中国は南シナ海でフィリピンの漁師が負傷した先週の事件をめぐり、フィリピン側が対立を挑発したと非難した。現場は長年にわたり領有権争いが続く海域で、緊張が再燃している。

中国外務省の郭嘉昆報道官は15日の定例記者会見で、「フィリピンはサビナ礁(中国名・仙賓礁)付近に組織的かつ計画的に船を集め、挑発や嫌がらせを行った」と主張した。

フィリピン沿岸警備隊が13日発表したところによると、この前日にサビナ礁付近で操業していた漁船に中国の艦船が放水攻撃を仕掛け、3人の漁師が負傷、2隻の船が損傷した。

フィリピン大統領府報道官室のカストロ次官は記者団に対し、ラザロ外相の言葉として、在マニラの中国大使館に抗議する意向だと明らかにした。

これに対し中国の郭報道官は、フィリピン船がサビナ礁で度重なる警告にもかかわらず、「悪意のある旋回などの危険な動き」をとり、中国船に体当たりしてきたと説明。さらに、フィリピンの船員が「中国の海警隊員に対し、ナイフで威嚇する場面すらあった」と続けた。

一方、フィリピン側は同海域で合法的に操業していたと反論している。フィリピン国家海事評議会は15日に発表した声明で、「放水や危険な操船など、木造の小型民間漁船に危害を加える行為は断じて正当化されない」と非難した。

国連海洋法条約に基づいて設立された仲裁裁判所は2016年、中国による南シナ海の領有権主張を全面的に否定した。それでもほぼ南シナ海全域の領有権の主張を変えない中国に対し、フィリピンはここ数年、哨戒活動を強化し、同盟国である米国との安全保障協力を深めている。

米国務省は14日の声明でフィリピンを擁護、中国の行動はフィリピン人漁師の安全を危険にさらしていると指摘し、「中国の近隣諸国に対する挑発的な行動やますます増える危険な戦術は、地域の安定を損ねている。こうした状況に向き合うことを余儀なくされているフィリピンと、われわれはともにある」と表明した。

欧州連合(EU)も、南シナ海における中国海警局のフィリピン漁船に対する「最近の危険な行動」を非難する声明を発表した。

原題:China Accuses Philippines of Provoking Clash in South China Sea(抜粋)

EU Condemns China Coast Guard ‘Dangerous’ South China Sea Action(抜粋)

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