トランプ米大統領が8日夜、自身のソーシャルメディアに発表前の昨年12月の雇用統計の数字を含むグラフを投稿した。政府統計に対する信頼の低下を招きかねない行為で、超党派的であるべき情報が政治化されているという懸念を強める恐れがある。

「トゥルース・ソーシャル」に投稿されたグラフは、「1月以降」の民間部門の雇用が65万4000人増加したことを示しており、ワシントン時間9日午前8時30分(日本時間午後10時30分)に公表された数値と一致している。統計データが公表される約12時間前に投稿された。

労働統計局が発表する米雇用統計は、金融市場を大きく動かし得る、最も厳重に保護されている経済統計の一つ。大統領の投稿から雇用統計の発表までの間、債券・株式市場や予測プラットフォーム「ポリマーケット」で取引の活発化は見られなかった。

ホワイトハウス当局者は、情報の事前公開などに関わる「不注意な」公表があったことを認め、政府が経済統計発表のプロトコル(規定)を検証していると付け加えた。

トランプ氏は9日、この件について問われると、「彼らが投稿したのかどうかは知らないが、機会があれば投稿するようにとは言った」と答え、「誰かが私に何かをくれれば、私はそれを投稿するのだ」と、ホワイトハウスでの石油業界幹部との会合で記者団に語った。

労働統計局と、同局を管轄する労働省はコメントの要請に回答していない。

 

米大統領とその経済チームは通常、雇用統計が発表される前日にブリーフィングを受ける。また、政権関係者は、数値が公表されてから30分後まではコメントを禁じられている。政権が解釈を加える前に、政策中立的な統計を確認する時間を国民に与えるためだ。

ブルームバーグ・ニュースが8日時点で公開されていたデータに基づいて昨年1月から11月までの民間部門の雇用増加数を算出したところ、68万7000人だった。9日発表の雇用統計では、12月の民間部門の雇用者数が予想を下回り、10月と11月の数字も下方修正された。

また、政府職員を含む非農業部門雇用者数も12月は予想に届かず、2009年以降で人員採用が最も低調な1年となった。

トランプ氏の投稿は、12月の雇用者数の具体的な数値は明かしていなかったものの、投資家に統計の方向性を示唆した可能性がある。市場関係者は統計の正式発表後、トランプ氏の投稿をソーシャルメディアで拡散し、同氏がデータを早期に共有したように見えると指摘した。

今回の出来事は、データに関する混乱を引き起こし市場のボラティリティーを高めるリスクもあると、KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は指摘した。

「われわれは可能な限り公平な競争環境を望んでいるが、今回の件はそれを損なうものだ」とスウォンク氏は指摘。「市場に参加する者は誰でも、前夜に経済指標の手がかりを求めて大統領の投稿をチェックするようになるだろう」と述べた。

トランプ米大統領は8日夜、ソーシャルメディアに発表前の雇用統計の数字を含むグラフを投稿した。Mike McKeeがリポート

トランプ氏が取り決めを守らなかったのは今回が初めてではない。1期目任期中の2018年、トランプ氏は雇用統計発表の1時間前に「楽しみにしている」とツイートし、市場はこれを好結果のシグナルと解釈した。実際、この時の雇用者数は予想を上回り、失業率は低下していた。

原題:Trump Posted Unpublished Jobs Data Early on Social Media (5)(抜粋)

(ホワイトハウス当局者やトランプ氏のコメントを追加して更新します)

--取材協力:Kevin Varley、Josh Wingrove、Catarina Saraiva、Mark Niquette、Jennifer A Dlouhy.

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