(ブルームバーグ):トランプ米大統領が推進する不法移民の強制送還を巡り、この政策の熱心な支持者から取り組みが甘いとの批判が上がっている。
トランプ政権が犯罪歴のある移民に焦点を当てているのは、送還対象として範囲が狭すぎると、ヘリテージ財団のマイク・ハウエル客員フェローは指摘する。送還を大幅に増やすために、大規模な職場への一斉摘発を進めるよう同氏は訴えている。
「強制送還の人数に満足していないし、フェイクの強制送還の統計にも満足していない」とハウエル氏はインタビューで語った。「職場に焦点を当てるだけで、数字は本来あるべき水準にもっと近づくはずだ」という。
また政権が大規模な強制送還を実行する意思があるなら、職場での取り締まりが必要だとし、他に選択肢はほとんどないとも主張。
「不法移民が恐怖心を感じることなく米国で生活できる状況を、可能な限り不可能にしたい」とハウエル氏。「職場での一斉摘発の実行を望む。大規模な摘発が行われていないこと自体が、大量送還が実施されていない証拠だ」と述べた。

ヘリテージ財団は政策提言書「プロジェクト2025」で、大規模な強制送還に向けたロードマップ(工程表)を提示。同構想は第2次トランプ政権1年目の大半において政策の指針となり、ミラー次席補佐官やノーム国土安全保障長官らが中心となって推進してきた。
だが、ハウエル氏の批判はトランプ氏の支持者らの間で高まる緊張を浮き彫りにしている。2026年の中間選挙を前に、経済を損なうことなく、いかに強硬な移民取り締まりを進めるかという問題が争点となっているためだ。MAGA(米国を再び偉大に)運動や保守派の間でこうした議論が展開されており、ヘリテージ財団で人材の流出や指導部を巡る対立が起こるなど、右派内の深い亀裂が露呈した。
ホワイトハウスは、逮捕者の増加や不法越境の急減を成功の証しとして強調している。だが、トランプ政権内の多くが想定していた水準までは強制送還の数は増えていない。司法判断、収容能力の制約、送還先である一部の国による抵抗が足かせとなっている。
また国民の間で反発が高まっていることも障害になり得る。AP通信とNORC公共問題調査センターが12月に実施した世論調査で、トランプ大統領の移民政策に関する支持率は38%と、3月の49%から低下。また同期間に全体の支持率も42%から36%に下がっている。
原題:Trump Slammed by Heritage Hardliner Over ‘Fake’ Deportations(抜粋)
--取材協力:Hadriana Lowenkron、Brendan Walsh.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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