8日の日本市場では債券が下落。日本銀行の12月利上げ観測が高まる中、あすの5年債入札や11日の20年債入札に向けた売りが相場を押し下げた。株式は上昇、円は対ドルで155円付近で推移した。

日銀が18、19日に開催する金融政策決定会合での利上げ確率はスワップ市場で9割を超えている。9日には植田和男総裁が英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のイベントで講演する予定で、利上げを巡る情報発信への警戒感が出ている。

岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、5年債、20年債の入札を意識した動きが出て、30年債も売られたと指摘。「20年や30年債が不安定化してくると10年債にも売りが波及しやすくなる」と述べた。

5年債入札について、長谷川氏は「金利水準は悪くないが、植田総裁の講演や政策決定会合などのイベントを控え、ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の上振れと需給悪化への懸念から弱めの結果」を見込んでいる。

債券

債券は下落。5年債と20年債入札に向けた売りが優勢だった。新発2年債利回りは1.06%と07年以来の高水準を更新。新発5年債利回りは08年以来、新発10年債利回りは07年以来、新発20年債利回りは1999年以来の高水準となった。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、今月の日銀利上げはほぼ織り込まれ、注目点はその次の利上げに向けた情報発信や中立金利推計値の上方修正の有無に移っていると指摘。これらは「日銀会合を見ないと判断できない」と言う。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

株式は上昇。建設や不動産など内需関連株が総じて高く、防衛関連株も上昇した。一方、日銀の利上げ期待で買われてきた金融株が利益確定売りで下落し、手じまい中心の動きだった。

フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は、今週予定される米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げの確認を市場が待っている中、日中関係の緊張がある程度高まり「防衛関連株の追い風」と話した。防衛関連では三菱重工業がTOPIXの上昇寄与度首位となったほか、日本製鋼所の上げが大きかった。

6日午後、沖縄本島南東の公海の上空で中国軍のJ15戦闘機が航空自衛隊のF15戦闘機に対し、2度にわたってレーダーを照射した。防衛省が7日明らかにした。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、米国の利下げは織り込まれており、投資家はパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言や、来年の金融政策の展望についてのインプリケーションを探っているとし、「様子見姿勢が強い」と述べた。「年内は大きな業績イベントもなく、現在の水準で取引が続く可能性が高い」とみている。

為替

円相場は対ドルで155円付近で推移した。前週末の米国市場で強い経済指標を受けて金利が上昇し、ドルが買われた流れは一巡した。

セントラル短資FX市場業務部の富永貴之部長は、米国が利下げ、日本は利上げという「日米の方向性の違いが意識されている」と述べ、ドル・円の上値は重く、155円を挟んだもみ合いが続くとの見方を示した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:佐野日出之.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2025 Bloomberg L.P.