8日投開票の衆院選は、自民党が単独で定数465議席の3分の2に当たる316議席を獲得したとNHKなど主要メディアが報じた。週明けの市場では株価が最高値を更新する一方、債券相場は売り、円は買いが優勢となっている。

衆院選の圧勝で高市早苗首相の政権基盤は強まる。自民と日本維新の会の与党は参院で過半数割れしているが、衆院で3分の2を確保すれば参院で否決された法案の再可決も可能となり、与党主導で国会審議を進めやすくなる。高市政権は「責任ある積極財政」の下、物価高対策で与野党が主張した消費税減税などの実現に取り組む。

高市首相は8日、フジテレビの番組に出演し、経済財政政策の大転換、安全保障政策の強化、情報力の強化など選挙で訴えた政策を「ご信任をいただけたら本当に一生懸命、取り組まなければいけない」と述べた。

9日の日本市場では株式が急騰し、日経平均株価の上げ幅は一時3000円を超え、初めて5万7000円台に乗せた。積極的な財政が一段と加速するとの期待が投資家の買いを誘った。一方、財政悪化への警戒感から債券市場ではほぼ売りが優勢となっている。

円相場は午前10時47分時点でドルに対し156円台半ばで推移。朝方157円70銭台に下落する場面があったが、選挙前までに売りポジションが積み上がっていたことに加え、三村淳財務官のけん制発言もあり、上昇に転じている。

 

住友生命保険の武藤弘明エコノミストは、想定以上の勝ち方でサプライズと指摘。「初動は高市カラーが出しやすくなり、当面、財政には膨張圧力がかかる」との見方を示した。その上で、高市首相は政治をかなりコントロールできるようになるため、財政拡張の「歯止めになるのはマーケットだけだ」と語った。

選挙前の勢力は自民が198、維新が34だった。自民党総裁の高市首相は「与党で過半数」を勝敗ラインに掲げていた。NHKの開票速報によると、9日午前6時47分時点で小選挙区、比例代表を合わせた全議席が確定し、自民316議席、維新36議席と与党合計で352議席を獲得した。

高市早苗首相(8日、自民党本部)

自民は結党以来最多だった1986年中曽根康弘政権下の304議席(追加公認含む)を超えた。NHKなどによると、1政党が単独で3分の2を超える議席を確保するのは戦後初めて。

与党の大勝に関して、トランプ米大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、「高市早苗首相と同氏率いる連立政権が、極めて重要な投票で圧勝したことを祝福する」と投稿。「早苗、あなたと連立政権を支持できたことは、私にとって名誉だった」と記した。

野党は中道改革連合が49議席、国民民主党が28議席など。中道は選挙前の172を大幅に下回った。

中道の野田佳彦共同代表は9日未明の記者会見で、選挙結果について「万死に値する大きな責任」だと述べた。斉藤鉄夫共同代表も多くの仲間を失ったことは「痛恨の極み」だと述べ、「責任はきちんと取らなければならない」と話した。

高市トレード

市場関係者も衆院選の結果を注視していた。みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは、選挙期間中の情勢調査と比べると与党の獲得議席が上振れていると指摘。週明けの市場の反応は「高市トレード」(株高・金利カーブのスティープ化・円安)になるとの見方を示していた。

高市首相は8日夜、テレビ東京の番組で、金融市場に対しては、「責任ある積極財政」の「責任ある」という部分が正しく理解されることが大変大事だと指摘。その上で、「あくまでも財政の持続可能性、ここは大切にしながら必要な投資は行っていく」とした。

JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、円安かつインフレ警戒で金利高止まりというシナリオも簡単には崩れないだろうと分析。もっとも、衆院選は債券市場関係者にとっては緊張感を強める結果ではあるが、自民党の大勝で高市首相が債券市場の懸念に耳を傾ける政治的な余裕が出てくる可能性もあるとみている。

ブルームバーグ・エコノミクスの見方

「安定した、景気刺激的な政策を志向する政権が続くとの見方から、週初は株高、金利上昇、円安といったリスク選好の展開が予想される。われわれは基本シナリオとして、日本銀行に対し急速な金融引き締めを避けるよう求める圧力が強まるとみている。こうした思惑が円の重しとなり得る」

木村太郎シニアエコノミスト

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消費減税

今後、経済財政運営の焦点となるのが消費減税だ。自民と最大野党の中道は飲食料品にかかる消費税率の0%への引き下げを公約に掲げたが、減税の期間や財源で隔たりがあり、調整は容易ではない。

高市首相は8日夜、消費減税に関して、TBSなどの番組で「自民党は公約で2年間、食料品限定、そして新規の国債を発行しないという前提で訴えてきた」とした上で、「各党の意見も伺いながら、できるだけ早く結論を出したい」と語った。

近く設置する方針の国民会議で「検討を加速するということになる」と述べ、早期に結論が得られれば税法改正案を国会に提出する方針を示した。

また、所得税などの減税と現金給付を組み合わせて中低所得者を支援する「給付付き税額控除」について「各党から賛同いただける」とし、両方の政策をしっかり進めていきたいと語った。

みずほ証の松尾氏は、消費税減税について、不透明な状況が少なくとも今年の秋ごろまで続くだろうとみる。12月の与党税制大綱の取りまとめまで議論し、実施は早くても来年度になるのではと予想した。市場は国民会議で議論や27年度予算編成に向けた動きを見ながら、財政への警戒感が残るとの見方を示した。

今回は36年ぶりの真冬の衆院選となり、日本各地で積雪に見舞われた。 総務省が発表した8日午後7時30分現在の投票率は全国平均で約28%と前回2024年の31.49%を下回った。一方、7日まで行われた期日前投票では有権者の約26%に当たる2700万人超が投票を済ませた。

前回の最終的な投票率は小選挙区で53.85%と5回連続で50%台にとどまった。旧民主党が政権を獲得した09年は69.28%だった。

--取材協力:村上さくら、青木勝、岡田雄至、グラス美亜、佐野日出之、間一生、松田英明、氏兼敬子.

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