20日の米金融市場では株式が反発する一方で、国債とドルは下落した。

連邦最高裁がこの日、政権の大規模な関税措置は大部分無効との判断を示したことを受け、トランプ大統領は世界的に10%の関税を課す新たな方針を明らかにした。さらなる関税発動を可能にする一連の調査を実施する方針も示した。

トランプ氏は「最高裁は1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいた関税措置を退けただけで、関税そのものを覆したわけではない」と、ホワイトハウスで記者団に語った。

最高裁は企業への関税還付の扱いについては結論を示さなかった。これにより、輸入業者や小売業者が既に米政府に支払った最大1700億ドル(約26兆3000億円)の関税をどこまで取り戻せるのかという問題は残り、長期の係争に発展する可能性が出てきた。

TDセキュリティーズのストラテジストらは「関税は別の手段を通じて維持されると当社では予想している」とし、「米経済見通しを修正する考えはない」と述べた。

S&P500種株価指数を構成する銘柄のうち、330銘柄余りが上昇した。同指数は週間ベースでは、1月9日終了週以来の大幅高となった。ハイテク大手7銘柄で構成する「マグニフィセント・セブン」の指数は、前日比1.6%高で終了した。

最高裁判断を受けて財政赤字が拡大する可能性が懸念され、10年債利回りは一時3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇。ドル指数は一時0.3%近く下げた。

 

ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、少なくとも現時点では経済的というより政治的な問題だと指摘。

「トランプ氏が関税の脅しを再び強めなければ、基本的に『レームダック』のように見えてしまう。貿易政策のねじを再び締めれば、不確実性は高まる。逆に譲歩すれば、政治的に行き詰まることになる」と述べた。

TDセキュリティーズのジェナディ・ゴールドバーグ氏は「今後の大統領令の詳細が明らかでないため、市場はどう反応すべきか判断しかねている」と話した。

GDSウェルス・マネジメントのグレン・スミス氏、マールボロ・インベストメント・マネジメントのジェームズ・エイシー氏はいずれも、今回の最高裁判断を受けて投資に関する変更を行うことは現時点でないと述べた。

この日朝方に発表された米経済指標では、昨年10-12月(第4四半期)の米実質国内総生産(GDP、速報値)が前期比年率1.4%増と、伸びは市場予想を下回った。

昨年12月の個人消費支出(PCE)統計では、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視するPCEコア価格指数が前月比0.4%上昇と、約1年ぶりの高い伸びとなった。

Bライリー・ウェルスのアート・ホーガン氏は「この日発表された経済指標は、予想を上回るインフレと想定を下回る成長という、複雑な内容だ。こうした分かりにくい結果は、金融政策の運営を急がないという現在のFRBの姿勢を裏付ける」と述べた。

米国債

米国債相場は全ての年限で下落(利回り上昇)。最高裁の判断は財政赤字の拡大につながり、既に高水準のインフレが加速しかねないとの見方が広がった。

将来的な財政リスクにさらされやすい長期債の下げが目立った。30年債利回りは一時6bpほど上昇し、4.75%を付けた。

ドイツ銀行の金利ストラテジスト、スティーブン・ゼン氏は「財政見通しにとって差し引きでマイナスだ。関税収入がなければ、財政赤字は基本的な従来想定より拡大する可能性が高い」と指摘。

「それは米財務省が赤字を穴埋めするために、国債発行を増額する必要性が生じることを意味する。米国債利回りが上昇した理由はそこにある」と述べた。

複数の判事が過去に、政権側の主張に懐疑的な見方を示してきたことから、市場関係者は今回の判断をおおむね予想しており、相場の反応は比較的限られた。

トランプ氏は午後の記者会見で、他の法的権限を行使し、より多くの収入をもたらし得る新たな関税措置を導入する方針を示したが、その発言が伝わった後も米国債相場は下げを維持した。

政府がこれまでに徴収した推計1700億ドル(約26兆3500億円)の関税を還付することになった場合は、短期的な影響が生じる可能性がある。最高裁はこの点については判断を示さず、下級審に委ねた。

ラボバンクの通貨戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏は「ホワイトハウスは別の方法を探して関税措置を推し進めるとみられるが、当面は還付を巡る懸念がくすぶるだろう」と指摘。

「米国の財政基盤が既に脆弱(ぜいじゃく)であることを踏まえると、これは米国債市場に警戒感を与え、ドルを不安定にする可能性がある」と述べた。

外為

ニューヨーク外国為替市場では、ドル指数が5日ぶりに下落。トランプ大統領が新たな関税措置の導入を計画していると述べたことを受け、ドルの投資環境見通しに不透明感が広がった。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は週間では0.6%高と、昨年11月以来の大幅上昇。

同指数は20日は下げたものの、注目されていた最高裁判断を受けた相場の反応は限定的だった。

昨年12月の米PCEコア価格指数が約1年ぶりの高い伸びとなったことを受け、ドル指数は朝方に上昇していた。

イラン情勢を巡る緊張も、安全資産需要としてのドル買いを促した。

BMOキャピタル・マーケッツのビパン・ライ氏は、最高裁判断を受けてドルは条件反射的に下落したと指摘。その上で、「ホワイトハウスは歳入減少を補うため他の措置を検討する可能性が高く、当社は長期的に見て劇的な変化が起きるとはみていない」と述べた。

円は対ドルで前日終値近辺。朝方に下げをやや拡大し、155円50銭台まで売られた。最高裁の判断が伝わると上昇に転じ、154円70銭台を付ける場面もあったが、その後は狭い範囲でのもみ合いとなった。

原油

ニューヨーク原油先物相場は6カ月ぶりの高値近辺で、前日とほぼ変わらず。トランプ米大統領はイランに対する限定的な軍事攻撃を検討していると明らかにした。核開発計画を巡る合意に向けて、イランには最大でも15日しかないと警告する中、中東では米軍の戦力集結が進んでいる。

イランは日量300万バレル超の原油を生産しており、世界全体の約3%を占める。主な輸出先は中国だ。ただ、原油価格にとって最大のリスクは、ペルシャ湾岸諸国によるエネルギー輸出の要衝であるホルムズ海峡を、イランが封鎖するかどうかにある。

イランに対する軍事行動が長期化すれば、価格は一段と上昇する可能性がある。そうなればガソリン価格にも波及し、11月に予定される中間選挙を前に米有権者の反発を招く恐れがある。

SEBのアナリスト、オーレ・フバルビー氏は「朝方、小幅に下げたものの、現在の地政学的環境を踏まえれば、引き続き上昇余地はあるとみている」と述べた。

 

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前日比4セント(0.1%)安の1バレル=66.39ドルで終了。同限月はこの日が最終取引日だった。週間では約5.6%上昇した。中心限月の4月限は前日比8セント高の66.48ドル。ロンドンICEの北海ブレント4月限は10セント上昇し71.76ドル。

金スポット相場は3日続伸。ドルが下落し、金買いが優勢になった。米連邦最高裁がトランプ大統領の大規模な関税措置を認めなかったことを受け、ホワイトハウスが取る次の対応を見極めようとする動きが広がった。

TDセキュリティーズのコモディティー戦略部門グローバル責任者のバート・メレク氏は今回の判断について、輸入業者が支払った関税の返還や、将来の歳入減少につながる可能性があると指摘。「財政に圧力をかけ、政府資金を賄うために金融手段が用いられるとの観測を強めるだろう」と述べた上で、「金にとってはプラス材料だ」と語った。想定される措置は金利を低水準にとどめる可能性が高いためだ。金投資は利息を生まないため、一般に低金利環境で金相場は堅調に推移しやすい。

ドル指数は一時0.3%下げ、金を1.6%押し上げた。

IDXアドバイザーズのベン・マクミラン氏は最高裁の判断が関税の返還を巡る詳細に踏み込まなかった点を指摘した上で、「今回の問題は今後何年にもわたる、非常に混迷した法廷闘争になると、市場は認識している」と述べた。「それらの判断はすべて下級審に委ねられている。つまり、個別の訴訟が数多く提起されることになるだろう」と語った。

 

午前中には、ロシア中央銀行が1月に外貨準備から金を売却したことが明らかになった。保有金の減少は昨年10月以来。過去3年にわたる金相場の上昇局面では、各国中央銀行による購入が重要な役割を果たし、価格の強力な下支え要因となってきた。今回の売却で、30万オンスの金が市場に供給され、1月末の歴史的な急落後に高まった変動性に加え、短期的に金が弱含む可能性への懸念が広がった。

それでもこれまでの金上昇局面を支えた要因は、おおむね維持されている。国債や通貨からの資金シフトの広がりや、地政学リスクがその例だ。米国のイランを巡る最近の動きも世界的な不確実性を高め、安全資産である金の魅力を押し上げている。

米軍は中東に大規模な戦力を展開している。トランプ大統領はイランに対し、核開発計画を巡る合意に応じるまで「最大で10日から15日」との期限を示した。

金スポット価格はニューヨーク時間午後3時19分現在、前日比87.09ドル(1.7%)高の1オンス=5083.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は、83.50ドル(1.7%)高の5080.90ドルで引けた。

原題:Stocks Rise Anew, Bonds Fall on Trump Tariff Talk: Markets Wrap

Tariff Ruling Fuels Bond-Market Angst by Worsening US Deficit

Dollar Trims Week’s Gain After SCOTUS Tariff Ruling: Inside G-10

Dollar Trims Weekly Advance as New Tariff Plan Clouds Outlook

Oil Holds Near Six-Month High as Trump Mulls Limited Iran Strike

Gold Gains as Traders Mull Next Trump Moves After Tariff Ruling(抜粋)

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