全国銀行協会は、企業買収で活用されるレバレッジドバイアウト(LBO)融資について、リスク管理の手引き作成に乗り出す。買収・合併(M&A)市場が急拡大する中、必要資金を円滑に供給できる体制を整えるとともに、金利ある世界において融資の出し手である金融機関にとって審査の重要性がより高まっていることに対応する。

複数の関係者が明らかにした。全銀協は2025年4月から1年間、買収先企業の資産を担保とするLBO融資について、みずほ銀行や三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガ銀行や地方銀行などに加え、金融庁や日本銀行の担当者も交えた非公開での勉強会を実施してきた。今月中に報告書を公表する予定だ。

ブルームバーグが入手した報告書案には、リスク管理の手引き作成のほか、契約書の文章や用語・定義などの形式をそろえる「標準化」についても検討の必要性が盛り込まれた。リスク管理を高度化すると同時に、新たにLBO融資に参入する障壁を下げ、担い手を広げる考えだ。全銀協の広報担当者はコメントを控えた。

M&Aは企業価値向上や非公開化、事業承継の必要性から2025年に年間取引額の合計は過去最高を更新しており、「兆円単位」の大型案件も増えている。LBO融資は買収先企業が将来生み出すキャッシュフローそのものを返済原資として、資金を貸し出す。通常の企業向け融資よりもリスクが高い分、利ざやも厚い。

通常、変動金利が使われるため、「金利のある世界」では融資を受ける企業にとって、利払い負担増加の影響を正面から受ける。買収先の企業が将来にわたりどのくらいの価値を持つかを見極め、安定したキャッシュフローを生むかどうか判断する高度な目利き力が、今後は一段と求められることになる。

リスク管理に課題

LBOを活用すれば、企業は自己資金を抑えながらM&Aに踏み切れる。今月発表されたトヨタ自動車グループによる豊田自動織機への株式公開買い付け(TOB)は、日本企業を対象とした過去最大の買収となった。株式買い付けに向けた資金調達額は4兆7669億円に上り、8割弱に当たる3兆6425億円を3メガ銀行からの借り入れでまかなう。

全銀協は今回の報告書作成に合わせ、加盟する111行に25年9月末時点でのLBOに関するデータ集計を行った。残高は大手行で約6兆9000億円、地銀などで約1兆9000億円だった。LBO融資は歴史的に、3メガバンクやあおぞら銀行などの大手が担ってきたが、足元では地方銀行の参入も盛んだ。

ただ、金融庁は昨年のリポートで、地銀によるLBOのリスク管理について「規律・マニュアルの整備や入口審査、期中管理などのリスク管理面で課題が見られた」とくぎを刺した。人材育成の面でも、「審査やリスク管理の態勢整備を先送りしている」と踏み込んだ。

安易な貸し付けで銀行経営そのものまで危うくなったりする事態は避けなければならず、報告書案では足元の金利上昇が与える影響についての懸念を示した。金利が上がれば、利払い費が増えて返済余力やキャッシュフロー耐性をより見極める必要があるなど、審査やモニタリングの重要性が増すことなどを指摘した。

参加者のすそ野拡大

一方で、M&Aは案件数と金額規模の両面が拡大しており、LBO融資の担い手不足が理由で戦略上重要なM&Aを遂行できないケースも出かねない。地銀の参加は増えているものの、今回のデータ収集では、LBOを扱っている銀行は全体の63%にとどまっており、参加者のすそ野を広げる必要性も高まっている。

欧米ではLBO債権の二次流通市場が確立しており、日本でも融資を抱え続けるのではなく、転売を含む市場環境の育成も課題となる。

こうした参加者のすそ野拡大には、契約の文言や用語の定義、情報開示やモニタリングの枠組みを一定程度標準化させる必要がある。現状は同じ銀行内ですら、案件ごとに異なっているのが実態だ。全銀協は報告書案で、この点についても「段階的に検討することが適当」と盛り込んだ。

全銀協は今後、半期に1度の割合でLBOデータの収集を継続する一方、データ項目や定義、正確性にはまだ課題があるとして見直しを続ける方針だ。

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