上昇傾向が続くエンゲル係数
本日総務省から公表された家計調査によると、2025年の二人以上世帯のエンゲル係数は28.6%と、2024年の28.3%から上昇した。
エンゲル係数とは、消費支出全体に占める食料費の割合のことを指す。
一般的に、所得が低いほど生活に必要な食料費に多くを費やす必要があるためエンゲル係数は高くなり、所得が高いほど低くなる傾向にあるとされている(エンゲルの法則)。
実際、2025年のエンゲル係数について、年間収入階級別(十分位)にみると、収入が最も多いグループ(年間収入1152万円以上、平均1554万円)では24.1%であるのに対して、収入が最も少ないグループ(年間収入280万円未満、平均221万円)では34.4%と、支出の3分の1以上を食費が占める形になっている。
我が国のエンゲル係数は所得水準の向上により長期にわたって低下していたが、2000年代に入って下げ止まり、ここ10年ほどは大幅に上昇している。
2025年の28.6%は、1981年の28.8%以来の高い水準である。
近年のエンゲル係数上昇の背景にあるのは食料品価格の上昇だ。
国際的な食料品価格の上昇や円安の進行、頻発する異常気象による生鮮食品価格高騰などの影響でその価格は大幅に上昇しており、物価全体の伸びを大きく上回っている。
実際、2025年の消費者物価(総合)は前年比+3.2%と大幅に上昇したが、内訳をみると、食料品を除いた部分では同+1.7%(総合への寄与度:+1.3%Pt)であるのに対して、食料品の上昇率は+6.8%(総合への寄与度:+1.9%Pt)となっている。
2025年の物価上昇のかなりの部分は食料品価格の上昇によるものであることがわかる。
実際、2025年の食料品消費支出は実質でみると前年比▲1.2%となったが、名目の金額でみると同+5.5%もの増加となっている。
消費者はできるだけ安い食品への購入シフトなどで生活防衛を図っているものの、生活必需品である食料品は節約することが難しく、支出の抑制にも限度がある。
結果として食料品への支出が増加し、エンゲル係数の上昇が続いている。
エンゲル係数の動きには高齢化の進展や世帯数の増加、生活スタイルの変化なども影響するため、解釈は慎重に行う必要があるが、生きていく上で欠かせない食料への支出割合が大幅に上昇していることで、家計が近年、生活にゆとりを感じにくい状況にあることは確かだろう。
足元のエンゲル係数の上昇は、景気が回復局面にあるなかでも家計が回復の実感を持ちにくいことの理由の一つであると考えられる。
(参考)都道府県庁所在市別のエンゲル係数
2025年の都道府県庁所在市別のエンゲル係数(二人以上世帯)をみると、最も高かったのが大阪市で32.2%であり、長崎市、松山市、神戸市と続く。
逆に最も低いのが水戸市で26.1%だった。
合計47市のうち27市で2000年以降の最高値を更新しており、全国的に食料品価格の高騰がエンゲル係数を押し上げていることが確認できる。
(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト 新家 義貴)


