トランプ米大統領は、ウクライナでの戦争終結とイランとの対立解消に向け、娘婿のジャレッド・クシュナー氏と長年の友人スティーブ・ウィトコフ氏に対応を任せている。両氏は26日、こうした重大案件を数時間のうちに掛け持ちした。

スイス・ジュネーブに派遣されたクシュナー、ウィトコフ両氏は、米国とイスラエルによる大規模攻撃に発展しかねない事態を回避するため、イランの核開発計画を巡る合意の取りまとめを目指し、オマーン大使公邸でイラン当局者と会談した。

それから数時間後、両氏はロシアによる侵攻が5年目に入ったウクライナを巡り、同国当局者と協議するため市内を移動し、インターコンチネンタル・ホテルに入った。

その後、フォーシーズンズ・ホテルに場所を移し、ロシアとウクライナ双方の特使と別々の階で会談した後、再びオマーン大使公邸へ戻った。

1週間足らず前には、パレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘停止に向けて両氏がまとめた停戦合意を受けて設立された暫定統治機関「平和評議会」の初会合がワシントンで開催され、両氏も出席している。

欧州と中東を一段と不安定化させかねない紛争の沈静化を図る両氏の慌ただしい取り組みは、トランプ氏の外交戦略に内在する緊張を浮き彫りにしている。和平と米国の経済的利益の確保に向けて2人を起用したことは、広範な政府機構よりも信頼する側近に最重要課題を託す同氏の姿勢を示している。

だが、これには極めて大きなリスクを伴う。クシュナー氏とウィトコフ氏の能力や手腕がいかに優れていようとも、両氏がこれら全てに対応し続けることができるのかには疑問も生じる。

カーネギー国際平和財団のシニアフェローで、共和・民主両政権で国務省の交渉官や顧問を務めたアーロン・デービッド・ミラー氏は、「大統領の親友と娘婿という2人の特使が、これら三つの交渉を同時に管理できると信じるのは、信ぴょう性の限界を超えている」と指摘した。

ガザ市の様子(2月20日)

ミラー氏は「われわれが直面しているのは三つの交渉であり、それぞれが膨大な詳細を内包し、いずれも孤立して存在しているわけではない」と指摘。「世界史上最高の交渉人を招いたとしても、それでもなお極めて困難な仕事になるだろう」と語った。

ホワイトハウス当局者は、2人の実績が成功を物語っているとし、両氏は課題を切り分けながら効率的に時間を管理していると説明した。

ビジネスの経歴は各国首脳との交渉に役立っており、ウィトコフ氏は米情報当局者から定期的に説明を受けているほか、両氏は国務省や国家安全保障会議(NSC)とも頻繁に連絡を取っているという。

クシュナー氏はトランプ政権1期目に存在感を高め、イスラエルとの地域外交関係を正常化するアブラハム合意の締結で中心的な役割を担った。2024年には、トランプ氏がホワイトハウス返り咲きを果たした場合でも政権には関与はしないと表明し、家族と自身の投資会社アフィニティ・パートナーズに専念したいと語っていた。

しかし現在は深く関与しており、ワシントンで先週開かれたガザ関連のイベントで、トランプ氏は中東担当特使のウィトコフ氏に合わせ、クシュナー氏にも特使の肩書を与える考えを示した。

両氏の関与には、大規模な事業上の利害関係が影を落としている。クシュナー氏のアフィニティ・パートナーズは多額の資産を運用しており、その中にはカタールの政府系ファンド(SWF)からの資金も含まれる。ウィトコフ氏は暗号資産(仮想通貨)企業ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLF)の持ち分を保有しており、同社はアブダビ政府に関連するファンドを含め、中東で取引を手掛けている。

ウィトコフ氏と、ロシアの交渉団の一員で同国のSWFを率いるドミトリエフ経済特使は、エネルギーやレアアース(希土類)、データセンターを含む戦後の経済合意について協議している。米国、欧州、ウクライナもまた、インフラや投資を巡る戦後復興合意を交渉している。

右からドイツのメルツ首相、クシュナー氏、ウィトコフ氏(2025年12月、ベルリンの首相府。ドイツ政府報道局が提供した写真)

米共和党のティリス上院議員は今週、外交問題評議会(CFR)のイベントで、「クシュナー、ウィトコフ両氏は非常に有能な実業家だ」とした上で、「優れた交渉人であることは間違いないだろうが、上院の承認も受けておらず、監督の対象にもなっていない」と指摘した。

ウクライナ当局者は26日、ロシア当局者との次回の3者協議を3月に設定するため、両氏を歓迎した。

ウクライナのステファニシナ駐米大使は今週、記者団に対し、同国はウィトコフ、クシュナー両氏と協力できることを「うれしく誇りに思う」と語り、トランプ氏と直接連絡を取れる点の重要性を強調した。

トランプ政権1期目にウクライナ交渉の特使を務めたカート・ボルカー氏も、トランプ氏の意向について「権限を持って語る」ことができ、同氏と直接意思疎通できることは間違いなくプラスだと指摘した。

一方でボルカー氏は、「マイナス面として、諸問題やその微妙な点について深い理解があるわけではない」とコメントした。

原題:Trump Puts Fate of World’s Top Conflicts in the Hands of Two Men(抜粋)

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--取材協力:Alberto Nardelli.

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