(ブルームバーグ):中国は29日、台湾周辺で実弾射撃訓練を含む軍事演習「正義の使命2025」を開始した。米国が台湾へ過去最大規模の武器売却パッケージを発表したことを受け、改めて軍事力を誇示した格好だ。
台湾沖での大規模演習は、4月以来初めて。施毅陸軍大佐は28日発表の声明で、「『台湾独立』分離勢力と外部干渉に対する厳しい警告」と述べた。
中国人民解放軍は別の声明で、30日に5カ所の実弾射撃訓練区域を設定するとしており、当局は航空会社に当該区域の回避を勧告した。台湾国防部によると、この区域は2022年以来初めて台湾の領海と重複しているが、現時点で軍艦の進入は確認されていない。
今回の演習は、台湾を支援する米国との関係安定を目指す中でも、中国政府が台湾問題に神経をとがらせていることを示している。米国政府が12月、台湾に対し最大110億ドル(1兆7200億円)相当の武器売却を承認したことに対し、中国は超大国間の衝突リスクを高めたと非難した。26日には、米防衛企業20社と企業幹部10人を対象とする制裁を発表した。

中国と米国は、通商を巡る対立的な措置を互いに1年間停止すると、2カ月前に合意したばかりだ。トランプ米大統領は、4月の訪中の準備を進めている。
シンガポールの南洋理工大学のディラン・ロー准教授は、今回演習が合意を乱すことはまずないとして、中国側がさらに挑発的な行動に出る可能性は低いとみている。同氏は「中国は痛手を与え、決意を示す一方で、不釣り合いな行動とは見られない、ちょうど良いバランスを保とうとするだろう」と語った。
台湾国防部は29日、中国が「非合理的な挑発的行動」を取ったと批判し、中国が「戦闘準備訓練」を実施するため部隊を配備したと発表した。台湾の航空当局は、実弾射撃訓練区域の設定が航空機の飛行の安全を著しく損なうとし、代替飛行ルートの検討を進めていると述べた。
台湾の投資家は、こうした軍事活動を深刻とみない傾向がある。台湾総合株価指数(TAIEX)は0.9%上昇し、半導体などの先端技術製品に対する強い需要を背景に、過去最高値を更新した。中国、台湾の防衛関連株も上昇した。

原題:China Holds Military Drills Around Taiwan After US Arms Deal (2)(抜粋)
--取材協力:Cindy Wang、Ken Wang、Adrian Leung、Yongchang Chin、Argin Chang.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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