来月の衆院選に向け与野党が消費税減税を打ち出し、財政拡張への懸念が強まる中、超長期金利が急騰し、円売り材料となっている。円安がさらに進行した場合、通貨当局が為替介入に踏み切るかどうかを市場は注視している。

片山さつき財務相は20日、スイス・ダボスで行われたブルームバーグのインタビューで、超長期金利の急騰について「市場を安定させるためのことはやってきているし、これからもやることは必ず約束できる」と述べ、市場の沈静化を促した。

20日の債券市場では日本国債が軒並み売られ、30年債と40年債の利回りが共に過去最高を更新した。高市早苗首相が衆院解散を表明した19日に打ち出した消費減税の財源を巡る懸念が要因だ。片山氏の発言を受けて、21日は金利上昇が一服したものの、財政悪化懸念はくすぶっている。円は対ドルで158円台で推移している。

円相場は昨年12月の日本銀行による追加利上げ以降も下落が止まらず、今月14日に159円45銭と約1年半ぶりの安値を付けた。政府・日銀は2024年、円が160円前後に下落した局面で4回にわたり円買い介入を実施しており、市場ではこの水準が介入に踏み切る一つの目安として意識されている。

片山さつき財務相(スイス・ダボス、1月20日)

片山氏は同インタビューで、為替動向を巡り、昨年9月に日米財務相で取り交わした共同声明に触れつつ、ファンダメンタルズを反映していない動きは「望ましくないと日米で一致している」と説明。対応策としては、為替介入も含め「何ら除外される手段はない」と述べた。

昨年12月のインタビューでは為替介入の可否について、「フリーハンドがある」と発言している。

投資家は金利急騰と財政拡張リスクを円売り材料と見ている。高市首相は19日の会見で、物価高対策の一環として、飲食料品にかかる8%の軽減税率を2年に限りゼロとする方針を表明。最大野党の立憲民主党と公明党が結成した「中道改革連合」も同日発表した基本政策の中で、食品消費税を恒久的にゼロ%に引き下げることを明記した。

財務省試算によると、軽減税率をゼロ%まで引き下げた場合、消費税収は年間約5兆円減少する。首相は赤字国債に頼ることなく財源を手当てする考えだが、兆円単位の穴を埋めるのは容易ではない。

日本の当局者は慣例として、為替市場に直接介入する前に慎重に選んだ言葉で市場に警告を発し、実際の行動にどの程度まで近づいているのかシグナルを送る。

片山財務相は昨年10月の就任以降、前任の加藤勝信氏や鈴木俊一氏が使ってきた用語をおおむね踏襲してきた。通貨政策を担う三村淳財務官も、24年7月までの3年間に25兆円規模の資金を投じて円を買い支えた前任の神田真人氏の方針を引き継いでいる。

口先介入

通貨当局が強い懸念を示すようになる前の段階では、20カ国・地域(G20)の方針に沿った次のような発言にとどまる傾向がある。

  • 為替は経済のファンダメンタルズを反映するのが望ましい
  • 急激・急速な為替変動は望ましくない
  • 為替レートの過度な変動は経済に悪影響を及ぼす
  • 為替レートは市場において決められる

警告を発する前に、通貨当局は特定の為替水準を目標としていないことを明確にすることが多い。

為替変動が大きくなり始める

  • 為替動向が経済に与える影響を注視している
  • 為替市場の動向を注視している

懸念が強まり警戒感へと変わる

  • 円安のマイナス面が目立ってきている
  • 足元では一方的、急激な動きが見られる
  • 為替動向を憂慮している
  • 投機的な動きを含めて為替動向を高い緊張感を持って注視する

介入への警告

  • 為替レートは経済のファンダメンタルズを反映していない
  • 投機による過度な変動が見られる
  • 円安が急速に進んでいる

介入が迫る

  • 必要であれば適切な措置を講じる
  • 投機的な動きは容認できない
  • 行き過ぎた相場の動きに対してはあらゆる措置を排除しない
  • いつでも行動を取る準備ができている/スタンバイしている
  • 断固たる措置を取る用意がある
 

(一部段落を入れ替え、21日の市場の動きを追加します)

--取材協力:横山恵利香.

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