英国の欧州連合(EU)離脱を巡る最悪の予測は、確かに直ちに実現しなかった。

ロンドンからの企業の大規模脱出も、イングランド銀行(英中央銀行)が警告したリセッション(景気後退)も起きなかったが、多くのエコノミストは新たな推計に基づき、従来考えられていたより打撃ははるかに深いと主張する。

世論が分断され、支持基盤がその両方にまたがる与党労働党は、EU離脱を巡る問題を長らくタブー視してきたが、ようやく慎重な取り組みを開始した。そのタイミングで、全米経済研究所(NBER)が「英国のEU離脱の経済的影響」と題する論文を公表した。

英国では、ナイジェル・ファラージ党首率いる右派ポピュリスト政党「リフォームUK」が世論調査で与党をリードする状況が続く。EU離脱を強力に推進してきた最大の支持勢力、リフォームUKに対抗する新たな戦略が、労働党の背中を押した。EU離脱の長期的コストに関する新たな知見が、その決意をさらに強めるかもしれない。

ニコラス・ブルーム氏、ポール・マイゼン氏ら経済学者が執筆したNBERの論文によると、英政府の公式予測機関は、長期的な国内総生産(GDP)を4%押し下げる見通しを最大50%過小評価していた。これは2000億ポンド(約41兆3800億円)を上回る経済コストを示唆する。

欧州改革センター(CER)のジョン・スプリングフォード氏による別の研究報告もEU離脱がなければ、英経済はフランスやドイツより米国に近い成長率を記録していたはずだと分析した。

キングス・カレッジ・ロンドンで経済学教授を務めるマイゼン氏は当初の予測について、「かなり正確だった。もっと早く起きると考えていただけだ」と指摘した。

Photographer: Jose Sarmento Matos/Bloomberg

原題:Brexit Costs Seen Worse Than Ever Just as Politics Is Shifting(抜粋)

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