【日本版DOGE】
Q. 日本版DOGEとは?
A. 政府が11月25日に設置した「租税特別措置・補助金見直し担当室」の通称。片山さつき財務大臣が担当閣僚を務める。
関係省庁からの併任職員約30名で構成され、財務省主計局・主税局や総務省とも連携しながら、租税特別措置(租特)、高額補助金、基金を総点検し、政策効果の低いものを廃止することを目的とする。
自民党と日本維新の会の連立政権合意書に「政府効率化局(仮称)の設置」が明記されており、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」を実現するための財政基盤整備の一環として位置づけられている。
Q. アメリカのDOGEとの違いは?
A. 先のQでもみたように、米国のDOGEは「規制の撤廃」「行政組織の縮小」「コスト削減」を掲げ、省庁の統廃合や連邦職員の大量解雇など強権的な手法で進められた。
一方、日本版DOGEは、省庁再編や公務員削減ではなく、「既存の租特・補助金・基金の中身を精査し、不要・非効率なものを削る」というアプローチをとる。「公的部門の縮小」まで企図した本家DOGEと比較すると、穏当である。
また、見直しの成果は通常の予算編成プロセスに反映させる方針であり、2027年度予算への反映を目指すなど、本来の予算プロセスに沿った進め方が想定されている。
さらに、SNSを活用した国民からの意見募集や、各省庁との公開討論も検討されるなど、透明性を重視する点も米国とは異なる特徴である。
Q. 既存の歳出効率化の仕組みとの違いは?
A. 政府の歳出をチェックする仕組みとして、会計検査院の検査報告、行政事業レビュー、そして今回の日本版DOGEがある。いずれも政府の財政運営を点検・改善する仕組みだが、その目的や対象が異なる。
会計検査院の検査報告は、憲法第90条に基づき内閣から独立した機関として、国の収入支出の決算を事後的に検査するものだ。
約1,250名の職員が、正確性・合規性・経済性・効率性・有効性の観点から、予算が適正に執行されたかをチェックし、検査報告を国会に提出する。不正や無駄遣いを指摘し是正を促す役割を担うが、事業の廃止を決定する権限は持たない。
行政事業レビューは、各府省庁が予算・基金を用いる原則すべての事業(5,000超)について、毎年度、前年度の執行状況を自ら点検し、レビューシートを作成・公表する取組である(行政事業レビュー見える化サイトにおいてデータへのアクセス性を高めた形で公開されている)。
PDCAサイクルやEBPM(証拠に基づく政策立案)の手法を用いて事業の改善につなげる。なお片山財務相は、この行政事業レビューも日本版DOGEの取り組みに活用していく方針だ。
行政事業レビュー自体はあくまで各省庁の自律的な内部点検であり、横断的な強制力には限界がある。
日本版DOGEは、予算編成・税制改正の「前段階」で、租税特別措置・高額補助金・基金の政策効果を横断的に点検し、効果の低いものは廃止に導くことを目的とする。内閣官房に設置された省庁横断型の組織で、担当閣僚(片山財務相)が政治主導で推進する。
概して、会計検査院は「使った後の検査」、行政事業レビューは「使った後を点検し次に活かす内部統制」、日本版DOGEは「使う前に政治主導で選別・廃止に導く」仕組みである。
