(ブルームバーグ):30日の米株式相場は小幅安。S&P500種株価指数は3営業日連続のマイナス相場となった。12月連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表され、来年の追加利下げ観測が裏付けられたものの、市場の反応は薄かった。
年末も押し迫り、数日前からFOMC議事要旨以外に取り立てて注目される材料はなく、ニュースも取引も静かな1日だった。FOMC議事要旨によれば、大部分の当局者がインフレが時間とともに低下を続ければ追加利下げが適切になると認識。議事要旨は当局者間にある溝の深さもあらためて浮き彫りにし、今月の0.25ポイント利下げがいかに難しい決定だったかを物語った。
PNCアセット・マネジメント・グループの最高投資責任者(CIO)、アマンダ・アガティ氏は「冗談を言うと、株式市場はお菓子屋さんに来た子どものようだ。甘い物を食べ過ぎた高揚感でもっと緩和を、もっとハト派な政策をと要求するが、それがどう良いのかを理解していない」と話す。「一方で債券市場は最後のキャンディーを取り上げる大人のようだ。観測可能なマーケット史上で初めて、赤字と債務水準の懸念に相場が反応しているのかもしれない。長期債利回りに上昇圧力がかかり続けるのは確かだろう」と述べた。
トランプ米大統領は29日、自分のお気に入りの次期連邦準備制度理事会(FRB)議長候補がいるとしつつも、発表を急ぐつもりはないことを示唆した。一方で、パウエルFRB議長を解任する可能性がまだあるかもしれないとも話した。
PNCのアガティ氏は「FRB議長が来年解任されるとすれば、市場には織り込まれていない事態だ。しかしややハト派寄りな路線を維持し、逆方向の話が始まらない限り、市場はそういうノイズを切り抜けていけるだろう」と述べた。
この日発表された10月の米住宅価格指数は、上昇ペースが小幅に加速した。
新年に向けて投資家は楽観だが、それには理由がある。ブルームバーグがまとめたデータによれば、MSCIの世界株指数は過去10年における1月の上昇率が平均1.4%。1月がプラスだったのは6年あった。
関税と消費者信頼感の揺らぎという向かい風は続くが、米資材株の増益見通しは5年ぶりの好調が見込まれている。金属とパッケージ関連の銘柄が特に押し上げられる見通しだ。貿易保護措置による鉄鋼価格の上昇や消費財メーカーによる量重視戦略で、シリアルの箱からソーダ缶に至るまで需要が生まれている。
個別企業のニュースでは、テスラは自社ウェブサイトにアナリストによる納車台数予測を集計して掲載した。ブルームバーグが集計した同10%減の44万5061台よりも悲観的だ。
ゴールドマン・サックス・グループは、人工知能(AI)向けの専用電力キャンパスを建設するテキサス州のプロジェクトで、資金調達を他社と共同で主導している。
米国債
米国債相場は今年最後の通常取引をほぼ変わらずで終えた。10年債利回りはニューヨーク時間の朝方に約3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇する場面もあった。
明確な取引材料に乏しく、商いの薄さも顕著だった。5年債と10年債の先物にいくつかまとまった取引が入ったが、相場全体への影響は軽微だった。
31日は祝日前の短縮取引となり、CME先物が引けるニューヨーク時間午後1時に月末のインデックスリバランスが想定されている。
12月FOMCの議事要旨で改めて浮き彫りになった見解の相違は、2026年に0.25ポイントの利下げを2度見込む市場の姿勢に影響しなかった。
米経済の底堅さを示す兆候を背景に、月間ベースでの米国債は小幅安で12月を終える見通し。一方、年間では2020年以来の好調となる勢いだ。FOMCは今年、労働市場の軟化に応える形で政策金利を3回引き下げた。
外為
ブルームバーグ・ドル指数は長期債利回りと足並みをそろえて小幅に上昇した。年末で商いは薄く、主要10通貨は狭いレンジ取引となった。
ドルは対円で一時0.3%上昇し、156円57銭を付けた。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、0.1%未満上昇。アジアおよび欧州時間の下げから反転した。年間ベースでは約8%下げており、2017年以来の大幅安に向かっている。
FOMCの議事要旨によれば、12月会合ではインフレ率が想定通り、時間とともに低下すれば、追加の利下げが適切になるとの見方を大部分の当局者が示していた。
中国のオンショア人民元相場も引き続きトレーダーの注目を集めている。オンショア人民元は対ドルで1ドル=6元台に上昇した。重要な節目の7元突破は2023年以来。
スコシアバンクの主任通貨ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「一段高となれば23年初期の水準がターゲットに入り、円やウォンといったアジア通貨にも買いが広がる可能性が出てくる」と述べた。

原油
原油先物相場は小反落。市場では、ベネズエラ情勢やイエメンを巡る緊張といった地政学的リスクと、世界的な供給過剰懸念の両方が意識された。
内戦が続くイエメンでは、サウジアラビアとUAEがそれぞれ対立する政治勢力を支援している。サウジ主導の連合軍はイエメン南部にあるムカッラ港で空爆を実施。サウジは、UAEからイエメン分離派勢力「南部暫定評議会」(STC)向けに運ばれた武器を標的に攻撃したと主張している。UAE側はこの主張を否定。ただ、UAE国防省は声明で、イエメンから「自発的な判断で」部隊を撤収すると発表した。
一方、トランプ米大統領が進めるウクライナ和平への取り組みは、ロシアのプーチン大統領が交渉上の立場を見直す考えを示したことで、新たな難題に直面している。
原油相場は根強い供給過剰懸念を背景に、年間ベースでは大幅な下落となりそうだ。調査会社ボルテクサのデータによると、稼働していないタンカーに保管されている原油量は着実に増加している。

米国では、原油の主要集積地であるオクラホマ州クッシングの在庫が、12月19日までの週に、10月下旬以来となる大幅な増加を記録した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物2月限は、前日比13セント(0.2%)安の1バレル=57.95ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は2セント安の61.92ドル。
金
金スポット価格は反発。前日急落していた銀とともに買いが戻った。
前日の取引で金は約2カ月ぶりの大幅安を記録。銀も約5年ぶりの大幅な下げとなっていた。ただ、銀は供給不足がなお続いており、このまま行けば月間で33%上昇する勢いだ。
前日は取引所での証拠金要件の引き上げや、テクニカル指標が相場の行き過ぎを示唆していたことが売りを誘った。また年末で流動性の低さが価格変動を一段と増幅させた。
ペッパーストーン・グループのストラテジスト、ディリン・ウー氏は、売りは主に「テクニカルな要因によるものだ。足元の貴金属価格高騰を受けた早期の利益確定や、レバレッジをかけたロングポジションの巻き戻し、証拠金要件の厳格化が圧力となった」と指摘。「ファンダメンタルズは変わっていない」と述べた。

金スポット相場はニューヨーク時間午後1時50分現在、前日比34.90ドル上昇し、1オンス=4367.25ドル。COMEXの金先物2月限は42.70ドル(1%)高の4386.30ドルで終えた。
原題:Stocks Decline for Third Day as 2025 Nears End: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasuries End Little Changed After Erasing Low-Volume Declines(抜粋)
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原題:Oil Steadies as Geopolitical Risks Counter Oversupply Outlook(抜粋)
原題:Silver Rises After Biggest One-Day Drop in More Than Five Years(抜粋)
--取材協力:Shikhar Balwani、Isabelle Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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