(ブルームバーグ):アジアの多くの国・地域が今週、春節(旧正月)を祝った。今年は午(うま)年だが、干支(えと)に猫はない。伝説ではネズミにだまされて仲間入りを逃したとされるが、日本にはそれを十分に埋め合わせる日がある。
2月22日の「猫の日」だ。1980年代後半にペットフード協会が制定したもので、語呂合わせに基づく数ある記念日の一つだ。例えば、「いい夫婦の日」(11月22日)や「マヨネーズの日」(3月1日)などがある。
猫の日はここ数年、企業が拡大する猫に関係する市場を取り込もうとする中で注目を集めている。大手コンビニエンスストア各社はテーマ性のあるデザートやグッズの販売数を競い合い、今年は肉球型のプリンなどを目玉商品にしている。エネルギー大手のENEOSホールディングスは、全面電動化した段ボール製「お猫さま専用タワーマンション」で顧客の関心を引こうとしている。
猫による経済効果は現実のものだ。「ネコノミクス」に関するリポートを毎年公表している関西大学の宮本勝浩名誉教授は、その規模を年3兆円近いと推計している。
筆者は昔から猫派だが、約25年前に日本にやって来たばかりのころは、明らかに犬の方が人気だった。なんといっても、日本は亡き主人の帰りを10年にわたり渋谷駅で待ち続けた「忠犬ハチ公」の国だ。ペットショップの棚は犬向け商品がはるかに多く、海外メディアは少子化と結び付けて甘やかされた犬を取り上げる報道に熱中していた。
実際のところ、日本は単に先行していただけだ。例えば、米国人のペットへの支出は2010-23年に倍以上に増えた。
しかし14年に日本で飼育される猫の数が初めて犬を上回り、その傾向が加速し続けると、大企業も動き始めた。この変化は人口動態のシフトに起因するとされる。高齢化の進行と都市部への人口集中により、散歩が必要な犬を飼う時間や空間が少なくなっている。

日本が猫の国になるのは不思議ではない。猫との関係は何世紀も前にさかのぼる。最古の記録は889年の宇多天皇の時代とされる。寛平御記(かんぴょうぎょき)には、飼い猫のつややかな毛並みやネズミを捕る腕前を称賛する記述がある。
「丸くなれば粟粒のごとく小さく、伸びれば引きたる弓のごとく長し」と記され、「雲上の黒い竜」のように音もなく動く様子を描写した。
猫は宮廷でも一般的だったようだ。最初に名が伝わる猫は、1000年ごろ一条天皇が飼っていた「命婦の御許(みょうぶのおとど)」で、平安朝の女官に与えられる称号が付けられている。清少納言の枕草子のうち、「うつくしきもの」の段に登場し、犬に追われて天皇の膝に逃げ込んだ逸話が記されている。
人口動態
その後も、猫は日本文化と結び付いてきた。浮世絵や豪徳寺の招き猫のほか、明治時代の代表的な小説の一つが夏目漱石の「吾輩は猫である」だ。さらに時代が下れば、有数の輸出コンテンツとなった「ハローキティ」もある。ここでは、キティが本当に猫かどうかという論争には立ち入らない。
現代に目を向ければ、かつてユーチューブで最も視聴された動物としてギネス世界記録を持ち、どんな小さな箱にも入り込むことで知られた「まる」がいる(まるは昨年死んだ)。
廃線の危機にあった地方路線、和歌山電鉄貴志川線を観光名所に変え、存続に貢献した初の猫駅長「たま」も有名だ。野良猫が多く暮らす日本各地にある猫島は、外国人観光客に人気だ。
想像し得る次の一歩は、英首相官邸ダウニング街のネズミ捕獲担当の猫「ラリー」に対抗する国民的な猫の誕生かもしれない。
スターマー英首相が最近日本を訪れた際、高市早苗首相はラリーへのお土産として、玩具やおやつを贈った。天皇ご一家も「美海(みみ)」と「セブン」と名付けた2匹の猫を飼っている。
高市首相は犬より猫が好きだと明らかにしている。だが4年前の2月22日には猫について語るためではなく、NHKがこの日を猫の日と紹介しながら、同時に「竹島の日」でもあることに触れなかったとして批判するかのようなSNS投稿を行った。
もっとも、猫の優位が約束されているわけではない。宮本教授のリポートによると、2025年にはペットとして飼われる猫の数が初めて大幅に減少した。
これは猫ブームの停滞、あるいは衰退の始まりを示す可能性があると同教授は警告する。猫は長らく着地の名手とされてきたが、人口動態の力には逆らえないかもしれない。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Hello, Kitty — Japan’s $20 Billion Cat Boom: Gearoid Reidy(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.