心理的障壁:お金の話や新しいことへの抵抗感がある
これまで日本で金融経済教育が十分に進まなかった要因の一つとして、お金の話をすることをタブー視する文化的な傾向が指摘されてきた。そうした心理が、お金を学ぶことへの抵抗感を生じさせる可能性が考えられる。
そこで、「お金の稼ぎ方や資産形成などについて親から助言を受けたことがある」か否かを確認すると、学びの場不要層では、親から助言を受けたことがある割合が10ポイント程度低かった。学びの場不要層は、家庭内でお金の話をした経験が少ないとみられる。
また、「独り立ちするまでの子どものお金の稼ぎ方や資産形成について、親は助言する必要がある」と思う人の割合も、学びの場不要層は30%程度で、必要層と2倍近い差がみられた。
こうした結果を踏まえると、お金について話す・教えるという経験や意識が乏しいことが、学びに消極的な姿勢につながることが考えられる。
学校や職場での金融経済教育の普及によって、お金について、よりオープンで主体的に考える姿勢が育まれることが期待される。
加えて、お金や資産形成のように、これまでやってこなかった新しい取組みに対して抵抗感があるという心理的障壁も考えられる。
「新しいことやものを積極的に暮らしに取り入れている」人の割合をみると、学びの場不要層のほうが、必要層より20ポイント近く低い。
また、新しいことへの挑戦を妨げる要因の一つとして、「どうせやっても変わらない」といった諦めの心理があると考えられる。
そこで、「自分が動くことで社会を変えることができると思う」か否かの設問を確認してみると、ここでも学びの場不要層のほうが少ないという結果がみられた。
「お金の稼ぎ方や資産形成の学びの場」と「社会変革」は、直接的な関連があるとは言い難い。ただ、その背景に、新しい知識や行動によって自分や社会が変わるという自己効力感や変化への期待の低さが共通している可能性がある。
日本の子どもたちの自己効力感や自己肯定感が低いことは、教育における重要な課題となっている。こうした傾向は、金融経済教育など新しい学びへの意欲にも影響しうるため、その醸成は喫緊の課題である。
学習意欲:「学び」自体に消極的である
最後に、学習意欲に起因する可能性を考える。「お金の稼ぎ方や資産形成」に限らず、そもそも「学び」自体に消極的というケースである。
「時代の変化に合わせて、学び続けようと思う」「社会人になってからの学び直しは必要だ」に対する回答を比較した結果、学びの場不要層のほうが必要層に比べて、あてはまる人がどちらも30ポイント程度少なかった。
本調査では、「お金の稼ぎ方や資産形成」の他「働き方や職業選択(キャリア)」「結婚や子育て」「健康的な生活」「ライフデザイン(人生設計)を考える上で必要な情報」についても、それぞれ「どこで学ぶのが適切だと思うか」を尋ねている。
「お金の稼ぎ方や資産形成について、学ぶ場は必要ない」と思う人のほとんどは、上記4つの分野すべてを「学ぶ場は必要ない」と回答していた。
これらを踏まえると、「お金の稼ぎ方や資産形成」の学びの場が不要というだけではなく、そもそも「学び」自体に消極的であると考えられる。
金融経済教育の必要性を喚起したり、教材やオンライン講座の提供など学びやすい環境を整備しても、根本的に学びへの抵抗感がある場合には、実際の学習行動にはなかなかつながりにくいだろう。


