まとめと留意点

本稿では、ニッセイ基礎研究所が2025年に実施した被用者調査データを用い、在宅勤務の頻度と通勤時間、そして心理的ストレス(K6)の関係を記述的に確認した。

その結果、通勤時間が短い人の間では、週2~4日程度の在宅勤務を行う、いわゆるハイブリッド層において、平均的に心理的ストレスが高い傾向がみられた一方、通勤時間が長い層では、同頻度の在宅勤務を行うハイブリッド層の心理的ストレスが低い傾向が確認された。

これらの結果は、在宅勤務の効果が一様ではなく、通勤時間という生活条件との組み合わせの中で異なる方向に作用し得る可能性を示唆している。

在宅勤務は、孤立感や苛立ちと関連する側面が指摘される一方、ハイブリッド勤務は仕事満足度やワークライフバランスの高まりと関連する可能性があることも報告されている。

また、メンタルヘルスの状態が在宅勤務の頻度に影響を与えている可能性も考えられる。

通勤時間の短い層では、在宅勤務の持つ負の側面が相対的に強く表れた可能性がある一方、通勤時間の短縮幅が大きい長時間通勤者では、在宅勤務の正の側面がより強く反映された結果とも考えられる。

企業における制度設計の観点からは、在宅勤務の頻度を一律に拡大・縮小する議論ではなく、従業員の通勤条件や業務特性に応じた柔軟な運用が重要となる可能性がある。

特に長時間通勤者にとっては、一定程度の在宅勤務が心理的負担の軽減につながる余地がある一方、通勤時間が短い層では、ハイブリッド勤務が必ずしもストレス軽減につながらない可能性も示唆される。

もっとも本分析は単純集計に基づくものであり、就業条件、所得、職種などの違い等、通勤時間や在宅勤務とメンタルヘルスの関係に影響を与え得るさまざまな要因を考慮したものではない。

また、通勤時間や在宅勤務が心理的ストレスに与える影響について、因果関係を示すものではない点には留意が必要である。

通勤時間や在宅勤務の活用は、働き方のみでなく、生活環境と密接に関わる要素である。

多様な働き方が定着しつつある現在、その効果を単純化せず、個人の置かれた状況との相互作用の中で丁寧にとらえていくことが、健康で持続可能な労働環境の構築に向けて、今後一層求められるだろう。