(ブルームバーグ):トランプ米大統領の復権1年目は、法案成立の速さや貿易政策の実行、不法移民の大規模強制送還など、政権運営の効率性が支持者から評価された。
しかし2年目に入ると早くも、1期目を悩ませたような問題が表面化した。一貫性を欠くメッセージ発信や政策転換、支持率の急低下、党内対立などだ。
トランプ氏による移民取り締まり強化は、超党派の反発を招いた。同氏はまた、オバマ元大統領とミシェル夫人を人種差別的に描写した画像を投稿。複数の共和党議員がこれを非難し、謝罪を求めたが、謝罪はなかった。
さらに下院では共和党議員6人が大統領に反旗を翻し、民主党とともにカナダに対する関税の撤廃に賛成した。その後、連邦最高裁判所は同氏が採用していた世界的な関税措置の手法を違憲と判断し、経済政策は混乱に陥った。
トランプ氏が24日の一般教書演説の準備を進める中、失望した有権者と中間選挙で向き合う共和党議員らは、議会の支配権維持につながり得る経済重視のメッセージにホワイトハウスが十分注力していないのではないかと懸念している。
仮に民主党が上下いずれか、あるいは両院で多数派を奪還すれば、トランプ氏が成立を目指すあらゆる法案が頓挫しかねず、政権に対する強力な監視や調査が行われる可能性もある。
「状況は少しずつほころび始めている。共和党にとっては、トランプ氏中心の政治から一歩距離を置き、有権者へのメッセージを本当の意味で取り戻す好機だと思う。中間選挙で惨敗したくないのであれば、そうする必要がある」と共和党系ストラテジストのモーラ・ギレスピー氏は指摘する。
アフォーダビリティーを巡る議論
ホワイトハウス高官も連邦議会の共和党議員も、有権者が経済をどう受け止めているかが11月の選挙結果を左右するとの認識で一致している。世論調査では、トランプ氏の経済運営を支持しないとの回答が多数を占める。
トランプ氏はインフレ抑制を公約に掲げて大統領選を戦ったが、アフォーダビリティー(暮らし向き)の問題については、バイデン前大統領が招いた民主党の「でっち上げ」だと切り捨てている。半面、輸入関税の影響で産業界が打撃を受ける中、自らの関税政策の一部縮小にも動いている。
ホワイトハウスのワイルズ首席補佐官から国内経済に焦点を当てるよう強い圧力を受けているにもかかわらず、トランプ氏は早々に勝利宣言する道を選んだ。先週のジョージア州での集会で「私はアフォーダビリティーの問題で勝った」と表明。経済的苦境に直面する有権者に直接訴えかけるという側近らの方針から大きく転換した。
こうしたちぐはぐなメッセージ発信は、2020年大統領選での新型コロナウイルス禍への対応を想起させる。当時は、混沌とし、かつ問題を軽視するかのような姿勢が最終的に大統領職を失う結果につながった。
ホワイトハウスは、過去最高値水準にある株式相場や、予想を上回る雇用増加およびインフレ鈍化を示す経済指標を、自らの経済運営の成果だと強調してきた。しかしトランプ氏や政権当局者は、こうしたデータを家計に余裕のない有権者に響く効果的な訴えへと結び付けることに苦慮している。
「問題なのは、理由はともあれ、トランプ氏が経済指標を見た上で、『アフォーダビリティー』という言葉は使いたくないと判断している点だ」と共和党系ストラテジストのリサ・カムーソ・ミラー氏はブルームバーグテレビジョンとの19日のインタビューで指摘した。
共和党の候補者について、「自分たちの主張と大統領の発信が食い違う状況にはなりたくないが、有権者に対して鈍感だと思われることも避けたい」とミラー氏は述べた。
ミネアポリスでの痛手
トランプ氏が2024年に政権復帰を果たした背景には、南部国境の警備強化や不法滞在者の迅速な強制送還を柱とする移民取り締まり強化の公約が一因としてあった。
しかし強硬な手法を取ったことで、全米で抗議活動が広がった。連邦当局がロサンゼルスやシカゴ、ニューオーリンズに展開し、合法移民や米国市民をも一斉に拘束、抗議者に乱暴な対応を取るなどしたためだ。
さらに、ミネアポリスでの暴力的な取り締まりでは、殺害された米国人2人を政権側が急いで「テロリスト」と位置付け、5歳の男児が拘束されている画像が拡散したことで、異例の超党派による反発が広がった。世論調査では、現在の移民取り締まりは「行き過ぎだ」との見方が過半を占めている。
トランプ氏は一連の殺害について「起きるべきではなかった」と認め、移民摘発の実施に当たっては「もう少し穏やかな手法を取ることもできるかもしれない」と学んだと述べた。
党内対立
党内対立はトランプ氏1期目ほどの深刻さには至っていないものの、1年にわたり全面的に支持してきた共和党内の一部に反発の動きが見られ始めている。最近では大統領のカナダ関税を撤廃する法案を巡り、撤廃に賛成し党方針に造反する動きが出た。
関税撤廃法案に賛成票を投じたネブラスカ州選出で引退を表明しているベーコン下院議員(共和党)は、最近トランプ氏を批判している1人で、「規律を欠けば、自分自身にもチームにも害を及ぼす。言い訳はできない」と話す。
一方、トランプ氏は20日、同関税法案を巡る共和党議員の離反について記者団に問われると、共和党は「強い結束」を保っていると語った。
もっとも、非難の応酬が続く中でも、トランプ氏は党を掌握していることを繰り返し示しているとの声が党内の一部では上がっている。
共和党系のベテランストラテジスト、ダグ・ヘイ氏は2021年1月6日の連邦議会襲撃事件を挙げ、共和党が一時的に反発の姿勢を見せたものの、最終的にはトランプ氏を受け入れ、政権復帰を支持するに至ったと指摘する。
「われわれは同じ教訓を何度も繰り返し学んでいる。不安や不満は水面下であるかもしれないが、それ以上にはならない」とヘイ氏は述べ、「1期目にも同じような障害がいくつかあったが、それで何かが変わったわけではない」と続けた。
原題:Trump Reverts to First-Term Tumult as Republican Fears Mount(抜粋)
--取材協力:Mario Parker.
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