。
日本化学エネルギー産業労働組合連合会(JEC)の堀谷俊志会長は、石油精製関連の企業は先行きに対する不安があり「交渉の妥結時期を遅らせたいという動きも出ている」と説明。エチレンプラントを所有する企業の交渉にも「若干の影響が出ている」と話した。
全日本運輸産業労働組合連合会(運輸労連)の成田幸隆中央執行委員長は、軽油などの燃油費が大幅に増加している状況で今後の経営に与える影響も大きく、企業側からは大変厳しいという声が出ていると指摘。ガソリン暫定税率の廃止はあるが、「これらの影響が今後交渉にもかなり影響されることを危惧している」と述べた。
一方、金属労協の金子晃浩議長は、エネルギー価格の高騰は経営側、生活者側両方に負担となるため「お互いさまだ」という認識で、賃上げに悪い影響は「今のところ全くない」と語った。
連合は第2回回答集計結果を27日に公表する。
(高市首相と経団連会長の発言を追加して更新しました)
--取材協力:梅川崇.
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