(ブルームバーグ):9日の日本市場では株式が急騰。日経平均株価は初の5万7000円台に上昇し、上げ幅は一時3000円を超えた。衆院選で与党が圧勝したことを受け、政治が安定し高市早苗政権の積極財政政策の推進力が増すとの見方から買いが勢いづいた。
債券・為替相場には財政拡張懸念が強まった1月のような混乱は見られていない。債券は先物や中長期債が売られているが、高市首相が8日夜、財政の持続可能性にテレビ番組で言及したこともあって下げは小幅にとどまる。円の対ドル相場は三村淳財務官が「高い緊張感を持って注視する」などと述べたことを受けて介入警戒感から156円台に上昇している。

8日の衆院選では自民党が単独で定数465議席の3分の2に当たる310議席を上回る議席を獲得したと、NHKなどの国内主要メディアが報じた。参議院で否決された法案の再可決が可能となる。
HSBCホールディングスのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏は、「自民党の大勝は株式市場に追い風」と指摘。与党が過半数を確保したことで高市首相は構造改革を自由に進められるとし、日本の生産性が向上して企業利益の増加につながると述べた。
債券・為替動向を巡っては、片山さつき財務相も8日のテレビ出演で、金融市場の動向次第では「必要あれば月曜日もいろいろとマーケットには対話をしたい」と説明。ドル・円市場の安定を保つのは、日米両財務相の責務とも話していた。
ロンバー・オディエの上級マクロストラテジスト、ホミン・リー氏は「国債利回りは一定の変動を伴うだろうが、大きく動けば政府による市場安定化策への期待が高まる」と予想。「利回りが過度に上昇し、米国債など他国の国債に波及すれば、海外からの圧力がかかるリスクも排除できない」と指摘した。
英シュローダーや米JPモルガン・アセット・マネジメントなど世界の大手資産運用会社は選挙前、日本国債について特に残存10年超の超長期債の保有を抑えるアンダーウエートの姿勢を明らかにしていた。1月に高市首相が財源を明示しない形で食料品の消費税率を2年間廃止する考えを示したことで、財政不安から30年や40年の超長期債は急落(金利は急騰)していた。
一部の市場関係者からは、与党が圧勝したことで、高市首相が必ずしも景気刺激策を急ぐ必要はなくなったとの見方も出ている。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、衆院選は債券市場関係者にとっては緊張感を強める結果ではあるが、自民党の大勝で高市首相が市場の懸念に耳を傾ける政治的な余裕が出てくる可能性もあるとみている。
株式
TOPIXも取引時間中の最高値を更新した。高市政権の経済政策の恩恵を受ける小売りや防衛が買われているほか、業種別では非鉄金属や不動産、機械などの上昇が目立つ。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジストは、「アベノミクスの再来をマーケットは意識する」と話す。財政拡張と強いリーダーシップのもとで政策がスピード感をもって進んでいくことへの期待から海外投資家が日本株を買う動きになるとの見方を示した。
中長期的な日本株上昇への期待も高まっている。JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストらは9日付リポートで、日経平均の年末目標を6万1000円に引き上げた。選挙結果を受けて高市政権の長期化と、責任ある積極財政の推進や企業改革の推進など「サナエノミクス」の加速を展望。外需シクリカル(景気敏感)株などを選好すると述べた。

債券
債券相場は先物や中長期債が下落。自民党大勝で高市首相の政権基盤が固まり、積極財政が進むとの見方から売りが優勢だ。新発2年債利回りは一時2.5bp高い1.3%と1996年以来の高水準、新発5年債利回りは3.5bp高い1.72%と過去最高を更新した。
みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは「自民党大勝を受け、短期的に財政拡張観測とタームプレミアム上昇を背景とした超長期主導のベアスティープ(傾斜)化が最も起こりやすい」と指摘。その後は「日本銀行の3、4月金融政策決定会合を巡る思惑が交錯する中でフラットニング(平たん化)に向かう可能性が高い」と述べた。
市場の金融政策見通しを示すオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)によると、3月までの利上げ確率は3割弱、4月は8割弱となっている。
為替
外国為替市場で円は対ドルで156円台に上昇。高市首相の積極財政により財政悪化が進むとの懸念で売りが先行した後、三村財務官の発言を受けて買い戻されている。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は「選挙の結果を受けて基本的には円は売られやすいが、介入警戒感があり、ドル・円の上値は重くなる」とみる。三村氏の発言があったように、ドル・円の上昇時には当局がくぎを刺してくると話した。

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--取材協力:我妻綾、ジョン・チェン.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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