11月25日、高市政権は「租税特別措置・補助金見直し担当室」(日本版DOGE)を設置し、片山財務大臣の担当の下、政策効果の低い財政措置を洗い出す方針を示した。

本稿では、米国におけるDOGEの取り組みと日本への示唆、及び日本版DOGEにおける概要とその影響に関して、Q&A形式で概観する。

【米国DOGE】

Q. 米国におけるDOGEの概要は?

A.1月20日のトランプ政権発足と同時に設置されたDOGEは「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」の頭文字を指す。

当初は2026年7月まで存続する予定であり、起業家のイーロン・マスク氏が事実上のトップを務めていた。

しかし、同氏は5月下旬に特別政府職員を退任しトランプ政権から離脱したほか、11月23日にはロイター通信がDOGEの組織は既に解体されたと報じている(一部機能は米人事管理局に移管)。

マスク氏(及び当初参画する予定であったラマスワミ氏)は2024年11月のWall Street Journalへの寄稿において、DOGEの目的として「規制の撤廃」「行政組織の縮小」「コスト削減」を挙げた。

特に官僚機構が必要以上に肥大化している(議会の定めた法律を超える業務を担っている)と批判し、共和党の伝統的な価値観である「小さな政府」へ移行することを志向した。

また、これを達成する具体的な手段として、規制の減少とそれに伴う政府職員の削減、AIなどの先端技術の活用、膨大な無駄や不正の防止などを主張した。

Q. 米国のDOGEが達成した財政効果は?

A.当初の歳出削減目標は2兆ドル(約310兆円)であった一方、12月3日時点のDOGEホームページではその1割に相当する約2,140億ドル(約33兆円)のコスト削減を実現したと記載する。

しかし、同規模の詳細な内訳は不明であり、既に支出済みや予算枠(最大額)として計上していた金額を含む懸念があるなど、過大であるとの指摘が多い。

実際、2025年度(2024年10月~25年9月)における連邦政府支出はGDP比23.1%(24年度:23.3%)と小幅な低下に留まっており、その内訳をみてもDOGEによる明確な影響はみられない(ただ、一部の削減効果は26年度以降に現れる可能性)。

そもそも、連邦政府支出の内訳をみると、最大の項目は社会保障関連支出(メディケア・メディケイドを含む)で全体の46.1%、次いで純利払い費が14.7%、国防費が12.4%であり、これら7割超の項目は基本的にDOGEの合理化対象ではない。

Q. DOGEに対する米国世論の評価は?

A. 予算合理化の取り組みは支持されるものの、その進め方には慎重な意見が多い。2025年3月におけるNBC Newsの世論調査によると、DOGEの考えを支持するのは米国民の46%に達し、支持しないの40%を上回る。

一方、マスク氏やDOGEの取り組みに対して、33%は「より多くのことを達成するため、続けるべき」と考えるものの、28%は「必要であるが、影響を見極めるためにペースを落とすべき」と回答するなど、その手法を疑問視する意見がみられる。

この背景には二つの要因が考えられる。まず、米国における予算策定の権限は連邦議会にあるほか、マスク氏は閣僚として議会承認を経たわけではなかった。

このため、同氏を含むDOGEの法的な権限が疑問視され、その一部は法廷闘争へと発展した。次に、米国際開発局(USAID)の閉鎖や試用期間職員の解雇をスピード感重視で決定するなど、その手法が強権的との印象を与えたとみられる。