全米商工会議所は、トランプ政権が導入した就労ビザ「H-1Bビザ」の新規申請に対する10万ドル(約1560万円)の手数料について、連邦地裁が差し止めを認めなかった判断を不服として控訴する。H-1Bビザ制度には、高度技能を持つ外国人労働者の採用で米テクノロジー企業が大きく依存している。

全米商工会議所は29日、控訴通知を提出した。首都ワシントンの連邦地裁のハウエル判事は23日、人気の高いこのビザの費用を大幅に引き上げるトランプ大統領の措置を巡り、適法との判断を下していた。

トランプ氏は9月、申請手数料を引き上げる大統領布告に署名。これに対し、主に民主党主導の10数州がマサチューセッツ州で別途、トランプ政権を相手取り訴訟を提起したほか、国際的な看護師派遣会社と複数の労働組合がカリフォルニア州の連邦地裁に提訴している。一連の訴訟は最終的に連邦最高裁まで持ち込まれる見通しだ。

H-1Bビザ制度は雇用ベースの移民政策の中核で、大学教育を受けた外国人を専門職として米企業が雇用することを可能にしている。トランプ氏は、この制度が米国人労働者の職を奪っていると主張し、企業による乱用を抑止するとして申請手数料の引き上げに踏み切った。

これは、移民に対する米国の歴史的な姿勢からの大きな転換でもある。米国は建国以来、さまざまな国から多様な経済的背景を持つ人々を受け入れてきた。

トランプ氏とラトニック商務長官は、新たな手数料によって最大1000億ドル以上に上る財政収入が米財務省にもたらされる可能性があるとの見方を示している。一方、移民法の専門弁護士は、これほど大幅なコスト増は深刻な混乱を招き、結果的に米経済に多大な負担をもたらす可能性が高いと警告している。

米国最大の企業ロビー団体である全米商工会議所は10月に提起した訴訟で、手数料の引き上げは連邦移民法を骨抜きにし、議会が認めた手数料設定の権限を超えているとして違法だと主張していた。

これに対し、連邦地裁のハウエル判事は、トランプ氏に手数料を課す権限がないとする全米商工会議所の主張を退けた。同判事は、トランプ氏の布告が「大統領に対する明示的な法定の権限付与」に基づいて発出されたとの判断を示した。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の訴訟担当アナリスト、マシュー・シェッテンヘルム氏はリポートで、全米商工会議所にとって控訴審は厳しい闘いになるとの見方を示す。

「商工会議所にとっては、トランプ政権に厳しい姿勢を取ってきたオバマ元大統領指名のハウエル判事という有利な裁判官だったにもかかわらず、同判事はトランプ氏に包括的な勝訴を与えた」とシェッテンヘルム氏は指摘。「ハウエル判事がこの新布告に法的欠陥を見いださなかったのであれば、連邦高裁や連邦最高裁の判断も同様だろう」とコメントした。

原題:Fight Over Trump’s $100,000 H-1B Visa Fee Moves to Appeals Court(抜粋)

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