TOTOが世界的な注目を集めている。ハイテクトイレが理由ではない。人工知能(AI)だ。

アクティビスト(物言う株主)、英パリサー・キャピタルは最近、「ウォシュレット」で知られるTOTOに対し、先端セラミックス事業を背景にAI関連銘柄として成長している点をもっと強調するよう経営陣に求めた。

パリサーによれば、TOTOは「最も過小評価され、見過ごされているAIメモリー分野の受益企業」だ。あまり知られていない同社の半導体部材事業は、最近では営業利益の半分を占めた。

だが、直近の投資家向けプレゼンテーションで割かれたページはわずか1ページにとどまり、限られた開示内容のためにその価値は「事実上、市場から隠されている」とパリサーは指摘した。

世界有数のトイレメーカーが、実は成長している半導体サプライヤーであることは、読者には意外ではないかもしれない。しかし、パリサーの主張は的を射ている。そして、その論点は、TOTOにとどまらない。

日本企業はサクセスストーリーを語ることがあまり得意ではないようだ。特に事業が多角化していたり、ニッチな分野に属している企業であればなおさらだ。

国内メディアへの対応を周到に準備する各社だが、ディスクロージャーの改善が進んでいるとはいえ、情報を引き出すのが今なお骨の折れる企業もある。さらに、情報開示に積極的な企業でさえ、受け手となる市場の関心を十分に引きつけるのはずっとうまくなかった。

だが、AIやロボット工学の時代に入り状況は変わりつつある。日本は特殊化学品やウエハー基板、センサーやモーターといった分野で豊富な知見を持つ。

ソフトウエアの時代には後れを取ったかもしれないが、こうした物理的なハードウエアのサプライチェーンこそ、依然として日本企業が優位性を持つ領域だ。

日本経済における創造的破壊の欠如を嘆く声もあるが、日本ではイノベーションが異なる形で起きているに過ぎない。TOTOのように、企業は機敏に自らを再発見し、新たなビジネスモデルへと移行している。

例えばフジクラだ。同社は蒸気機関やガス灯の時代である1885年に創業したが、今やデータセンターで使われる光ファイバーを武器に、世界で最も注目されるAI関連銘柄の一つとなっている。

フジクラの株価は2024年初めから約25倍に上昇し、日本の優良銘柄で最も好調なパフォーマンスを示している。

世界をリード

H・G・ウェルズが「宇宙戦争」を発表した1898年に絹紡績会社として創業した日東紡績もある。同社は現在、ガラスクロスの主要サプライヤーとなり、エヌビディアやアップルとの関係が報じられる中で、株価は昨年以降4倍超に上昇した。

大日本印刷(1876年創業)やTOPPANホールディングス(1900年創業)はインクや紙の会社と見なされがちだが、実際には半導体パッケージ材料やフォトマスクの重要なメーカーだ。

ヤマハ発動機は、その多様な製品群を巡ってミームの題材になることもある。有名なピアノはヤマハが製造しており、オートバイメーカーのヤマハ発動機は数十年前にそこから分社化された。多角化は続いており、ヤマハ発動機は2030年代初めまでに自社の半導体後工程事業を1000億円規模に拡大することを目指している。

筆者はここ数週間、日本が産業用ロボットで世界をリードし、経済産業省によれば、世界市場シェアは約7割(2022年)だと知って驚く何人もの人と話した。

しかし、体温計や体重計などのヘルスケア機器メーカーというイメージが強いオムロンが、現在では利益の3分の2を産業オートメーションから稼いでいることは、筆者自身も最近まで知らなかった。

こうした優位性にもかかわらず、テクノロジー分野の話題はカンフーは得意だが実用性に疑問のある中国のヒト型ロボットや、テスラのヒト型汎用(はんよう)ロボット「オプティマス」を巡る過熱気味の宣伝と結び付けられがちだ。日本は自らを売り込む点で改善が求められる。

企業の資料を誰もが理解できる形にする高品質なAI翻訳ツールの登場は、日本勢に追い風となっている。しかし、どの言語であっても、この分野で日本最大級の企業の一つでありながら秘密主義で知られるキーエンスについて多くを知るのは難しい。

工場自動化向けセンサーを手がける同社の株価は、収益が倍増する中でもここ5年間、レンジ内で推移してきた。ロボット工学が強く強調されれば、恩恵を受けないとは考えにくい。

日本製品は、しばしば外部の後押しを受けて初めて世界的に知られる存在となる。映画「ロスト・イン・トランスレーション」は日本のウイスキーを世界に知らしめたとよく言われるし、少数のオーストラリア人スキーヤーが北海道のパウダースノーの可能性を最初に見いだした。

日本政府は現在、アニメを主要な輸出産業として位置付けている。だが、アニメが世界的な名声を得たのは、政府が音頭取りをしたからではない。米国人のグループが海賊版サイトとして当初創設したクランチロールのように草の根のファン活動が寄与した。

日本企業にもそうした伝道者が必要だ。パリサーは、企業の歴史や取り組みを語り直せば、TOTOの株価はさらに55%上昇する可能性があるとみている。

日本でのアクティビストの影響力拡大にやや居心地の悪さを感じることがあるかもしれない。しかし、むしろ積極的に活用し、日本企業のメッセージ発信を後押しすべきだろう。かつてのゴールドラッシュではつるはしとシャベルが主役だった。今は水回りのテクノロジーが主役だ。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Beyond Bidets Lies the Overlooked Plumbing of AI: Gearoid Reidy(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.