(ブルームバーグ):トランプ米大統領は24日、連邦議会での一般教書演説に臨む。経済や外交、さらには関税を巡って有権者から懸念の声も出始めている中で、トランプ氏はこうした不安を和らげる必要に迫られている。
一般教書演説は、連邦議会議事堂に両院の議員らが集まり、テレビでもゴールデンタイムに生中継される年に一度の重要演説。米東部時間24日午後9時(日本時間25日午前11時)に始まる予定だ。
関係者の話や直近の動きからは、トランプ氏が演説に向けて、一定の戦略を固めたことがうかがえる。これまでの実績を列挙して強く訴え、中間選挙を前に悪化した国民感情の立て直しを図る構えだ。
トランプ氏は23日、「話すことがたくさんあるので、長い演説になるだろう」と述べた。
もっとも、移民取り締まりの強化に警戒感を抱く有権者や、より介入主義的になりつつある外交政策に不安を感じる層、さらに最高裁の違憲判決を受けて看板政策である関税措置に懐疑的となっている人々を、いっそう遠ざけるリスクもある。
一方で、トランプ氏はこれまでも国民向け演説の場を、物議を醸しているテーマを自らの枠組みで捉え直すために利用してきた。経済実績や新たな製造業投資の確約、移民、イラン、ウクライナといった問題への対応について力強く主張すれば、11月の中間選挙に向けて共和党に必要な勢いを与える可能性がある。
今回の演説は、建国250周年に向けた序章とも位置付けられる。大きな行事が相次ぐ1年となる見通しで、愛国色の強いトランプ氏にとって、国民の支持を結集する新たな機会となる。
演説に向けて、注目点は以下の通りだ。
物価高について何を話すか?
中間選挙では、人々の暮らしに関わる物価の問題が最大の焦点となる。
トランプ氏は看板の減税パッケージや、処方薬価格の引き下げを目的とする新たな政府ウェブサイト、エネルギー料金や住宅価格の抑制策について語る可能性が高い。また、過去最高水準にある株価や、予想を上回る雇用の伸び、インフレの鈍化を示す報告を強調するとみられる。
バンス副大統領は21日、FOXニュースで、「雇用を国内に取り戻すことの重要性や、製造業の国内回帰、建設が進む数多くの素晴らしい工場について多くを耳にすることになるだろう」と述べた。
もっとも、製造業は2025年に10万8000人の雇用を失った。20日に公表されたデータによると、昨年末の米経済成長率は予想を大きく下回り、過去最長となる政府機関の一部閉鎖や個人消費、貿易が重荷となって大幅に減速した。
関税にはどう言及するのか?
トランプ氏は、自身の経済政策を損なう最高裁の判断を批判し、世界各国に関税を課すという脅しを続けていく姿勢を改めて示すとみられる。
最高裁が20日に判断を下してから数時間以内に、トランプ氏は世界一律で10%の関税を課すと表明し、その後15%に引き上げることを示唆した。今後に向けては、関税を維持するために他の手段を用いるとも宣言している。ただし、これらの手段は、最高裁によって行使を認められなかった包括的な権限に比べて機動性に劣り、新たな法的問題に直面する見通しだ。
一方で、大小数千の企業は、米国がこれまでに関税収入として徴収した1700億ドル(約26兆円)超の返還を求めて提訴する構えを見せている。
移民取り締まりは?
トランプ氏が2024年に再選した原動力の一つは、移民取り締まりの強化を公約に掲げたことだった。
しかし、ミネアポリスでの強硬な取り締まりで米国人2人が死亡したことは、全米規模の抗議と、党派を超えた異例の反発を招いた。先週発表されたエコノミスト/ユーガブ調査によれば、移民の取り締まり強化は結果的に悪い考えだったと答えた米国人は54%に達し、世論のトーンは逆転した。
この問題は現在も続く政府機関の一部閉鎖の核心となっている。民主党は、ホワイトハウスが移民・税関捜査局(ICE)の改革に同意するまで、国土安全保障省(DHS)への予算措置を拒否している。
イラン攻撃の可能性については?
米国によるイラン攻撃の可能性は大きな焦点となっている。
トランプ氏は20日、イランへの限定的な攻撃を「検討している」と述べ、核開発計画を巡る早期合意にイラン政府が応じるよう圧力を強めている。合意が成立しなければ、同国にとって「非常に悪い日になる」と23日、SNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
今週のジュネーブでの協議には、ウィトコフ特使とトランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が出席する予定だ。一方で米政権は軍事行動に備え、中東に空母や戦闘機を展開するなど、大規模な軍備増強を進めている。
侵攻4年を迎えたウクライナは?
ウクライナは、ロシアによるウクライナ侵攻から4年の節目を迎えている。自身がノーベル平和賞に値すると繰り返し不満を漏らしてきたトランプ氏は、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の双方に和平プロセス停滞の責任があると異なるタイミングで指摘している。
米国は先週、和平合意に向けた3者協議をジュネーブで開いたが、主要課題で進展がほとんど見られないままわずか90分で決裂した。
トランプ氏の支持者の多くはいまも、米国の海外関与に懐疑的な姿勢だ。しかしトランプ氏は演説で、南米沖での麻薬密輸に関与したとされる船舶への軍事攻撃や、マドゥロ大統領を拘束したベネズエラにおいて石油事業の再開を目指す取り組みなど、一連の外交政策を強調するとみられる。
家計に直結する予算を優先するのか?
法律に基づき、トランプ氏は今月末までに予算教書を議会に提出する見通しだ。昨年は生活費に焦点を絞った民主党に一部選挙で勝利がもたらされたこともあり、今回の演説は、今後1年の予算および歳出の優先事項の一端を示し、国民に理解を求める機会となる。
これまでの予算案では、住宅、医療、教育、研究に関する連邦プログラムの大幅削減を打ち出す一方、軍事費を増額する内容となっていた。
五輪金メダルのホッケーチームを招待
演説には、米国男子アイスホッケーチームの出席という五輪金メダルの話題が彩りを添える可能性がある。チームが22日にカナダを破って金メダルを獲得した後、トランプ氏は祝意を伝えて招待した。
延長戦の末にカナダを破って金メダルを獲得した米国女子アイスホッケーチームも同様の招待を受けたが、代表者によると、既に予定が入っていたため辞退した。
原題:Trump on Tariffs, Iran: What to Expect From State of the Union(抜粋)
--取材協力:Mark Niquette、Gregory Korte.
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.