(ブルームバーグ):日本銀行は16日の金融政策決定会合で、政策金利を31年ぶり水準の1.0%程度に引き上げた。今後も政策の正常化路線を継続する方針を示した。2027年度以降の国債買い入れの減額停止も決めた。
植田和男総裁が入院のため初めて不在となった会合で、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.75%程度から0.25ポイント引き上げることを賛成7・反対1で決めた。昨年12月以来の利上げで、政策金利は1995年以来の高水準となる。植田総裁の下での利上げは24年3月のマイナス金利政策の解除を含めて5回目。
先行きの金融政策運営については、「経済・物価・金融情勢に応じて、 引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と利上げ路線を堅持。利上げ後も緩和的な金融環境が維持されるとし、消費者物価の基調的な上昇率が「2%の物価安定目標を超えて上振れていくリスク」にも言及した。
既に利上げを織り込んでいた金融市場は、日銀の政策対応が遅れているとして、先行きの政策運営に注目していた。声明では政策判断で重視する基調的な物価上昇率が上振れリスクも指摘し、インフレの高まりに対応していく姿勢を示した。

S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの田口はるみ主席エコノミストは、今後もインフレ圧力に加えて円安傾向も続くとし、日銀が半年に1回程度の緩やかな利上げを続けていくスタンスは変わらないと指摘。「年内にもう一度利上げもあり得る」と予想した。
声明では、2%目標の持続的・安定的な実現の観点から緩和度合いの調整が適切と利上げの理由を説明。原油高を起点とした企業間の価格転嫁のスピードがやや速く、消費者段階に波及していく可能性があると指摘した。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、政策金利の見通しに関し、少なくとも半年に1度0.25ポイントずつ引き上げると予想。中立金利は1%台後半の可能性が高いとし、物価目標が達成可能な1年程度で中立金利まで上げておく必要があると語った。次回利上げは12月会合で1.25%、来年6月には1.5%になるとみている。
16日の日本市場は午後の取引で日経平均株価が一時初の7万円台に乗せた。日銀会合の結果が市場予想通りで安心感が広がった。債券市場では下げが拡大し、新発10年債利回りが前日比7.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い2.65%に上昇。円は160円台前半でもみ合っている。
内田会見に注目
今会合では氷見野良三副総裁が議長を務めた。総裁を除く8人による採決では、浅田統一郎審議委員が物価の上振れリスクよりも生産・雇用の下振れリスクの方が大きいとし、利上げに反対した。午後3時半に予定されている記者会見には内田真一副総裁が臨み、今後の利上げ方針を巡る発言に市場は注目している。
伊藤忠総研の武田氏は、内田副総裁の会見について、今後の利上げペースとターミナルレート(最高到達点)に加え、日銀の物価目標の達成時期見込みに変更がないかを注目点として挙げた。

日銀が政策金利を据え置いた前回の4月会合では、3人の審議委員が利上げを主張して反対票を投じた。その後も他の審議委員から利上げに前向きな発言が続き、植田総裁も3日の講演で「利上げの是非についてしっかりと議論する必要がある」と述べていた。
イラン戦争後にインフレ圧力が強まる中、主要中央銀行では欧州中央銀行(ECB)が11日、中銀預金金利を0.25ポイント引き上げ、2.25%にすると決定した。利上げは23年9月以来、約3年ぶり。市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)も年内に利上げに踏み切るとの観測が広がっている。
最大の焦点となっている中東情勢を巡って、米国とイランは14日夜、エネルギー輸送の要衝、ホルムズ海峡を再開させる暫定的な和平合意に達した。6月19日に正式署名される見通しだが、合意の具体的な内容を巡り双方の見解には食い違いも見られており、引き続き不安材料となっている。
国債買い入れ
今会合で中間評価を行った国債買い入れ方針については、26年度は毎四半期2000億円程度ずつ減額するペースは変更しない。27年度以降は月間2兆円程度の買い入れを行うとし、事実上の減額停止を決めた。田村直樹審議委員が28年1-3月までの減額継続を主張して反対した。
ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎シニアエコノミストは、27年4月以降の国債買い入れ計画について、日銀は今後、長期国債の買い入れ計画の中間評価は実施しないとして上で、月間2兆円程度の買い入れを行うとのことから、「実質的に減額が停止されると解釈してよいだろう」と指摘した。
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--取材協力:氏兼敬子、野原良明.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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