11月下旬以降、南アジアと東南アジアの各地で発生した壊滅的な洪水により、1300人以上が死亡し、少なくとも200億ドル(約3兆1000億円)の被害が生じている。人口が急増し経済が急成長する同地域にとって、気候変動と異常気象によるリスクが増大していることが浮き彫りになった。

三つの熱帯性サイクロンの発生が北東モンスーンと重なり、一部地域では数十年ぶりの降雨量をもたらした。スリランカからインドネシアにかけて住宅や道路、鉄道が破壊され、農作物にも壊滅的な被害が出た。工場生産は停滞し観光地の浸水被害も相次いだ。

科学者やアナリストは、気候変動が洪水の被害を悪化させた可能性が高いと指摘。森林破壊、洪水対策の不備、災害対策資金の不足なども被害拡大の一因として挙げている。

フランス国立科学研究センター(CNRS)で気候物理学を研究するダビデ・ファランダ氏は「気候変動が東南アジアでより深刻な洪水を引き起こしているのは疑いない」と語った。同氏は11月にベトナムで発生した洪水に関する研究を主導した。

フィッチ・ソリューションズ傘下の調査会社BMIは、東南アジアでは複数の異常気象が短期間に連続して発生する「複合災害」が今後数年で増加し、被害が拡大するリスクが高まっていると分析する。

BMIのアナリストは今週のリポートで、同地域では洪水リスクのある地域に居住する人口の比率が高いと指摘。マレーシアで21%、インドネシアで約20%、シンガポール、ベトナム・フィリピン・スリランカでは約15%に上る。この割合は2010年代半ばから後半よりも高くなっており、地球温暖化の加速と脆弱(ぜいじゃく)地域での人口増加により今後さらに上昇すると予測した。

独立系環境団体ジャーマンウオッチの調査によると、東南アジア諸国は一貫して最もリスクの高い地域にランクインしており、昨年はフィリピン、ミャンマー、ベトナムが気候変動の影響を最も受けた10カ国に含まれた。

経済発展優先で適応遅れも

こうしたリスクにもかかわらず、東南アジアでは気候変動への耐性構築の進展が他地域に後れを取っている国が多い。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のヘレン・グエン教授(環境工学)は、東南アジアでは経済成長を優先して気候変動への適応が後回しになっており、「開発のスピードが速すぎ、環境が犠牲になった」と述べた。

今年の暴風雨による工業生産への影響はこれまでのところ限定的だが、全体的な被害規模はまだ不明だ。

先月だけで200億ドルに上った被害総額は、各国政府やアナリストの推計に基づくもので、今後修正される可能性がある。保険ブローカーのエーオンによると、昨年のアジア太平洋地域の季節性洪水による経済損失は推定約250億ドルに上った。

原題:Deadly Floods’ $20 Billion Toll Shows Asia’s Rising Climate Risk(抜粋)

--取材協力:Suttinee Yuvejwattana、Eko Listiyorini、Asantha Sirimanne、Anusha Ondaatjie.

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