(ブルームバーグ):中国による対日圧力強化の影響が顕在化している。中国が日本へのレアアース(希土類)の輸出を制限し始めたとの報道が伝わる中、政府は必要あれば関係国と連携して対応する姿勢を示した。
木原稔官房長官は9日の閣議後会見で、中国によるレアアースなどの輸出管理措置は以前から続いており、「グローバルなサプライチェーン(供給網)に深刻な影響が及んでいる」と指摘。その上で、一般論として、レアアースの国際取引は「円滑に行われるべきもの」で重要だとし、引き続き状況を注視しつつ関係国とも連携の上で必要なら対応を取ると話した。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、中国がレアアースやレアアース磁石の日本向け輸出を制限し始めたと報じた。中国政府の決定に詳しい関係者の話として伝えたところでは、日本向け輸出許可申請の審査も停止された。制限対象は日本の防衛企業だけではなく、産業全体に及んでいるという。
マグネット応用機器の製造・販売などを行う山信金属工業(東京都港区)の山田洋代表は、現時点で中国がデュアルユース(軍民両用)物資の輸出を禁止したことによる影響はまだわかっていない一方、これまでの中国の規制強化によりレアアースを使った磁石の仕入れに要する期間は既に長期化していると話した。同社が調達するものの中では特にネオジム磁石への影響が大きく、通常1ー2カ月だった仕入れに要する期間が3ー4カ月になっている状況だという。
中国からレアアースを調達する日本の輸入企業の関係者は、少なくとも8日から9日午前までの間では、輸出申請の手続きが止まったという事実は聞いていないと明らかにした。
レアアースを使う電子部品メーカーの関係者も、現時点で手続きは止まっていないと述べた。ただ昨年末から手続きに時間がかかるようになっており、徐々に悪化しているという。こうした状況は予期できたため、今後半年分程度の在庫は持っており、切迫感はないとした。
高市早苗首相による昨年11月の台湾有事を巡る国会答弁以降、中国は対日圧力を強めており、その影響が貿易分野にも及び始めている。6日には中国が軍事利用が可能なデュアルユース(軍民両用)物資の輸出を全面的に禁止すると発表。レアアース規制を強化する可能性もあるとされていた。
茂木敏充外相は9日午後の閣議後会見で、日本だけをターゲットにした輸出管理措置は決して許容できないとし、必要な対応を行うと強調。各国と連携した世界的な「サプライチェーンの強化は喫緊の課題」だとした上で、「真の意味で自由で開かれた貿易体制を守っていきたい」との考えを示した。
デュアルユース品目の輸出規制を巡っては、中国商務省の何亜東報道官が8日夕の定例記者会見で、一般消費者の日常的な使用を目的とした民生用には影響しないと発言した。これを受け、9日の東京株式市場では自動車株や機械株が上昇している。
輸出でも遅れ

片山さつき財務相は9日の会見で、重要鉱物を議論する主要7カ国(G7)財務相会合に出席のため、11日から米国を訪問すると語った。その上で、「重要鉱物のサプライチェーンの安定化は各国の経済安全保障、世界経済の安定に非常に重要な課題」だと指摘。中国の輸出規制に対し危機感を共有しており、「われわれの立場を説明したい」と述べた。
赤沢亮正経済産業相は同日の会見で、中国によるレアアース輸出管理措置について、国内経済への影響をさまざまな観点から総合的に考え、米国やG7とも連携の上、毅然(きぜん)かつ冷静に対応していくと言明。重要な物資が過度に依存しない強靱(きょうじん)なサプライチェーンの構築が必要とも話した。
ブルームバーグインテリジェンスの北浦岳志アナリストは仮に中国から日本へのレアアースの出荷が止まっても、それ以外の国への出荷が続けば調達自体はできる可能性があると指摘。数カ月程度は対応できるとの見方を示した。
日本経済新聞は9日、日本から中国に輸出された日本酒など、酒類や食品の通関手続きが遅れる事案が発生していると報じた。これに関して木原官房長官は、農林水産物、食品の海外輸出が円滑に行われることは重要だとし、「引き続き状況を注視しつつ、必要な対応を行う」と述べた。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の担当者は、日本から中国への輸出において、通関手続きの遅れが昨年11月末以降一部の商品で起きていると認めた。具体的な商品についてはコメントを控えた。
(ジェトロのコメントを追加して更新します)
--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香、古川有希、前川祐補、稲島剛史、望月崇、長谷部結衣.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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