(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)ビットコインは昨年10月の高値からほぼ半値に下落した。ほぼあらゆる指標でみても、今回の売りは仮想通貨交換業者FTXの崩壊以降で最悪だ。しかし、この壊滅的な状況の中心には一つの謎がある。強気相場の中でビットコインを取り巻く形で築かれた制度的なインフラ基盤が、価格とともに崩れてはいないことだ。
上場投資信託(ETF)資金の大半は残留しており、ウォール街も依然として関与している。戦術的な投資家の一部は撤退したものの、長期保有者は容易には手放していない。価格と市場の強靱(きょうじん)さとの乖離が、売り浴びせにかき消されてきた逆張りの強気論を支えている。
弱気論に援護は要らない。25日の反発を経ても、ビットコインは7万ドルを下回って推移しており、10月の12万6000ドル超の高値とは大きな隔たりがあり、時価総額で1兆ドル(約156兆円)が失われている。流通する全コインの約45%は、保有者の取得価格を下回る水準にある。オプション市場では価格急落への備えにコストを払う動きが広がる。機関投資家の採用が下値を支えるとの期待は薄れた。数週間にわたるETF資金流出を受け、「主流化の実験は失敗している」と結論付ける向きが多い。
それでも逆張り派は、資金流出の数字には文脈が必要だと指摘する。ブロックフォース・キャピタルのブレット・マンスター氏は、2024年1月の現物ビットコインETF開始以降の累積純流入額は数百億ドル規模に達していると指摘。直近の流出分はその総額の約6%にすぎない。
同氏はリポートで、この動きは「この投資家層の降参ではなく、値固めの明確な証拠だ」と指摘。上位25のビットコインETF保有者のうち17が10-12月(第4四半期)に持ち分を積み増したと付け加えた。

ビットコインは25日、株式が小幅高となりリスク選好が改善する中、一時9%超上昇し7万ドル弱まで戻すなど、強気シナリオの一端を示した。反発が持続するのか、それとも過去同様に失速するのかが、相場の分かれ目となる疑問だ。
強気派が言及するのは、ETFデータだけにとどまらず、前回これほど急落した2022年の展開にも注目する。当時はまずインフラが揺らぎ、その後崩壊した。FTXやセルシウス、ブロックファイ、スリー・アローズ・キャピタルが相次いで破綻し、資本だけでなく、市場が依存していたカストディアンや貸し手、交換業者も消えた。信認は焼き尽くされた。
今回は大きな破綻は起きていない。交換業者は稼働を続け、カストディアンも健全だ。銀行は撤退するどころか、むしろ加速している。ビットコイン関連金融サービス会社リバーによると、米国の大手銀行の半数超が暗号資産関連商品を発表済み、あるいは提供に向けて取り組んでいる。
バーンスタインのグローバルデジタル資産担当シニアアナリスト、ゴータム・チュガニ氏は「現在のビットコイン価格の動きは単なる信認の危機に過ぎない。何も壊れていないし、不都合な事実が露呈することもない」と指摘。「ビットコインの弱気論は歴史上で最も弱い」とし、26年に15万ドルに達するとの見方を示した。

もっとも、ウォール街寄りの論理には妥当な反論もある。伝統的金融機関が構築しているものの多くは、ビットコインそのものよりも基盤となるブロックチェーン技術に関わるものだ。JPモルガン・チェースのトークン化マネーマーケットファンド(MMF)はイーサリアム上で運用されている。サークル・インターネット・グループなどが主導するステーブルコインの取り組みは、ビットコインが回復しなくても成長し得る。デジタルインフラは、ビットコイン価格の上昇と無関係に拡大できる。
それでも強気派は、そこに二次的効果を見落としていると主張する。暗号資産取引デスクを開設する銀行やビットコインの購入ボタンを追加する証券会社、ETF推奨が認められたアドバイザーは、いずれもワンクリックするだけでビットコインを買える人々の裾野を広げている。
銀行が何千人もの金融アドバイザーに暗号資産の推奨を認めても、それが直ちに価格を押し上げるわけではない。しかし、次にセンチメントが好転した際、市場に供給される買い余力は過去のどの局面よりも大きくなる可能性がある。インフラは価格に中立でも、アクセスには中立ではない。過去のビットコイン相場では、アクセス拡大こそが回復を上昇相場へと転じさせてきた。
フィデリティ・デジタル・アセッツは構造面の議論をさらに進める。上場企業と現物ETFは現在、流通するビットコイン供給量の約12%を保有している。トークンを積み上げる企業モデルにひびが入る中でも、上場企業の保有残高は2020年初め以降、ほぼ毎四半期増加している。フィデリティの調査チームは、これが過去の循環にはなかった需要の下支えを生み出しているとみる。すなわち、長期志向で、下落局面で売却しにくい主体が保有する量が増えているということだ。
供給面も独自に引き締まっている。24年4月の4回目の半減期で新規発行量は半減した。市場に出回らないコインが増え、採掘量が減る中で、取引可能な供給は価格下落にもかかわらず縮小している。この圧縮が続けば、反発が訪れた際の戻りは市場の織り込みより急になる可能性がある。
原題:Bull Case for Bitcoin Is Hiding in the $1 Trillion Wreckage (1)(抜粋)
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