(ブルームバーグ):トランプ米大統領は20日、世界的に10%の関税を課す布告に署名した。同氏が昨年導入した関税措置の大部分について、連邦最高裁が無効と判断したことを受け、直ちに対策を講じた。さらなる関税発動を可能にする一連の調査を実施する方針も示している。
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「ホワイトハウスの大統領執務室から、全ての国々に対する世界一律10%の関税に署名できたことは、私にとって大きな名誉だ。関税はほぼ直ちに発効する」と投稿した。
ホワイトハウスはファクトシートで、この10%の関税が米東部時間24日午前0時1分(日本時間同日午後2時1分)に発効すると説明した。
トランプ氏は、1974年通商法122条に基づいて一律関税を発動する。通商法122条は、大統領に「国際収支の根本的な問題」に対処するため関税を課す権限を与えている。ただ、これまで適用された例はなく、関税率は最大15%に制限され、適用期間は最長150日までとなっている。
延長には議会の承認が必要で、関税政策の一部に対し民主党や一部共和党議員が反発している中で、大統領にとっては新たな難題となる。
トランプ氏はこれに先立ちホワイトハウスで記者団に対し、「最高裁は1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいた関税措置を退けただけで、関税そのものを覆したわけではない」と発言。「これからは別の方向に進む。恐らく最初からそうすべきだった」と論じた。
ホワイトハウス当局者はその後、新たな関税権限の整備を進める間は、10%の税率が貿易合意を結ぶ全ての国・地域に適用されると説明した。
トランプ氏が10%の関税賦課の方針を表明後、債券利回りはそれまでの上昇幅を縮小し、株式は上げ幅を拡大した。この税率は通商法122条に基づく最大15%の関税率を下回る。
同氏はまた、通商法301条や通商拡大法232条に基づく追加調査を開始する考えを示した。これらの法的規定はこれまで、中国からの輸出品のほか、自動車や金属製品に関税を課す際に用いられてきた。
トランプ氏は、10%の一律関税が適用されている間に調査を進め、最終的にはそれに置き換える可能性があるとの考えを示した。一方で、122条に基づく関税の延長を求める可能性については否定しなかった。また、外国製自動車に対する15-30%の関税を課すことを検討しているとも述べた。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の推計では、一律10%の関税導入計画により、米国の実効平均関税率は現在の13.6%から16.5%に上昇する可能性がある。一方、現行の適用除外措置が維持されれば11.4%に低下する可能性もある。
トランプ大統領は発言の冒頭で連邦最高裁を激しく批判し、「一部の判事を恥じている」と述べるとともに、「率直に言って、わが国にとって恥ずべき存在だ」と非難した。
このほか、「長年にわたりわれわれを食い物にしてきた外国は有頂天になっている。彼らは大喜びで街頭で踊っているだろうが、それも長くは続かない」とも語った。
こうしたあらわな不満は、トランプ氏が現在直面している膨大な課題の大きさを浮き彫りにした。貿易合意の締結や既存合意の実施を引き続き進めるとしつつも、自らの立場が弱まっていることを暗に認めた形ともなった。
最高裁はこの日、トランプ氏が打ち出した大規模な関税措置について効力を認めないとの判断を下した。最高裁は、トランプ氏がIEEPAに基づいて各国・地域に関税を課したことや、合成麻薬フェンタニルの米国流入対策として輸入関税を発動したことは大統領権限の逸脱に当たると判断した。判決は6対3だった。
多数派にはロバーツ長官と3人のリベラル派判事のほか、トランプ氏が指名したゴーサッチ判事とバレット判事も加わった。一方、カバノー、トーマス、アリートの各判事は無効との判断に反対した。
トランプ氏は最高裁判断について、特定の国との貿易に全面的に禁輸措置を講じる権限はあるのに、その国の製品に関税を課すことはできないとするのは理にかなっていないと主張した。また、ライセンス発行の権限は認められる一方、関連する手数料を課すことはできないことにいら立ちを覚えると話した。
さらに、判事個人も批判し、ゴーサッチ、バレット両氏の判断は「彼らの家族にとっても恥ずべきものだ」と語った。
通商法301条調査
ホワイトハウスのファクトシートによると、トランプ氏は米通商代表部(USTR)に対し、通商法301条に基づく調査を開始するよう指示した。同条は、輸入の増加が米国の製造業者に深刻な損害を与えているか、その恐れがあると判断される場合に、大統領が関税を課すことを認めている。
301条に基づく関税は、国別の調査を必要とし、公聴会の開催や影響を受ける企業や国からの意見提出の機会を含む。関税を発動するには、対象国が通商協定に違反したか、米国の貿易に負担を与える慣行に関与していると当局が結論付ける必要がある。
グリア米通商代表部(USTR)代表は声明で「これらの調査は主要な貿易相手の大半を対象とし、産業の過剰生産能力、強制労働、医薬品の価格慣行、米国のテクノロジー企業やデジタル財・サービスに対する差別、デジタルサービス税、海洋汚染、水産物やコメなどの産品の貿易に関連する慣行など、関心分野を扱うことになる見込みだ」としている。
またグリア氏は、新たな調査は「加速した日程」で進められる一方、ブラジルや中国を対象とするものを含む進行中の301条調査は継続すると説明した。
最高裁は、輸入業者がどの程度の還付を受けられるかについては判断を示さず、この問題については下級審に委ねた。還付が全面的に認められた場合、総額は最大1700億ドル(約26兆3500億円)に上り、これらの関税に伴う歳入の半分余りに相当する可能性がある。
関税の還付方法を具体的に示さなかった最高裁の判断にもトランプ氏はいら立ちを示し、「この先5年間は法廷で争うことになるだろう」と述べた。
ベッセント財務長官は、今回の司法判断にもかかわらず、今年の関税収入は「ほぼ変わらない」との見通しを示した。
ベッセント氏は20日、テキサス州ダラスのエコノミック・クラブでの講演で「財務省の推計では、122条の権限行使に加え、232条と301条の関税を強化する可能性を組み合わせることで、2026年の関税収入はほぼ変わらない結果になる」と話した。
トランプ氏は、自身の関税政策は製造業を米国に呼び戻すためだけでなく、外交政策上の手段としても不可欠だと主張。関税をちらつかせることで、各国に武力衝突の緊張緩和を迫ることができたと述べ、関税を巡る交渉が多額の対米投資計画を呼び込んだとの認識を示した。
関税を交渉材料として用いながら、今後も貿易交渉を進めていく考えを示すとともに、既存の合意は維持されるとの見通しを示した。
一方、グリア氏は、既存の適用除外措置についての質問に対し、ホワイトハウスとして新たな大統領令との「連続性」を確保しようとしていると答えた。
新たな10%関税の対象外として引き続き除外されるのは、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)に適合する製品などだ。さらに今回の大統領令は、これまでの無効とされた関税措置に沿い、一部の農産品に対する適用除外も維持する。
今回の最高裁判断は、24日の一般教書演説に向けた緊張感をさらに高めるものだ。トランプ氏は既に、上下両院合同会議で行う一般教書演説では経済に焦点を当てる意向を表明している。最高裁判事の多くは慣例として同演説に出席しており、今回は自らの判断に対する大統領の反応を最前列で聞くことになる可能性がある。
トランプ氏は、判事らが演説に出席することは可能だと述べた。「彼らは一応、招待はされている」としたうえで、「正直なところ、来ようが来まいがどうでもいい」と述べた。
原題:Trump Signs 10% Global Tariff in Bid to Salvage Trade Agenda (2)、Supreme Court Axes Tariffs; Trump Responds With New Rate (2)(抜粋)
(通商法301条に基づく調査指示などを追加して更新します)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.