(ブルームバーグ):米政府は、しわ対策の注射剤「ボトックス」や2型糖尿病治療薬「トルリシティ」に支払う価格を大幅に引き下げる計画だ。10年間で2000億ドル(約30兆6000億円)を超える節減が見込まれる法律の下で薬価交渉入りを目指す。
ボトックスやトルリシティなど15品目は、バイデン前政権の看板政策だったインフレ抑制法の一環として、今後1年にわたり政府との価格交渉の対象となる。メディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)の薬剤費を引き下げる狙いだ。トランプ政権は2月1日までに次の値下げ対象となる医薬品の選定を発表する必要があった。引き下げは2028年に発効する。
今回選ばれた薬剤には、イーライリリーのトルリシティが含まれる。2024年の売上高は約53億ドルと、同社にとって主力製品の一つだ。アッヴィのボトックスやギリアド・サイエンシズの抗HIV薬「ビクタルビ」、ノバルティスの関節炎治療薬「コセンティクス」もリストに入った。
メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は27日の声明で、今回選定された医薬品はメディケアの「パートB」と「パートD」の処方薬支出の合計で約270億ドルを占め、全体のほぼ6%に相当すると説明した。

CMSによれば、各社は2月28日までに交渉に参加するかを決める必要がある。抗精神病薬レキサルティをルンドベックと共同販売する大塚製薬の広報担当者は、CMSと建設的かつ協力して対話に臨むと述べた。
インフレ抑制法の下で、メディケア患者に広く処方されている一部の薬剤が毎年選ばれ、価格交渉による引き下げで10年間に2370億ドルの節減が見込まれている。ノボノルディスクの2型糖尿病治療薬「オゼンピック」と肥満症治療薬「ウゴービ」は、昨年の交渉対象リストの目玉となった。
今回のリストには注目すべき変更点もある。メディケア・パートBの薬剤が交渉対象に含まれるのは初めてだ。また、トランプ大統領の大型減税・歳出法は一部医薬品の選定基準を変更し、メルクの主力抗がん剤「キイトルーダ」や、ブリストル・マイヤーズスクイブの「オプジーボ」について、協議を遅らせた。
医薬品メーカーは価格交渉が新薬開発のインセンティブを奪うとして、訴訟などで抵抗してきた。新たな対象薬の公表を受け、企業側は27日も同法を批判した。
イーライリリーの広報担当者は、インフレ抑制法の価格設定プロセスに関して「根本的に欠陥がある」とし、研究開発投資が抑制されることで「米高齢者に害が及ぶだけだ」と述べた。ノバルティスは同法の規定が「違憲であり、患者に長期的かつ壊滅的な影響をもたらす」と引き続き認識していると説明した。
製薬会社の利益への影響はこれまでのところ、ウォール街が当初懸念していたほど大きくない。ただ、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、デュアン・ライト氏はリポートで、「交渉による価格引き下げがメディケアの枠を超え、商業市場に波及する可能性」が大きな懸念材料だと指摘した。
一方、医薬品大手は米国の薬価を他国の水準に合わせることを目的とした協議をホワイトハウスと別途進めている。これまでに、トランプ氏が交渉の場に呼んだ17社のうち16社が政権と合意に達した。同意を発表していないのは、リジェネロン・ファーマシューティカルズのみとなっている。
原題:US Targets Botox, Trulicity in New Drug Price Negotiations (2)(抜粋)
--取材協力:Gerry Smith.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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