(ブルームバーグ):韓国の個人投資家による米国株の買い越しが今年、過去最大の310億ドル(約4兆8100億円)に達し、通貨ウォン安の元凶として矢面に立たされている。これに対し、個人投資家は憤りを感じている。
今四半期のパフォーマンスがアジアで最も悪いウォンは、ここ数週間で16年ぶりの安値に迫った。韓国銀行(中央銀行)総裁を含む当局者は、個人投資家の海外株式への旺盛な投資姿勢が通貨を押し下げていると指摘してきた。
推計1400万人に上る国内の個人投資家は、こうした非難に「驚いた」と語る。数年前から米国株への投資を続けている会社員のパク・ウンヘ氏は、個人投資家はウォン安の責任を負わされたことに「間違いなく憤りを感じている」と話した。
また、個人投資家は責められやすい「格好の標的」だが、実際には「過剰流動性などより広範な要因の方がはるかに大きな影響を及ぼしている可能性がある」と指摘した。

韓国の首都ソウルでの過熱した不動産価格に手が届かず、さらに2025年の異例の強気相場に転じるまで10年近く低迷していた韓国総合株価指数(KOSPI)の低リターンに失望した韓国の個人投資家は、富の形成を目指し、暗号資産や海外上場のレバレッジ型上場投資信託(ETF)など高リスク商品に資金を投じた。しかし、その積極性が今、韓国の金融政策当局の頭痛の種になっている。
韓国預託決済院(KSD)のデータによると、韓国の個人投資家は今年、米国株を310億ドル買い越した。これは過去最高額で、24年のほぼ3倍、19年の12倍超に当たる。
地元紙の中には「通貨危機」発生の可能性を懸念する見出しを掲げるものもあったが、政府はこれを全面否定した。公式データによると、10月の株式資金流出は約180億ドルで、その大半が個人投資家によるものだった。一方、流入は約30億ドルにとどまった。
メリッツ証券のエコノミスト、スティーブン・リー氏は、「もし海外への資金流出が国内への流入を上回れば、ウォンを弱含ませたり、上昇を抑制したりする可能性がある」と指摘した上で、韓国の海外株式投資は期待リターンを踏まえた「自然な結果」だと述べた。
韓国中銀のの李昌鏞総裁は先月27日、ウォンが値下がりし続け、1ドル=1500ウォンに近づくことよりも、そこへ向かわせている要因、つまり若年層による積極的な外国株投資の方を懸念していると指摘。「若者たちになぜそんなことをするのかと尋ねたところ、かなり驚いた。『クールだから』という答えだったからだ」と語った。
これに対し、元トレーダー兼ポートフォリオマネジャーで、現在は金融系ユーチューバーのSyuka氏は自身のチャンネルで、韓国人が海外株を買うのは「クールだからではない」と主張。韓国市場が10年間にわたり停滞してきた結果だと説明した。
韓国株式市場では今年、企業改革への期待や李在明大統領による株価押し上げへの公約などを背景にKOSPIが70%超上昇し、世界有数のベストパフォーマンスを記録しているにもかかわらず、資金流出は続いている。

原題:South Korean Retail Traders ‘Livid’ Over Won Slide Blame Game(抜粋)
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