日本の高市早苗首相が打ち出した食料品の消費税を2年間に限りゼロに引き下げる案は、間違いなく悪手であり、かなり露骨な政治的判断でもある。

もっと効果的に使えるはずの財源を消費し、今後数カ月にもわたり議論が続くだろう。インフレに苦しむ低所得世帯を支援するという点でも、より的を絞った施策より効果が低い可能性がある。

ただし、だからといって、日本の債券市場を20日襲った世界的な売りの一環としてのパニックを招くほどの悪手かといえば、そうではない。

超長期金利は過去最高水準に急上昇し、その動きは米国債市場にも波及した。ベッセント米財務長官は片山さつき財務相に連絡を取り、市場の安定化を求めた。21日になると日本国債の買いが先行した。

筆者は昨年、日本で消費税を巡る「鬼門」の議論を再開するのは悪い考えだと警告した。経済を崩壊させるからではない。あまりにも多くの意見が噴出し、より賢明で、より精緻なアイデアを押しのけてしまうからだ。

それでも、現実はこうなった。改めて強調しておく。まず、高市首相が言うように、日本は最近の緊縮ムードから脱却する必要がある。日本政府は人工知能(AI)やエネルギーに関する資本投資から、研究者や半導体エンジニアの教育に至るあらゆる分野にもっと多くの資金を配分しなければならない。

そしてこれは、中国との緊張が続く中での防衛費増額を考える前から続いている。食料品の消費減税で約5兆円かかると見込まれるような余剰資金があるのなら、一時的なばらまきとして使うより、はるかに有効な使い道がある。

時限的な減税は恒久化しがちだ。2年後に期限を迎え、レジで軽減税率8%への引き上げを消費者に突き付けるだけの政治的強さを持つ政府が果たしてあるだろうか。

1970年代に導入され、50年以上にわたって存続し、昨年になって高市首相が廃止したガソリンの「暫定」税率のように、何十年も制度として残る可能性の方が高い。

さらに、食料品の消費税率ゼロは消費者への支援効果が限定的になる公算が大きい。いくらまでなら支払う意思があるかというシグナルがはっきり見えれば、流通業者や生産者、小売業者が差額を取り込む可能性がある。低所得世帯を的確に支援するという点では、税制や社会保障給付の見直しなど、はるかに有効な選択肢がある。

「正常化」の過程

とはいえ、5兆円は相対的に見れば大きな額ではない。国内総生産(GDP)の1%未満、日本銀行による上場投資信託(ETF)保有額の6%に過ぎず、直近2年間の法人税収増加分の規模にも及ばない(日本の税収が過去15年間で倍以上に増えたという、あまり報じられていない事実を考えればなおさらだ)。これで大騒ぎするほどの話には思えない。

債券市場の動きは目を引くものだった。ただ、それは金融政策の「正常化」に伴う代償だ。重要なのは、日本は特殊だという点を忘れないことだ。

日本の債券市場は極めて低い利回り水準からの出発であり、日銀が金利を極端に低く抑えてきたイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を終了してからまだ2年も経っていない。インフレがある国において、貨幣の時間価値が本来どのように機能するかを示しているに過ぎない。

20日の日本国債市場で最も激しい値動きを見せた30年債と40年債は、比較的新しい銘柄で、初回発行はそれぞれ1999年と2007年だ。日銀は、長年にわたって利回りを抑え込んできた政策から意図的に距離を置いている。それはもはや実行できなくなったからではなく、1世代ぶりにインフレが定着する中で、その意義を見いだせなくなったためだ。

こうした事情を踏まえると、利回りが「史上最高水準」に達したとの見出しは誇張と言える。また、これらの国債は、日本がデフレではなかった、あるいはYCCによる抑制を受けていなかった局面で取引された日がほとんどない。さらに、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の木村太郎氏が指摘するように、30年債も40年債も流動性が極めて低い。

インフレは、消費者にとっては物価が上がらなかった時代からの衝撃を伴うものの、日本政府が長年求めてきた変化だ。正常化が途中でいくつかのショックを伴うのも驚くには当たらない。

2022年にトラス英政権(当時)を襲った英国債・ポンド相場急落のようなものではないし、ましてや財政危機でもない。だから落ち着こう。時には、悪手だとしてもそれだけのことだ。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Takaichi’s Bad Tax Plan Isn’t Worth The Freak-Out: Gearoid Reidy(抜粋)

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