ChatGPTが登場した瞬間から、ソフトウエアメーカーはリスクにさらされてきた。人工知能(AI)が対話、画像、さらに動画でこのように飛躍できるなら、次に陥落する最前線はどこか、という疑問が生じた。

投資家にとって、その答えはここ数日で明らかになったようだ。彼らは「信仰の跳躍」ではなく、信念なき跳躍と言うべき勢いでソフトウエア株に売りを浴びせた。最初の兆候は1月30日、グーグル・ディープマインドのツール「ジーニー3」がゲーム株を急落させた時に表面化した。言葉で指示するだけでリアルな3D環境を生成できるなら、既存のグラフィックスやゲーム開発ツールの存在意義が問われるという理屈で、「グランド・セフト・オート6(GTA6)」発売を控えたテイクツー・インタラクティブ・ソフトウエアの株価は8%下落した。

ただGTA6は記録的な販売が広く見込まれており、テイクツーについてはさほど心配されていない。Mバンクのアナリストも、売られ過ぎだとみている。

本格的なダメージを受けたのは、2月3日のソフトウエアセクターだった。アンソロピックがAIプラットフォーム「クロード・コワーク」向けに、契約や法務業務を支援するプラグイン「リーガル」をリリースした。アンソロピックは評価が高く、コワークは1月に注目を集めていたため、この新機能も有効なものになるだろうという前提が広がった。

3日の市場では最終的に、ソフトウエアや金融サービス、資産運用セクターで株価が軒並み下げ、2850億ドル(約44兆6800億円)規模の時価総額が露と消えた。高価で専門性の高いコンプライアンス関連ツールは、いずれも「存亡の危機」にあると見なされた。売りは4日も続き、ソフトウエア重視の上場投資信託(ETF)に波及した。

「このセクターは今や、無実が証明されるまでは有罪と見なされるどころか、裁判前に判決が下される状況にある」と、JPモルガン・チェースのアナリスト、トビー・オッグ氏はリポートで述べた。ソフトウエア企業の場合は「予想を上回る業績では、もはや市場を納得させるには不十分だ」とも指摘した。

ジェフリーズのトレーダー、ジェフリー・ファヴッツァ氏も「最も厳しいのは、ソフトウエアが将来性の面で印刷メディアや百貨店のようになるという見方だ」と指摘。「すべてを売る状況になっていることは、将来、非常に魅力的な機会が生まれることを示唆する」と話した。

当然ながら、アンソロピックのリーガルが本当に使えるのか検証するには、数日では足らない。法的責任が絡む新ソフトを短期間で既存標準から切り替えるのは無謀だ。実際、アンソロピック自体、ワークデイなど複数の法人向けサブスクリプションを引き続き利用している。

それでも市場は、企業の意思決定と同じ速度では動かない。モルガン・スタンレーのアナリストは、コワークの新機能で競争が激化し、トムソン・ロイターなどにはマイナスになり得ると指摘した。アンソロピックがユーザーに弁護士確認を促していても、その破壊力は市場の視界に入っている。

技術デモや、所見で魅力のある製品を、完成度が高く実際に売れるソフトウエアだと結論づけるとすれば、話の飛躍があまりに大きいように思われる。自動運転も長年高度化しているが、完全自律には至っていない。こうした進化においては、最後の仕上げが指数関数的に難しい。ジーニー3は任天堂のゲームに似た著作権侵害の疑いがあるキャラクターや、緑の丘を作り出して見せることはできる。だが40年以上にわたり任天堂を先駆者たらしめている、緻密に調整されたゲーム性は生み出せない。

「ストーリーの流れと、感情的なつながり、雰囲気をユーザーが共有するだけでなく、ミッションの構造がある。そうした要素はAIでは捉えられない」と、テイクツーのストラウス・ゼルニック最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会議で指摘。「このツールが実用に耐えるものであれば、われわれの仕事の一部をより良く、より効率的にするだろう」と語った。

コワークのリーガルも同様に、極めて優秀なパラリーガル並みの役割を果たすかもしれない。反復作業や不整合を排除し、書式を標準化し、不要な条項を除外し、問題になりそうな表現を見直しの段階で浮き上がらせることができるだろう。だがアンソロピック自体が繰り返し述べているように、これを信頼すべきではない。有用であることと信頼に足ることの違いは、今回の市場の反応が示唆するよりもはるかに大きい。

原題:Anthropic Sparked Huge Selloff With Unproven Tool: Tech In Depth(抜粋)

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