(ブルームバーグ):16日の米金融市場では国債相場が下落(利回りは上昇)。トランプ大統領がハセット米国家経済会議(NEC)委員長を次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に指名することに難色を示したことから、年内の利下げ観測がやや後退した。ハセット氏はハト派寄りとされ、次期議長の最有力候補とみなされていた。

トランプ氏はハセット氏がNEC委員長職を離れれば、政権の経済政策に関して強力なメッセージを発する人物を1人失うとの認識を示した。ハセット氏に対し「正直に言うと、君には今の場所にいてほしい」と語った。
トランプ氏は今週、ロイター通信とのインタビューでFRB議長の人選を巡り、ハセット氏とウォーシュ元FRB理事の両氏などを検討していると示唆していた。
ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は、「ハセット、ウォーシュ両氏のどちらを選ぶとすれば、自分ならハセット氏にする」と話した。「ハセット氏が候補から外れれば、ウォーシュ氏の可能性が高まる。ウォーシュ氏はキャリアを通じてタカ派だ。インフレ率が当局目標を下回っている局面であっても、インフレを嫌ってきた人物だ。トランプ氏の政策スタンスを踏まえると、興味深い人選となるだろう」と述べた。
エバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は、今回のトランプ氏発言を受けて、次期議長レースではウォーシュ氏が一躍、最有力候補に浮上したと指摘。併せて、ウォラーFRB理事の可能性もわずかながら高まったとの見方を示した。
その上で、「これが決定的なシグナルだとは言い切れない。トランプ氏はこれまでも異なる局面でさまざまなシグナルを発し、リアリティー番組のようなドラマを楽しんできたようだ。ただ、ウォーシュ氏は今回初めて明確な最有力候補となったようだ」と続けた。
19日の米市場はキング牧師生誕記念日の祝日で休場となる。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は「きょうが3連休前の金曜日でなければ、10年債利回りの上昇は懸念材料になっていただろう」と語る。「4.20%の利回り水準は昨年9月以降、抵抗線になっている。3連休を控えた金曜の午後に債券市場のセンチメントが大きく変化し、それが定着するとは考えにくい」と述べた。
BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「ハセット氏が最有力候補ではなくなり、代わってウォーシュ氏指名の公算が高まっていることを、中央銀行の独立性という観点から前向きに受け止めている」と指摘。「ウォーシュ氏は市場に中立的な選択肢だと当社ではみている。価格面で大きな反応を引き起こす可能性は低い。強いて言えば同氏の経験と評判から、連邦公開市場委員会(FOMC)でのコンセンサス形成能力があるとみられるため、イールドカーブの短期ゾーンで弱含みが進む可能性はある」と話した。
さらに、「ウォーシュ氏はハセット氏ではない。ハセット氏はトランプ大統領への忠誠心が最も強いと広く見られており、データの裏付けがなくても、金利引き下げを推す可能性が非常に高いと受けとめられている」と付け加えた。
短期金融市場では、年内に0.25ポイントの利下げが2回実施されるとの見方がわずかに後退した。

株式
S&P500種株価指数は小幅安。大手半導体銘柄は上昇したものの、方向感に欠く展開となった。
フィラデルフィア半導体株指数は1.1%高。小型株のアウトパフォーマンスは続き、ラッセル2000指数は最高値を更新。1990年以来の長期となる11営業日連続で、S&P500種を上回った。
モルガン・スタンレーのエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏は「足元の経済指標は個人消費の勢いに加え、労働市場と製造業への下振れリスク低下、インフレへの上振れリスクが限定的なことを引き続き示している」と述べた。
ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのマクロ責任者、フロリアン・イエルポ氏は「インフレが抑制され、成長が加速するという好ましいマクロ環境においては、地政学的な緊張があっても、市場は不確実性を乗り越えて上昇基調を維持することができる」と指摘。この前向きなモメンタムに支えられ、バリュー株がグロース株をアウトパフォームする「ローテーション」が進んだと説明した。

外為
外国為替市場で、ブルームバーグ・ドル・スポットはほぼ変わらず。ハセット氏に関するトランプ大統領の発言を受けて、一時は朝方の下げから反転したものの、伸び悩んだ。
円は対ドルで上昇。片山さつき財務相の円安けん制発言が引き続き影響し、一時157円82銭まで買われた。
片山財務相は声明で「急激な、ファンダメンタルズを反映しない動きには断固たる措置が取れる、これは介入のことだが、これには何の制約や制限はついていない」と述べた。
モルガン・スタンレーの為替ストラテジストは、ドルが対円でこれまでの想定を上回るパフォーマンスを見せると見込む。米国の成長に関する楽観の強まりや、日本の衆議院解散・総選挙を巡る不透明感が背景だという。
杉崎弘一氏らモルガン・スタンレーのストラテジストは、ドル・円相場が4-6月(第2四半期)に1ドル=148円で下値を付けると予想。従来見通しは140円だった。
「当社の新たな基本シナリオでは、リスクセンチメントが依然顕著で、FRBの利下げペースがより緩やかになると見込まれる中、円キャリー取引が一段と広がるとみている」とリポートに記した。

原油
ニューヨーク原油先物相場は反発。今週はイラン情勢と、市場全体での前向きなセンチメントが意識され、ボラティリティー(変動性)の高い1週間となった。
トランプ大統領はSNSへの投稿で、反政府デモ参加者への絞首刑を停止するとしたイランの決定を「大いに」尊重すると述べた。ここ数日のトランプ氏の姿勢を受け、米国が直ちに対イラン軍事行動に踏み切るとの見方が後退した。軍事行動となれば、日量約330万バレルに上るイランの原油生産や、海上輸送に混乱が生じる恐れがあった。
それでも米国は中東地域での軍事プレゼンスを強化している。軍関係筋の話としてFOXニュースが伝えたところでは、少なくとも空母1隻が中東に向かっており、今後数日から数週間でさらに軍事的配備が進む見通しだ。過去にも地政学的リスクが高まる局面では、週末を控えて弱気ポジションを手じまう動きが見られてきた。
INGグループの商品戦略責任者ウォーレン・パターソン氏は「米国によるイランへの差し迫った介入リスクはいったん後退したものの、リスクそのものが消えたわけではなく、短期的には市場で神経質なムードが続くだろう」と分析。一方で、「米国の対応見合わせが長引けば、リスクプレミアムの剥落は続き、より弱気のファンダメンタルズが前面に出てくる」と語った。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は、前日比25セント(0.4%)高の1バレル=59.44ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント3月限は37セント上昇し64.13ドル。
金
金スポット相場は続落。2週間余りで最大の下げとなった。トランプ米大統領はハセットNEC委員長を次期FRB議長に指名することに難色を示した。
トランプ氏の発言後、ドルは下げを縮め、米国債利回りは上昇。これを受け、金は一時1.7%安となった。
2025年に大きく上昇した金は26年に入っても、その基調を維持してきた。背景にはFRBの独立性に対するホワイトハウスの新たな攻撃や、米金融政策緩和への期待などがある。
次期FRB議長を巡る不透明感の強まりは、今後も金相場の下支え要因になる可能性が高い。一方で、FRBが市場の想定ほど金利を引き下げないのではないかとの懸念が、利息を生まない金投資の重しとなっている。
直近のインフレ指標や雇用関連データを受け、複数のFRB高官は15日、労働市場が安定しつつある状況やインフレ圧力の継続を理由に、次回FOMC会合での利下げ見送りを支持する可能性を示唆した。地区連銀総裁5人は追加行動に踏み切る前に、より多くのデータを待つ余裕があるとの認識を示している。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時28分現在、31.65ドル(0.7%)安の1オンス=4584.50ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は、28.30ドル(0.6%)下げて4595.40ドルで引けた。
原題:Treasuries Fall as Trump Shakes Fed Chair Wagers: Markets Wrap(抜粋)
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