難題に直面したときこそ、一度立ち止まり、新たな発想を生み出す好機となる。

3年余りにわたり行き過ぎた円安に苦しんできた日本政府が、ようやく米国との協調対応を通じて打開策を模索し始めた可能性がある。複数の報道によると、ニューヨーク連銀は先週、米財務省の代理として円安阻止に向けたレートチェックを実施したとされる。日米当局は公式にはコメントを控えており、仮に事実だとしても「第2のプラザ合意」にはまだ程遠い状況だ。

しかし、日本が少なくともメッセージの発信において、円高誘導のために米国と政策協調を図っているとすれば、より創造的な新時代の幕開けと言える。長年、全ての責任は日本銀行にあるかのように扱われてきた。

景気全体への影響を度外視してでも、円を上昇軌道に乗せるためには利上げが必要だという論理だった。しかし現実には、円は日本の金利がマイナスだったころよりも弱く、一連の利上げも効果を発揮していない。日米金利差と為替の相関は、一時的な現象に過ぎなかったようだ。

一方、単独介入は効果的ではあるものの、限界のある手段だ。急激な変動に歯止めをかける一定の役割は果たすが、恒久的な流れの転換には新たなストーリーが必要となる。米国との協調対応はその契機となり得るが、それ以外に日本が円高を実現する方法はあるのだろうか。

明白な選択肢の一つは、かつて円安を招いた手法を巻き戻すことだ。巨大な年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2010年代に進めた海外資産へのシフトは、日銀の大規模緩和とともに円安を加速させた。高市早苗首相は、長期国債利回りが魅力を増している現状を踏まえ、GPIFが国内投資を拡大すべきだと示唆することもできるだろう。他の年金基金や投資家はGPIFに追随する傾向があり、そのような示唆だけでも円高要因となり得る。

あるいは、日本の債務削減という手もある。米財務省の元エコノミストで、現在は米外交問題評議会(CFR)のシニアフェロー(国際経済政策担当)であるブラッド・セッツァー氏は、日本が外貨準備のドルを一部売却することで利益を確定し、その資金で割安な超長期国債を買い戻すという案を提示している(ただし米国は、自国の長期金利上昇につながりかねないこの動きを警戒するだろう)。

企業が多額の海外収益を本国に還流させるための一時的な税制優遇措置はどうだろうか。その資金が賃上げや国内投資に充てられることを条件とすれば、なおさら効果的だ。

サプライズの要素も強力な武器となる。今年まで日本の介入示唆は慎重で予告的なものだった。しかし、1998年に円の防衛に米国の力を貸した当時のルービン米財務長官は、衝撃の価値を重視していた。同氏はこの介入を成功と評価したが、それは日本経済や銀行危機への対応が一夜にして変わったからではなく、シグナルの効果によるものだった。

2003年の著書「ルービン回顧録(原題:不確実な世界の中で)」で同氏は「外国為替市場の心理は明らかに影響を受けた。この種の行動を成功させるには、市場を驚かせることが鍵となり得る」と記している。

国家による市場介入については、成否を断定的に結論づけることは難しい。1日9兆6000億ドル(約1480兆円)の資金が動く為替市場では、国家の行動は必ず失敗するという見方もある。しかし、全ては目標が何であるかによる。

ルービン氏の後任のローレンス・サマーズ氏は、2000年秋に、日本を含む主要7カ国(G7)のパートナーとともにユーロ買い支えの介入を承認した。誕生間もないユーロの失敗は世界経済の安定を揺るがしかねず、米国の利益も危機にさらされていた。サマーズ氏は一貫して慎重な姿勢を示していたため、実際の介入はより大きなインパクトをもたらした。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、当時の欧州中央銀行(ECB)チーフエコノミスト、オトマー・イッシング氏は「特定の水準を念頭に置いていたわけではない。それが目標ではなかった」と語っている。

長期的な影響を予見することも困難だ。1985年のプラザ合意はドル安誘導を目的としていたが、効き過ぎてしまい、2年後にルーブル合意で軌道修正を余儀なくされた。この一連の出来事は日本のバブル形成を助長し、壊滅的な結果をもたらした。現在の為替市場はルービン氏の時代よりもはるかに巨大だ。運と絶妙なタイミング、そして的確な戦略があれば、市場を動かすことは可能だが、手なずけるのはまた別の話だ。

トレーダーらが一国の見通しを根本から見直すと期待されているわけではない。しかし当局は、彼らの思考様式を変えることならできるかもしれない。日本がもはや単独で行動していないという見通しは、市場心理の転換に影響を与え得る。

ただし、過度な期待は禁物だ。円高を歓迎する声は日本国内にも多いが、食料とエネルギーの輸入に依存する輸出国として、全ての人を満足させる為替水準など存在しない。また、高市首相は景気を過熱気味にするため、比較的円安の水準を実は歓迎しているとの見方もある。

米国の関与をちらつかせるだけで、当局は目的を達成した可能性もある。本稿執筆時点の東京時間26日、トレーダーらは円売りに慎重な姿勢を見せていた。サプライズ効果は功を奏したのかもしれない。しかし、今後さらに創造的な解決策が求められる局面が訪れる可能性は十分にある。

(ダニエル・モス、リーディー・ガロウド両氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Japan Gets Creative on the Yen Response: Reidy & Moss(抜粋)

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