(ブルームバーグ):米株式市場ではここ数週間、ソフトウエア株が売り込まれている。人工知能(AI)によって従来型のビジネスモデルが空洞化するとの懸念が背景にある。プログラミングコードを書く作業を生成AIに任せる「バイブコーディング」が広がれば、セールスフォースやインテュイット、ワークデイ、スノーフレークといった企業の事業モデルはどうなるのかとの懸念だ。
一方、エヌビディアはこれとは対照的な見方を示している。
エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、エージェント型AIによってコンピューティングは転換点に達したとの見解を示す。エージェント型AIとは、企業向けツールに組み込まれ、実際に業務を遂行するソフトウエアを指す。セールスフォースやサービスナウが積極的に売り込んでいる製品と同種のものだ。
フアンCEOの主張は明確だ。AIがソフトウエアの価値を高めるなら、それを組み込み、エヌビディアの半導体に支えられる企業も同社とともに成長するはずだ。
フアン氏は、収益の源泉は大規模言語モデルの訓練そのものではなく、現実世界でAIを継続的に稼働させる「推論(インファレンス)」にあると指摘する。モデルが稼働するたびにデータはトークンへと変換され、その成果がコーディング支援や顧客対応ボット、業務自動化を支える。顧客がアウトプットに対し、半導体やクラウド基盤のコストを上回る対価を支払えば、それは「利益を生むトークン」となる。計算能力が推論を可能にし、推論がトークンを生み、トークンが収益を押し上げる。
この見方に立てば、AIはソフトウエアを破壊する存在ではなく、ソフトウエアに組み込まれた新たな収益源となる。企業向けソフトはAIエージェントの基盤へと変わり、基幹業務の一部としてトークンを継続的に生み出す。
その見方を裏付ける初期の兆しも出ている。スノーフレークのスリダール・ラマスワミCEOは、かつて4週間かかっていた社内プロジェクトが今では40分で完了すると述べた。顧客もそうした生産性を引き出すため、トークンへの多額の支出をいとわないという。
フアン氏がこうした見解を示す以前から、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアヌラグ・ラナ氏は、長期的にはAIが、マイクロソフトやSAP、ワークデイなどが提供する企業向けプラットフォームを強化するとの見方を示していた。
もっとも、懐疑的な視点も欠かせない。エヌビディアは推論を支える画像処理半導体(GPU)を販売しており、AI需要が持続的に拡大するとの見方から直接的な恩恵を受ける立場にある。「計算能力が推論を生み、推論が収益につながる」という世界観は、同社の利害と整合的だ。
市場が直面するジレンマはこうだ。AIはソフト企業を空洞化させるのか、それとも成長エンジンとして内部に組み込まれるのか。エヌビディアは明確に後者を主張している。しかし足元の株安は、投資家が前者に傾いていることを示唆している。
原題:Software Meltdown May Miss Benefit From AI: Tech In Depth(抜粋)
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