米電気自動車(EV)メーカー大手テスラの株価が15日、前週末比で一時5%近く上昇した。終値で2024年12月以来となる上場来高値更新が視野に入った。同社のバリュエーション(株価評価)の高騰には懸念も高まっている。

テスラ株は、トランプ大統領の関税発表に誘発された株式相場急落で4月上旬に安値をつけた後、2倍強に上昇した。15日のニューヨーク市場では一時481.76ドルに達した。終値は475.31ドルと、2024年12月17日に付けた上場来高値479.86ドルに迫った。

Photographer: Jair F. Coll/Bloomberg

ハーグリーブス・ランズダウンの株式上級アナリスト、マット・ブリッツマン氏は「堅調な基盤事業が依然として重要な役割を担っていることは確かだが、それが主な原動力ではないことを投資家は覚えておくべきだ」と指摘。「テスラ株は業績と同じくらい投資家心理に左右されている。人工知能(AI)関連のストーリーが1兆ドル規模の企業価値を支えており、中核事業は脇役だ」と述べた。

10月に発表されたテスラの7-9月期(第3四半期)決算は販売台数が過去最高を記録したものの、コスト上昇が利益を圧迫し、投資家を失望させた。販売増は米国で1台当たり7500ドル(約116万円)のEV購入税控除制度が9月末で終了する前に駆け込み需要が高まったことが要因だった。

記録的な販売の裏で、業績の先行きには陰りが見えている。世界的な販売鈍化や利益見通しの下振れ、規制当局の監視強化など事業環境は急速に悪化している。

今年初めのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の政治的な言動は、テスラの経営への関心が薄れているとの懸念も広がった。また、人気車種の低価格モデル投入による販売促進策にも市場は懐疑的だった。トランプ氏の関税政策や、マスク氏が同氏と公に距離を置いたことも重なり、株価は4月には昨年12月の高値から半値近くに落ち込んだ。

しかし、その後は目覚ましい回復を遂げた。マスク氏はテスラを、EVメーカーからロボティクス・AI企業へと再定義する構想を打ち出し、これが投資家心理を大きく押し上げた。AIブームが市場全体を覆う中、アルファベットやオラクルといった大手IT株と並んでテスラも上昇を続けている。

市場ではテスラが自動化分野で支配的地位を獲得する可能性が期待され、複数の証券会社が目標株価を引き上げている。ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は9月26日に目標株価を500ドルから600ドルに引き上げ、AI分野での「ゲームチェンジャーになり得る」と評価した。

一方で、BCAリサーチのチーフ米国株ストラテジスト、アイリーン・タンケル氏は「テスラは個人投資家に人気の銘柄であり、既に過熱した株式市場における根拠なき熱狂の一例だ」とし、「テスラはバブル領域にある」と警鐘を鳴らした。

原題:Tesla Shares Headed for Record for First Time in a Year(抜粋)

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