戦争を背景とした原油・天然ガス価格の急騰は、グリーン投資家にとって苦い記憶を呼び起こす。再生可能エネルギー関連株が売りに押され、その影響が昨年まで続いた2022年を連想させるためだ。だが、金融サービスの米ジェフリーズは、顧客に対し強気の見通しを一段と進めるよう促している。

ジェフリーズは25年、長らく不利な取引とみられてきた戦略が「栄光の時代」に入ったとグリーン投資家に伝え始めた。クリーンエネルギー株は昨年44%上昇し、16%高にとどまったS&P500種株価指数を大きく上回る展開と重なった。

現在はインフレ高進や金利上昇、サプライチェーンの混乱という、過去にグリーン戦略を頓挫させてきた要因が再び意識されている。それでもジェフリーズは顧客に対し、動揺せずクリーンエネルギー分野にとどまるよう呼びかけている。

 

ジェフリーズのサステナビリティー・移行戦略のグローバル責任者を務めるアニケット・シャー氏(ニューヨーク在勤)によると、25年のガイダンスは今も「依然として極めて」有効なストーリーだという。見通しは「全く」変わらず、各国政府がエネルギー自立を急ぐ中、イラン戦争が再生可能エネルギーへの新たな投資の波を引き起こすとみている。

今年もこうした戦略を堅持してきた投資家は、現時点では市場を上回るリターンを得ている。S&Pグローバル・クリーンエネルギー・トランジション指数は6%余り上昇し、約1.5%下落のS&P500種を上回る。ただ、今後数週間から数カ月は投資家の確信が試される局面となりそうだ。

化石燃料

イラン戦争によるエネルギー市場の混乱は、原油や天然ガス価格を押し上げるだけでなく、最も汚染度の高い化石燃料も下支えしている。ブルームバーグNEF(BNEF)によれば、数カ月にわたり圧迫されてきた欧州の石炭・褐炭火力発電は、ガス価格急騰を直接の要因として再び採算が改善している。

ヒルコ・グローバルの地政学部門エグゼクティブディレクターで、元米陸軍長官のパトリック・J・マーフィー氏は、原油・天然ガス価格の高止まりは短期的に化石燃料企業の収益を強化し、クリーンエネルギー株を一時的に上回る可能性があると述べた。

一方で年金基金や政府系ファンドなどの長期投資家は、脱炭素化への取り組みに「疑いの余地なく」引き続き「極めて強く」コミットし続けるとの見方も示した。

ブルームバーグが取材したアナリストや投資家、ファンドマネジャーによると、22年当時とは異なる要素も多い。グリーン企業はバランスシートを強化し、より厳格なリスク管理基準や高い収益要件を適用してから新規プロジェクトに着手する動きがみられる。

ドミニ・インパクト・インベストメンツのキャロル・レイブル最高経営責任者(CEO)は、金利の影響も22年ほど顕著ではない可能性があると分析。26年に金利がやや高くなる可能性はあるが、プロジェクトの推進に重大な影響を与えるほどではないとの見方を示した。

またここ数年の再生可能エネルギー拡大もある。ロシア産ガスへの依存で22年に大きな打撃を受けたドイツでは、太陽光発電の出力増加が、イラン戦争で世界的なエネルギーコストが上昇する中でも電力価格の上昇を抑える一因となっている。

シュローダーのグローバル資源株式チームでポートフォリオマネジャーを務めるアレックス・モンク氏は、とりわけ風力分野が契約条件の設定において規律を強め、コスト転嫁やインフレ防御をより可能にする仕組みを整えてきたと指摘する。

さらに22年との大きな違いは人工知能(AI)の影響だ。AIデータセンターを稼働させるための電力需要が再生可能エネルギーを下支えしている。

地政学的環境が22年よりも一段と緊迫している可能性がある中、エネルギー安全保障はより差し迫った目標となっている。ガスや石油の輸入依存からの脱却に成功すれば、外部ショックによる経済への打撃を抑えられる。

モンク氏は、エネルギー市場の混乱は総じてエネルギー分野にとって好材料だと述べた。短期的には商品価格上昇が従来型エネルギー株を支えるが、同時にエネルギー安全保障という課題を改めて強く意識させるという。

多くのグリーン投資家は、熱狂が厳しい損失へと転じた過去の循環で傷を負っている。米国での政治的な逆風や欧州の規制混乱も背景にある。それでも昨年4月まで続いた歴史的な低迷を経て、足元では悲観論をはね返す兆しも見せている。

中東情勢は再生可能エネルギー投資における新たな資本循環を促すとモンク氏はみている。電力需要が拡大を続ける中、エネルギー安全保障を改めて問い直す必要があるためだという。

需要の多くは、AIデータセンターを支えるためのエネルギー容量投資を進めるいわゆる「ハイパースケーラー」から生じており、低炭素オプションが重視されている。

戦争でのAI活用

ナインティー・ワンのサステナブル株式責任者ディアドラ・クーパー氏は、12カ月後に振り返った際、今後5年間の経済の姿を左右するのは、AIがもたらす変革かイランへのミサイル攻撃かが問われるだろうと述べ、AIだとの見方を示した。

BNPパリバ・アセットマネジメントの環境戦略共同責任者エドワード・リーズ氏(ロンドン在勤)は、戦争におけるAIの活用拡大もエネルギー投資判断の指針になると語った。

足元はボラティリティーの高い局面にあるが、軍事行動ではAIが活用され、装備は半導体を使用し、ひいてはエネルギーを必要とするため、同社が注目する多くの分野でエネルギーは中核的な位置を占めると述べた。このためイラン戦争勃発後も、グリーン資産への配分はおおむね維持しているという。

 

アリアンツ・グローバル・インベスターズは最近の顧客向けリポートで、欧州のエネルギー移行はかつての環境中心の課題から、戦略的自律の中核的柱へと進化したと論じた。同社で欧州株式の最高投資責任者(CIO)を務めるクリストフ・ベルガー氏は、イラン戦争開始を受けポートフォリオのポジショニングについて集中的な議論を重ねたと明かした。

結論は、外部供給ショックへの脆弱性を回避する進行中のトレンドに資する既存ポジションを改めて重視することだという。スマートグリッドやスマートメーター、エネルギー管理分野への重点配分を強化する方針で、欧州には中核的な技術プロバイダーが存在し、戦争という環境は電力供給の分散化の必要性を想起させると説明した。

こうした見解は、欧州の安全保障目標に沿って資金を配分する投資家の広範な動きとも合致する。域内の資産運用会社は、防衛関連資産や戦略技術、エネルギー分野への投資を増やしている。

もっとも先行きには不確実性も多く、ジェフリーズのシャー氏によれば、グリーン企業が吸収できる金利上昇には明らかに限界があり、米10年国債利回りが5%に達すれば問題が生じ得る。

 

原題:Jefferies Makes Bold Call as Nightmare of 2022 Haunts Clean Tech(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.