4人に1人が「お金の稼ぎ方や資産形成について、学ぶ場は必要ない」

政府が資産運用立国実現プラン(2023年12月)を公表してから2年が経つ。

実現プランは、個人の資産形成を促進し、国内の投資を活性化させ、「成長と分配の好循環」を実現していくことを目的とした包括的な政策である。その中の取組みの一つに、金融経済教育の充実が挙げられている。

2025年11月に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」でも、「家計の安定的な資産形成に向け、金融経済教育の更なる充実を図る」と明記されており、金融経済教育は引き続き推進される見込みである。

金融経済教育の充実を求める声も多い。金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査(2022年)」によると、「生活設計や家計管理等の『金融教育』は、学校で行うべき」と思う人は71.8%にのぼった。

インフレの進行などもあって、金融経済教育の重要性はいっそう高まっている。今後も物価上昇が継続すれば、手元の現金や貯蓄の実質的な価値は目減りするため、インフレが家計に与える影響や自分の資産をどのように守るかなどを主体的に考える必要がある。

第一生命経済研究所では「お金の稼ぎ方や資産形成について、本来どこで学ぶのが適切だと思うか」を調査した。

学ぶ場として、高校や大学・専門学校など学校教育が適していると思う人が多い一方で、「学ぶ場は必要ない」という人も25.8%と少なくない。

学ぶ場は必要ないと思う人は、男性のほうが女性より多く、30代以上の男性では3割程度となっている。

「自分で学ぶから学ぶ場は不要」ということも考えられるが、学ぶ場は必要ないと回答した人の約9割が、お金の稼ぎ方や資産形成について情報を得たり、学んだ経験がなかった。それらについて学ぶこと自体に消極的とみられる。

金融経済教育の推進においては、こうした学びに前向きでない層の関心を高める必要がある。本稿では、「お金の稼ぎ方や資産形成について、学ぶ場は必要ない」と思う背景と求められる取組みについて考察する。

ニーズ:学ぶ場の必要性を感じていない

「お金の稼ぎ方や資産形成について、学ぶ場は必要ない」と思う背景として、1)学ぶ場の必要性を感じていない、2)お金の話や新しいことへの抵抗感がある、3)「学び」自体に消極的である、といった3点が主に考えられる。以下、順にみていく。

まず、「学ぶ場は必要ない」というのは、実際に個人がその必要性を感じていないからというニーズの問題があると考えられる。たとえば、自分はすでに知識があるから学びの場は不要と思っているケースである。

これについて、「自分は、経済や資産形成に関する知識があるほうだ」と思う人の割合を、「お金の稼ぎ方や資産形成について、学ぶ場は必要ない」と思う人(以下、学びの場不要層)と、学ぶ場は必要だと思う人(以下、必要層)で比較した。

その結果、予想と反して、学びの場不要層のほうが「知識があるほうだ」と思う割合が、10ポイント程度低かった。

さらに、実際に「将来の社会環境の変化を見込んで、家計運営や資産形成が行えている」人の割合も、学びの場不要層のほうが低く、資産形成は行えていないが学びの場は不要と考えている傾向がみられた。

もう1つ、特に経済的に困っていないから学びの場は不要とするケースも考えられる。

現在および将来の暮らしにおける経済的な不安の有無をみたところ、現在・将来いずれにおいても、学びの場不要層のほうが経済的な不安を感じている人の割合は10ポイント以上低かった。

つまり、ニーズの面では、経済的な不安を感じていないことが、学びの場は不要と考える主な要因であるようだ。一方で、自らの知識不足や資産形成を行っていないことは、学びの場の必要性を強く喚起するものではなかった。

言い換えれば、不安を感じていないから、知識を得たり資産形成に取り組んだりしていない可能性がある。

過度に不安を煽ることは望ましくないものの、金融経済教育においては、まずは個人の家計や経済状況を把握し、そのもとで希望する生活が実現可能かを考えるというライフデザインの視点が重要といえる。